Detective Conan


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stock-永遠の恋-


7


「苗字!杯戸町であった殺人事件工藤くんが行くらしいからあんたも行って!」
「はいっ」


最近。


「おぉ、苗字くん。君も来たのか」
「目暮警部お久しぶりです」
「すまんが、まだ時間がかかりそうなんだ。もう少しここにいてくれるか」
「大丈夫ですよ」
「警部!関係者集めまし、と、苗字さん。いつもご苦労さまです!」
「高木刑事もご苦労さまです」


マスコミには厳しい警視庁の面々が、私には優しいように感じる。
なんでだ?


「あ、名前さん遅いですよ!」
「え?」
「すみません、彼女は僕の助手なんで中に入れてください」
「…はぁ?」


Keep Outのテープの最前列でまだかまだかと事件の説明を待っていたら、蝶ネクタイを卒業した高校生探偵が優雅に目の前にやってきた。


「いつからキミの助手になったわけ?」
「そうでも言わないと入ってこれないでしょう」
「…別に入る必要は」
「大丈夫ですよ。もうバラバラになった死体は概ね片づいてますから」


本日の事件現場。
密室バラバラ殺人事件の起こったお屋敷の一角。
マスコミ関連は門前払いをくらっているのに、私はおびただしい血痕と今だ回収しきれていない肉片残る部屋に連行された。


「これはなに?新手の嫌がらせ?」
「は?何がです?あ、社に連絡は事件解決後にしてくださいね。それが条件で入れてもらえたんですから」


血の臭いって、独特なんだよね。
しかも何この部屋。
何かが焦げたような臭いがしみついてる。


「工藤くん、関係者全員隣の部屋に集めたぞ」
「ありがとうございます。…じゃあ名前さんもどうぞ」
「え?」
「俺主演の推理ショーの始まりです。しっかり書いてくださいね」


高校生探偵は得意そうに笑うと、容疑者が待つ部屋に向かう。
…私この部屋に入る必要なかったんじゃないのか?


「つまり、犯人は被害者を睡眠薬で寝かせた後絞殺。その後隠し持っていた工具を使い全身をバラバラにした」
「殺した上バラバラにするなんて!」
「でも人間がそんな簡単にバラバラにできるのか?」
「ええ。ですから切断仕切れなかった部分は焼きごてで焼き落としたんです」


げっ。
あの焦げた臭いって人が焼けた臭いなわけ?


「これらの行動ができた人はただ1人。犯人はあなたしかいないんですよ!」


高校生探偵は犯人を指差し、追い詰められた犯人はあっさりご用となった。


「いやー、工藤くんいつもすまないね!」
「いいえ、このくらいのこと、いつでもこの工藤新一をお呼びください」
「ああ、苗字くん。もう社に事件について連絡してもいいぞ」
「だそうですよ。良かったですね、名前さん。独占スクープですよ!」


にこにこにこにこ。
笑う高校生探偵は微塵も悪びれてない。
この子、若いうちからこんな現場見てきたからきっと感覚が麻痺してんだ。


「…もう連絡した」
「そうですか。じゃあ今日はもう上がりですか?」
「そうだね。私の内容見て上が判断して終わり」
「じゃ、何か食べに行きます?」
「え、」
「俺メシ食う前に呼び出されたから腹減っちゃって。行きません?」
「行かない」
「米花駅の近くに結構評判いい店あるんですよ。そこにしましょう」
「無理」
「え?何がです?」
「キミどういう神経してるの?」
「は?」
「あんな血や肉の塊見た後に食欲なんてあるわけないでしょ」
「え?…って、名前さん顔色悪いですよ。大丈夫ですか?」
「…無理」
「えっ!?ちょ、吐きそうなのか!?ちょ、スミマセン、トイレ貸してください!!」


信じられない。
この業界に入って、だいぶ女忘れてたけど、探偵って職業はそれ以上に人間忘れなきゃ成り立たない職業だと思う。
事件解決して、社に連絡するまでよく持ちこたえたよ、私。
それだけでもう十分だ。


「…スミマセン。まさかこういうのに弱い人だとは思わなかったんで…」


私は新手の嫌がらせかって思ったけどね。
日ごろの恨み?


「日ごろお世話になってるんで、俺が名前さんにできることって言ったら独占取材してもらうことかと思って」


気の使い方が間違ってるんだよ、お坊ちゃん。


「まさかそんなに弱いとは思わなかったんです…」


ちらっと見る工藤新一はそれはそれは申し訳なさそうにしてる。
まぁ確かに彼に対する私の日ごろの態度からしてみればこんなことで参るような女には見えないだろう。
それこそ鋼鉄の女か何かだと思ってるんだろう。
でも私も普通の女だぞ。
自分でも忘れかけてたけど。


「キミの気遣いだけはありがたく受け止めたよ…」
「…ほんと弱ってますね」
「え?」
「そんな素直に受け止められると逆に困んだけど」
「…キミは私をどう思ってるわけ?」
「心臓がセラミックでできてるお姉さん気取りの女」
「…よくわかったわ」
「歩けっか?」
「え?」
「送る。さすがに1人じゃ無理だろ」
「…前も言ったけど」
「米花町1-1-58-203」
「…なんでうちの住所を」
「この間あとついてって確認しましたから」
「キミ一歩間違えたらストーカーだよ」
「帰り道一緒だし送っていくから」


腕を引っ張る高校生探偵の隣を歩いてお屋敷を出る。
工藤くんは事件解決直後なだけあって、フラッシュのたかれ具合が半端なかった。
いつもフラッシュたく側だから気づかなかったけど、フラッシュってこんなにも鬱陶しいのね。


「でもまぁ」
「うん?」
「そんなにしんどかったのに、よく途中で倒れなかったよ」
「…ああ。それはもう仕事だし?」
「いや、すげぇよほんと。よく頑張ったな」


そう言って頭にくることにこの生意気なお坊っちゃんは私の頭を撫でてきやがった。


「…キミこのお礼は今度するから、楽しみにしてて」
「え?別にお礼なんていいですよ?」
「いや、させてもらうわ」
「…そーですか?じゃあ楽しみにしてます」


年上として屈辱的なこの行為の礼をどうしてくれようかと思考を巡らせ家路についた。

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bkm

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