Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「ただいま」
「…母さんお帰り」


新一くんにお茶を出したところで、母さんが帰って来た。
ガタッと新一くんが立ち上がった。


「母さん、紹介するね。工藤新一くん」
「初めまして、工藤です。数日間お世話になります」
「名前の母です。いつも娘がお世話になってます」
「とんでもない!僕の方が世話になってて」
「全くだ」
「…」


私の一言にジロッと新一くんが睨んできた。
事実だろうが。
私たちの無言のやりとりの間も、ジーッと新一くんを見つめる母。


「………」
「…あ、あのぅ?」
「あぁ!ごめんなさい!どんな子を連れて来るのかしらって思ってたら、ほんと噂通りの男前を連れてきたのねって思って!」


おほほ、って笑いながら母さんが言う。


「その噂どこで聞いたの?」
「あぁ、さっきバス降りたところで大木さんたちに会って今うちで見てきたって話してたから」
「そうそう。さっきまでいたんだ」
「大木さんたらすっかり気に入ったらしくて『今からでも私にしないかしら?』なんて言ってたわよ?」
「は、ははっ…」


もう数え切れないほどの引きつった笑顔を見せてくれた新一くん。
まぁ…、そうなるだろうなぁ。


「父さんは?」
「もう少ししたら帰ってくるんじゃない?一旦部屋に荷物置いてきたら?」
「でも、」
「ここに置いてても邪魔になるし」
「わかった」


家に着いてから、とりあえず居間に荷物を置いてたわけだけど。
…私の部屋に持って行くだけ無駄な気がするけど。
なんて思いつつも確かに居間にあっても目につくし、私の部屋に持って行くことにした。


「ここだよ」


久しぶりに自分の部屋の扉を開ける。


「…なんつーか、」
「うん?」
「すっげぇオメーらしい純和風な部屋だな」
「あー…、家具とか全部おじいちゃんやおばあちゃんのお古だからね」
「なるほど」


ここで生活していたのは高校までで、その頃はお洒落な家具を買うお金も、そもそもこんなど田舎にお洒落な家具屋自体がなかったからなぁ…。


「米花町の部屋と全然違うな」
「そりゃー、キミんちは建物自体がヨーロピアンでこんなインテリア不釣合いじゃない」
「まぁそうだけど…、こういう方が好きなわけ?」
「え?うーん…、好きって言うより、こういう色調が落ち着くんだよね」
「ふぅん」


使い古された桐タンスや昔工作の時間に作った行燈なんて、米花町の部屋には不釣合いだけど、どちらかと言うと落ち着く。


「えー、っと。なんにもすることないけどどうする?」
「…そりゃあ、やっぱり恋人の家って言ったら卒業アルバムじゃねぇの?」
「…キミ、べたなとこ突いてきたね」
「純粋な好奇心」


好奇心ねぇ…。
まぁ見られて困るものなんてないし、いいか。


「はい」
「…」
「何?」
「いや、もっと抵抗されるのかと思ってたから」
「別に整形してるわけじゃないし見られて困るような過去はない」
「誰もそんなこと言ってねぇだろ!」


そう言いながら私の手からアルバムを奪い取る新一くん。


「………」
「………」
「………」
「……おい」
「へ?」
「何か感想はないのか?」
「え!?あ、あぁ…、」


アルバムを開いたとたんに無口になるなんてなんて失礼な奴だ。


「いやなん、か、」
「なんか?」
「化粧してねぇんだな、と…」


殴っていいか、その頭。
なんだその感想。


「あのねぇ、東京の、渋谷や新宿闊歩してる女子高生と一緒にするんじゃないよ。どこでそんな化粧品買えるんだって言うこんな村で今みたいな化粧してたら明らかに村八分だろうが」
「いやそう言う意味じゃなくて、」
「じゃあなんだ?」
「……もし、」
「うん?」
「…もし、俺たちがクラスメートだったら、どうなっただろうな…」


新一くんは、部活の集合写真のページを見ながらそう呟いた。
「もしクラスメートだったら」
考えたこと、なかったわけじゃない。
けどそれは所詮、if話。


「断言するけど、」
「うん?」
「もしクラスメートだったら、」
「おぅ」
「絶対キミに近寄らなかった」
「…………」
「考えてみろ。スポーツ万能、成績優秀、オマケに自分の顔の良さを鼻にかけてるクラスメート」
「別に俺は鼻にかけてなんか」
「そんな奴、顎を割るほどのアッパーを繰り出すか、そのせいで傷害罪で捕まらないようにキミから逃げるかの2択になるわけだが、キミを殴ったごときで私の経歴に傷がつくなんてもっての他だ。つまり全力でキミから逃げることになる」
「…クラスメートじゃなくて良かったな、俺たち」
「むしろ同年代の学生じゃなくて良かったんだろう」
「…ソーダナ」


ふん!と再びアルバムに目を落とす新一くん。


「…なぁ、さっきから気になってたんだけど、」
「うん?」
「名前ー!お父さん帰ってきたわよー!」
「はーい!…だって、出迎え行く?」
「…おー」
「じゃあ行こう」


そう言って久しぶりの父さんに会いに玄関へ向かった。

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bkm

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