■67
「…なんで人の部屋にいんだよ?」
「あら!私たちちゃんとノックしたわよ!ねぇ、優作?」
新一くんに添い寝のつもりが、大爆睡した私。
カシャッて音で目が覚めて、音のした方を見ると服を着たまま抱き合って寝ていた私たちにカメラを向けている有希子さんと目があった。
…なんつー親だ。
「なんで写真を撮ってたんだよ!」
「だってぇ!2人ともあまりにも気持ち良さそうに寝てたからついー!」
そんな理由がまかり通るのか、この家族は…。
「ついってなんだ!ついって!」
って、わけでもないんだな。
「だってまさか新ちゃんが女の子を部屋に連れ込んで抱き合ってお昼寝してるなんて場面に遭遇できるなんて思わないじゃない!こんなシャッターチャンスもうないかもしれないわ!」
「何がシャッターチャンスだ!!!」
元気な親子だなぁ、なんて思っていたら有希子さんの後ろでニコニコ笑っている工藤先生と目が合った。
「昨日は大変だったようだね」
「え?」
「知り合いの警部から聞いたんだが、なんでも派手な怪盗に目をつけられたようじゃないか名前くん」
「ああ…。私が、というより、新一くんをからかいたいだけだと思いますよ?」
「そうかな?」
工藤先生は口の端を持ち上げ笑う。
…この渋さ、新一くんが身につけられるのはいつだろう…。
「ずいぶんと早いご帰宅だったんだな?」
「ああ、そうなのよ。もう少しゆっくりしていこうかと思ったんだけどね、連絡が来たから車飛ばして帰って来たの!」
「連絡?って誰から?」
「小五郎くんよ!」
…小五郎くん、て毛利さん、だよな?
「…オッチャンからなんの連絡?」
「生まれたのよ!2人目がっ!!」
「…えっ!?」
「ほ、ほんとですかっ!?」
「あら、名前ちゃんも小五郎くん知ってるの?」
「あ、はい。以前仕事で…」
「じゃあみんなで行く?赤ちゃんの顔を見に!」
いやー、私関係ない…。
って言うか毛利さんちって言ったら蘭ちゃんが…。
「おめでたいことだし一緒に行きましょうよ!」
「…いや、私は」
「ねっ!?」
「…はい」
半ば押しきられた形で頷いてしまった。
だけど産後すぐにぞろぞろ行っても迷惑なんじゃ…。
「大丈夫よ!自分の生んだ子、1人でも多くの人に喜んでもらいたいものだからっ!」
そういうものなんだろうか?
こればっかりは経験しないとわからないからなぁ…。
「…何ニヤニヤしてんだよ」
「いいや。…お前と過ごした1年はずいぶん大きいものだったんだと思ってな」
「はあ?何言って」
「新ちゃん、赤ちゃんの名前聞いたら驚くわよ!」
「え?もう決まったんですか?」
「ええ。性別がわかった時から毛利家満場一致で決まってたみたいよ?」
「へー。なんて名前?つーか生まれた子、男?女?」
工藤先生と有希子さんが見つめあって微笑む。
ああ、美男美女は何してもサマになる。
そう思った時、有希子さんの口が鮮やかに弧を描いた。
「コナン。毛利、コナン。元気な男の子ですって!」
…コナン、て、あの目がねの生意気な男の子、だよね?
へー、息子にあの子の名前つけたのか。
まぁ…賢くはなりそうな名前だ。
チラッと新一くんを見たら、目が飛び出るんじゃないかってくらいに見開き、フリーズしていた。
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bkm