Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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久住に対してだけではなく、昔自分と関わりがあった恋人(久住とは厳密にはそこまでいってないかもしれないが)の変化は、なんとも言えない感情が巻き起こるものだと思う。
…の、だけど。


「だからー、」
「…」
「ほんの一瞬確かにままごとのようなおつきあいって奴はしたかもしれないけど、本当にほんの一瞬だったんだって!」


私が初彼女な彼にとってはそんな感情知るわけもなく。
それはついさっき、千紗と久住と別れた後唐突に「クズミさんて、お前の元彼だろ?」とえらい確信をついたこと言われたことでこの子の感情が顕になった。


「一瞬でもつきあってたんだろ?」


だいたいさっきの会話のどこでバレたんだろう?って思ったら、昨日アルバム見た時から怪しいと思ってたとか、昨夜から無駄に探偵眼を振りかざしていたようで会話以前の問題だったらしい。


「だから何度も言ってるように一瞬だ、一瞬。中学の卒業式後つきあったけど高1のGW前には別れてたし、キスの1つもすることなく終わってた!」


そして買い出しの荷物はまぁ、新一くんが持っていてくれてるから良いとして、家までの道中、被疑者・久住にスポットを当て取り調べられていた、と言うわけだ。


「の、わりに、」
「うん?」
「随分と今も仲がよろしいようですけど」


ムッとした顔を隠すことなく、新一くんが言ってきた。


「…それをキミが言う?」
「え?」


いい加減、このネタに蹴りをつけたい私は思わずポロリと口走ってしまった。


「どういうことだよ?」
「…だからさ、今も蘭ちゃんと普通に幼馴染してるキミが言う台詞なの?って聞いてる」
「………」


私の言葉に、そこでようやく事態に気づいたらしい未だこの手のことにはポンコツ探偵くん。


「君と蘭ちゃんほど長くはないけど、千紗も言った通り、久住は千紗の次につきあいの長い人間で幼馴染と言えば幼馴染、ってとこ」
「…」
「つきあう前に少なくとも5年は『仲のいい』友達してた人間、彼氏彼女としてはダメだったからって言って、はいそうですか、で終わらないことくらい、君が1番良く知ってるんじゃないの?」
「…………あぁ…、だな」


私の言葉に、新一くんは小さく頷いた。
それを見て、やれやれ、と深いため息が出たのは言うまでもない。


「ところで、」
「うん?」
「なんで別れたのか、」
「聞くな」
「…一応、聞いときてぇんだけど、」
「本当に聞かなくてもいい」
「いや、そう言われると気になるだろ余計」


じーっと私を見てくる新一くんに、もう1度、ため息を吐いた。


「高1のGW直前、」


ぽつりぽつりと、覚悟を決めて話始めた私に、新一くんは頷きながら黙って聞いていた。


「あ、久住野球部入ってたんだけどね」
「あぁ…、それっぽかったな、あのアルバム」
「うん。で、GW中に初の練習試合があるってんで、4月に入部したばかりなのに、それはそれは練習が厳しい毎日だったんだよ」


いつの間にか繋いでいた手は、どことなーく力が篭っていてぎこちなさが残ってる。
…と、ツッコミを入れるのはさすがに可哀想なんで黙っていた。


「で、その日も練習遅くまでやる、って言っててさ」
「おぅ」
「私はまぁ、部活って言っても文化部だし?早く終わるんだけど、その頃はまぁ所謂つきあいたてだし、残ってやろうかなくらいな優しさがあったわけ」
「あぁ、振りかざしたんだな、なけなしの優しさ」
「…キミ、」
「うん?」
「私の実家周辺だし手出さないと思ったら大きな間違いだからな?あんまり調子乗ったこと言ってると後で死んだほうが良かったかもしれないくらい後悔する羽目になっても知らないぞ」
「…以後気をつけます」
「そうして」


私の言葉に若干顔を引きつらせながら新一くんが言った。


「で、私の優しさかき集めてその日も久住を待ってやろう、って思ったわけ」
「かき集めなきゃいけねぇって自覚症状あるんじゃねぇか…」
「なんか言った?」
「いいやーなんにも。で、続きは?」


ジロっと見た新一くんは実に胡散臭い笑顔で私に続きを求めた。


「…その日は何故か久住が、部活が先に終わった私に対して、近所のスーパーでアイスを買ってきてくれって要求してきたんだよ。自分のお金渡しながら」


そう言えばあの時のスーパー(と言うか最早田舎の商店)潰れたって言ってたっけ…。


「だから、そのお金握り締めて買いに行ったんだ。久住が指定してきた涼風堂の抹茶アイスを!」
「……うん?涼風堂の抹茶、って、」


私の言葉に新一くんが顎に手をあて考えるような素振りを見せた。


「で、学校に戻ってきたはいいけど、久住まだ部活終わらないし?手には食べたことない美味しそうな抹茶アイスがあるだろう?」
「………おい、まさか、」
「これは溶ける前に一口くらい、って思って食べるじゃないか。そしたらそのアイスの美味いこと!!」
「…まさか全部食ったのか?」
「気がついたらなかったんだよ」
「………」
「で、すっかり美味しく頂いた後で部活が終わって戻ってきた久住がそれを見てふざけんなって言うじゃないか」
「…それ、クズミさんじゃなくても言うだろ…」
「いや、言うのはいいんだよ。私が悪いのは確かなんだ。でもその後!いつまでもネチネチと煩くってさぁ、」
「食べ物の恨みは怖ぇからな…」
「まさにそれ!で、お互いがお互いに頭にきて結局それっきり!…だけどさっきも言った通り元が幼馴染だろう?気がついたら今までのような友達関係に戻っててそれでさっきの私たちに至る、と」


私の言葉に、新一くんが妙に納得したような顔をした。

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