■74
「1番、友人。2番、大家と居候。3番、恋人。4番、赤の他人」
「は!?え、な、何、」
「4択ね。この中のどれ?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「キミ起きてる?」
「起きてるよ!」
いやぁ、目開けたまま寝てるのかと思ったよ。
「で?」
「へ?」
「どれ?」
「ど、どれ、って、き、急にどうした?」
…このポンコツ、逃げる気じゃないだろうな。
「もう1度言う」
「え?」
「と言うよりもう1度しか言わない」
「え…、」
「キミの出した答えのように、私は今後キミに接する」
「…」
「1番、友人」
左手の人差し指を新一くんの前に突き出して言う。
「2番、大家と居候」
続けて中指を立てる。
「3番、恋人」
同様に薬指を立てる。
「4番、赤の他人」
最後に小指を立てて、新一くんの目の前に4本の指を立てた。
「キミの出す答えは、どれ?」
パクパクパクパク。
お前は金魚か!
ってツッコミを入れたいくらい何かを言いかけては口を閉じを繰り返す新一くん。
ぶっちゃけ普段ならもういいだなんだと言って、話を切り上げただろう。
でも今度ばっかりは痺れを切らすわけにはいかない。
待とうじゃないか、キミの出す答えを。
「……………………………」
…いやでも、さすがにこれは限界?
やっぱりこのヘタレポンコツにいきなりは無理か?
日を変えようかな、と思った時、新一くんがキュッと唇を結んだのが見えた。
「……さ、3番で、」
言葉と同時に新一くんは、私が突き出した3番目の指を、左手の薬指を握った。
明らかに、赤い顔で、ね。
ほんとこの子といると、
「窒息しそう」
「は?」
「…なんでもない」
いつだったかな?
左手の薬指は、心臓に直結してるんだとか聞いた。
地上に作り堕とされたアダムとイブが最後まで繋がっていたという左手の薬指。
だから結婚指輪は赤い糸のある小指ではなく、左手の薬指なんだとか。
そんな迷信馬鹿らしいって思ってた。
現に元彼からもらった指輪は薬指にしても、なんの価値もなかった。
…でもキミはすごいよ、名探偵。
ただ指を握っただけ。
それだけで私の心臓鷲掴みだ。
「………名前?」
答えない私の顔を、心配そうに覗きこむ。
相変わらずキミは忙しいな。
「よく言った、青少年」
「え?」
「私の恋人を選んだからには、しっかり労働してもらおう」
「ろ、労働?」
「私、休み前は彼氏と一緒に寝る主義だから」
「………………はあ!?」
「てことで、お邪魔します」
「ち、ちょっと待てっ!!」
「何?」
「何?じゃねぇよっ!オメーが何してんだよっ!!」
「聞こえなかった?明日も休みだからキミのベッドで寝るって言ってるの」
「だからちょっと待てってっ!!おい、勝手にベッドに入るんじゃねーよっ!!」
とりあえず、だ。
名実ともに晴れて恋人同士となったわけだし?
だからと言ってこのへタレがすぐに何かできるわけないだろうけど、まずは一歩前進、てところだ。
ま、とにかく今は、このへタレが今夜どうでるか楽しむとしよう。
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bkm