Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「そう言えばキミ夏休みいつまで?」


新一くんとお手手繋いで初々しくデートなんかしちゃった日。
考えてみたら手を繋いでデートするということ、ほんとに久しぶりで、思いの外楽しんだ自分がいたのは内緒なんだけどね。
その夜はもちろん別の部屋。
というのも「休み前日」は彼氏の部屋で一緒に過ごすのはいいが、「仕事前日」に彼氏の部屋で過ごすのは翌日の仕事が辛いだけだから私が拒否してるため。
サラッと自室に戻る私に対して何か言いたそうにしていた新一くんをスルーして緩やかに日常は流れていった。
…ある意味こういう焦らしも楽しんでいるってバレたら、あのへタレがグレるな、きっと。


「いつまで、って、普通に8月いっぱいまでだけど?」


そして夏休みも残すところあと10日。
…もっとも社会人の私に夏休みは関係ないんだけどね。


「月末、私の本来の夏休み休暇があるんだけどね」
「おー」
「去年も、今年の年始も帰らなかったから、この夏休みこそは実家に帰ろうかと思ってるんだけど、」
「うん」
「キミも一緒に行く?」
「………………え!?」
「別に変な意味は微塵も含まれていないことを初めに言っておく」
「変な意味って…」
「前に機会があれば連れて行くって言ったでしょ?」
「…あー、うん」
「私の帰省中、小さいけど地元の祭りがあるんだ。だから何もないところだけど、まぁ何もない時期に行くよりは楽しめるんじゃないかと」


でもほんとに田舎の小さい祭りだから、打ち上げ花火も一発上がって「あれ?終わり?」って思った頃二発目が上がるくらいの規模だからな…。
行って楽しめるかって言われると微妙だけど、田舎過ぎて帰省のたびに「まだ結婚しないのか」なんて言われたら溜まったもんじゃない。
ちなみに田舎過ぎて20歳の頃から見合い話が出ていたほどだ。
そんな場所でも、コイツを連れて帰れば相手が現役高校生なんだから今後誰も急いで結婚、とは言わなくなるだろう。
子供に手を出すなんて!という意見もあるだろうが、相手はタダのガキじゃない。
「あの」工藤新一だ。
煩いおば様連中もぐぅの根も出るまい。
そんな私の目論見なんて知るはずもない忠犬彼氏は、


「い、行っていいのか?」


と、実に可愛く尻尾を振ってきた。


「でも期待するほどの祭りじゃないことだけは伝えとく」
「いーってそれでも!つーかどこ?名前の実家!」
「前も言っただろ?」
「え?」
「ムーミン谷だ」
「…ど田舎なんだな」
「期待するなよ」


じゃーまぁ後で母さんに連絡するとして。


「もー、名前ちゃん急に引っ越すんから驚いちゃったわよ!」


引越しがほんとに突然だったから美和子さんに挨拶もできなく、今日はその後の報告も兼ねて女子会だ。
ちなみに「女子会」の名のごとく交通課の由美さんも一緒。


「ほんとに急に決まったんです」
「年下と同棲かぁ、いいなぁ!私も同棲したい!」
「由美さんはその前に相手を探した方が…」
「名前ちゃん!将来有望そうな高校生紹介してっ!!」
「由美さんもう三十路でしょ?さすがに犯罪ですよ」
「自分が少し若いからって調子乗ってたら次に国道で会った時キップ切るわよ?」
「…新一くんに言っておきます」
「よろしくー!」


由美さんは美和子さんと違う意味で漢だ。
この人のある種女を捨ててるところが、三十路で1人身の原因じゃなかろうかと思う。


「でも工藤くん、よく行く気になったわね」
「え?」
「だって高木くんですら、うちの親に会いに来るの躊躇ってたのよ?」
「美和子さん」
「うん?」
「何度も言いますが、高木刑事と新一くんを一緒にしないでください」
「…気をつけるわ…」


まぁ…。
確かに高校生が同じ学校の彼女の家に行くのとはわけが違い、米花町から電車だなんだと乗りついで3時間弱かかる田舎町にわざわざ行くんだ。
それってつまり、


「ガキだガキだと思っていても、案外先を考えてるのかもねー?工藤くんしっかりしてそうだし!」
「由美さんも会ったことあるんですか?」
「あぁ、あるって言うか、いきなり『由美さん!お願いがあります!』って捜査協力お願いされて、この子初対面で私の名前知ってるなんて実は気がある?って思ったことあったから、まだ2〜3回しか会ってないけどかなり強烈な印象の持ち主よ私の中で!」


それは「あれれ〜?」って言ってたときに由美さんと交流があったもんだから、工藤新一に戻ってもうっかりその延長で話しかけただけなんじゃ…。
あの子、そういうとこ抜けてるっていうか、ツメが甘いっていうか…。


「なのにちゃっかり私より年下とくっつきやがって…!」
「最初からそういう気なかったと思いますよ」
「名前ちゃん、次に会ったらスピード違反のキップ切るから」
「新一くんは何故由美さんの良さに気づかなかったんですかね?不憫な子だ」
「ほんっとおかしいわよね!?探偵なんて目が節穴なのよ!!」


由美さんの雄叫びの中、グラスを傾ける。
先を考えてる、ねぇ…。
ま、連れて行ったからって何があるわけじゃないし、ね。
由美さんのとぐろの巻きように苦笑いしながら、夜が更けていく。

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bkm

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