Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「結構幻想的でしょ?」
「…おー」
「水面の揺れに呼応して灯りもゆらゆら揺れて今にも消えそうなのがまたいい」
「これ何の匂い?」
「あーなんか石鹸の香りがなんだとか書いてあったよ?」


意外や意外。
発見されたヘタレは、ちょっとヘタレを克服して戻ってきたのか結構普通にお風呂に入ってきた。
揺れるロウソクの灯りだけしか光がないためはっきり見えない。
けど、この子が照れてなかったら嫌だな…。
あのヘタレてる感が工藤新一らしさなのに。


「オメーって」
「うん?」
「ほんっと、風呂好きだよな…」


呆れたように浴槽の縁に肘をつきロウソクを眺める新一くん。
ああ、やっぱりへタレは失踪中に少し克服されたのかもしれない。


「風呂なんて、長時間入っててもふやけるだけじゃねーか」
「馬鹿言わないでよ。きちんと湯船に浸かれば疲れも取れる」
「俺は長時間入ったら逆に疲れるけどな…」


新一くんがこういう場面できちんと私と向き合って話すことができるなんて、本当に進歩したと思う。
でも自分で思っていた以上にどこか寂しい自分がいるのがまた人間の複雑さを感じる。


「…なぁ」
「うん?」
「オメー、」
「うん」
「…名前、オメーほんとにキッドに何した?」


…ああ、まだ半分失踪してたのか。
だからこんなにも普通だったわけね。
それなら納得。


「ほんとに何もしてないんだけど」
「アイツは、さ、」
「うん?」
「初めて会ったのは去年だけど」
「うん」
「アイツがああやって女に手出すところは初めて見た」


ゆらゆらと、揺れる灯りから新一くんの顔が歪んでいるのが垣間見えた。


「むしろキミに執着してるような発言をしてたけどね」
「あー…それは、なん、か、わかる気がする。なんつーか、切っても切れねぇ縁とでも言うの?そんな感じのところあるし」
「ふぅん…」
「確かに、俺に成り済まして…蘭、に、手出そうとしたことは何度かあったけど、それを最後まで実行したことはなかった。…俺的には、俺経由で知り合った蘭の時とは違って、名前はキッドが個人的に気に入ってるんだと思ってんだけど」


怒り任せだったさっきとは違い、冷静さが戻ってきたため、状況分析に入ってきている。
でもそんなこと言ってもなぁ…。
あ!


「そう言えば」
「あ?」
「私が知らないだけで、楽しい一時を過ごしたって言われたな…」
「いつ?」
「さっき」
「…」
「でも私は本当に前回私に変装された時と、今回しか会ってないから」
「…オメーもしかして、」
「うん?」
「キッドの素の姿の時に会ってんじゃねーか?」
「…え!?」
「それなら納得いくし」


素の姿?
あのモノクルやシルクハットを取った姿のキッドに会った?


「いや〜、それは無いよ」
「素、って言ってもほんとに素の自分じゃなく誰かに変装してた可能性もあるし」
「…」
「その時にオメーと行動して、気に入る要素を見つけた、とか」


誰かに変装した?
それならわかるわけがない。


「思い当たるヤツいねーか?…アイツは女に化けるのが好きだけど、男にだって、ガキにだってなる」
「そう言われてもなぁ…」
「最近知り合ったヤツとかは?」


そう言われて真っ先に思い浮かんだのはさっきのメール。
…いやでも、それはいくらなんでも飛躍しすぎだ。
あの大怪盗が高校生のわけない。
…いや、高校生に変装していたのか?
それは否定できないけど…。


「キッドの変装って、」
「…」
「どうやって見破れるの?」


もしあれが変装なら、何か見破る方法を知っておいた方がいい。
変装じゃないなら、たぶん彼はキッドじゃない。
一高校生が、キッドのわけ


パシャン


「え?て、新一くん!?」
「…やべぇ逆上せたかも」
「はぁぁぁ!?ちょっ、待っ」
「くらくらする」
「ち、ちょっと待ってっ!ここでキミに倒れられても、私じゃキミをベットまで運べないからっ!!」
「…悪ぃ」
「おいコラ待て新一っ!!」


そう言って私の方に倒れて来た新一くん。
…こっからどーすんの。
とりあえずお風呂から上げて、この前私がしてもらったみたいに冷えたタオルをあてないとだよね…。


「普通男の役割だろーが、このへタレッ!」


よっ、と新一くんを支えながら浴槽から立ち上がった。

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bkm

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