Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「つまりあれなんだな」


私と久住の話を聞いた新一くんが、おもむろに口を開いた。


「すっげぇくだらない理由で別れたんだな」
「…………何その腹立たしい言い方。事実だとしてもキミに言われると癪に障る」
「それこそなんでだよ!」


私の話を自分の中で上手くまとめたらしい新一くんは、えらくすっきりした顔をしていた。


「でもなんか…」
「うん?」
「友達に、戻れるもんなんだな…」


それまでのノリとは違い、不意に新一くんがトーンを下げた。


「…さぁ?どうだろうね。つきあってた男女がつきあい止めて友達に戻っても良いことなんてほぼないと思うけど?」
「…けど、さ、」
「でも、」
「うん?」
「…つきあう以前に過ごしてきたそれまでの何倍もの時間があるなら、つきあい方や別れ方にもよるだろうけど、結局はそこで落ち着くのかもね?」


私と久住のように。
そしてそれはきっとこれからの、キミと蘭ちゃんのように…。


「誰より長い時間一緒にいたはずなのに、やっぱ違ってた、っていうの、あるもんなんだな…」


それは私にではなく、自分自身に言った言葉なんだろう。


「そりゃあ、あるだろうよ。家族だから許せても、もし友人だと思ったら絶対ないな、って思うことと一緒だよ」
「…」
「友達期間が長くても、そこで恋人にならずに友達止まりなままな方が良い関係って、あるだろう?」


友達になれたからと言って、恋人には、なれないものだし。


「そー考えると、」


そこでコホン、と、新一くんが咳払いをして言った。


「俺と名前がここでこうしているのも、すっげぇ確率の元で生まれた出逢いってことで、もっと感謝して過ごさねぇとなんだろうな」
「…あのさー、」
「うん?」
「今すごくもっともなことで良いこと言われたような気がするんだけど、キミが口走ったと思った瞬間、背筋がゾクっとしてきたのはなんでだと思う?」
「……………」


なんだか不思議な感じだ。
つい数週間前までは、あれほどまでに蘭ちゃんに対するしこりのようなものがあったと言うのに。
断じてこの子と蘭ちゃんほど仲良くはないが、この子で言うところの蘭ちゃんである久住に会ったせいだろうか…。
そのしこりが、とても小さくなったような…もしかしたらもう、ないのかもしれないほど、胸がスッとしている気がする…。


「なんか、」
「今度はなんだよ?」
「キミといると老けこむ気がするのはなんで?」
「俺の台詞だ!」


恋のときめきもないわけじゃない。
いや、むしろコイツはポンコツなだけにスリリングさは天下無敵だ。
…だけど隣にいるとそれと同じくらいの安堵感を与えてくれる。


「キミってほんとよくわかんないね」
「オメーにだけは言われたくない台詞だな」
「てゆうかさっき人をババァ扱いしなかった?」
「何の話だよ!」
「いいじゃないか、見た目は大人、頭脳は子供とかだったらそれこそ毛利さんのような男になってしまう。年相応かそれよりやや上くらいの精神年齢を身につけられて良かっただろう?」
「………もっともなこと言われてる気がするのに釈然としねぇのはなんでだ?」
「そんなの私が知るわけないだろう!ほら、いい加減帰らないとうちのカヨコが腹を空かせてる」
「カヨコ?」
「母さんの名前だ」
「あぁ…」


今までにはない、どこか擽ったささえある思いを抱えながら、家路についた。

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bkm

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