Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「…」
「…」
「…」
「…」
「…と、」
「と?」
「とりあえず、中、入ります、か…?」


ずいぶんと長い時間玄関ドアの前にいたため、冷静さを取り戻したらしい新一くんに室内に促される。
バッと私から離れ、先にリビングに向かう新一くんの耳が赤かったのを見逃さなかった。
とりあえずなんとかなったようだ。
良かった良かった。


「あー…茶でも飲むか?」
「うん、もらう」
「おー…」


キッチンに行ってお茶の用意をしてくれてる新一くん。
さてさて。
私はそれで、今日ここに泊まることになるんだろうか?
失踪していたへタレが戻ってきたようだし、私が帰るといえば送ってくれるんだろうなぁ。
でもそれはそれで、て、ん?


「…メール?」


from:黒羽快斗
sub :ひまー
本文:オネーサン何してるの?あーそーぼ!


…。
メールは人の性格を表すけど、ほんっと、あの性格まんまのメールが来たな…。


to :黒羽快斗
sub :これから
本文:彼氏んちでエッチする予定だから無理


こう言えば引き下がるだろう、青少年。
あの子くっだらないことで連絡しないって言っておきながらなんだ今のメール。
今度会ったら説教だな。


「誰から?」
「え?ああ、友達」
「…男?」


いつの間にかお茶を持って横に来ていた新一くん。
あれ?へタレ発見されたんじゃないのか?


「あ、そう言えば」
「…オメー今話逸らしただろ?」
「軽井沢で買った荷物どうした?」
「…車の中」


現場に車で行こうとしたら警備の邪魔になるから公共機関使って来いと中森警部に言われ。
初心者マーク輝くBMを工藤家に置いてから現場に向かった。
から、荷物は車の中、と。


「どこ行くんだよっ」
「荷物取ってくるの。着替えとかも入ってるし」


そう言ってリビングを出ると、ちゃんと後ろからついてくる。
…ほんと忠犬だよ、キミは。


「…ぃ、よっ!と、はい、これキミの」
「…どーも」
「こ、れ、で、全部、かな?」


着替えの入ってるカバンと、買った荷物…よし、アレもある。


「あ、ちょっ」
「部屋に運ぶんだろ?持ってく」
「…ありがと」


当たり前のように私の荷物も運ぶ新一くんは、いつかの忠犬執事を彷彿とさせた。


「で?荷物全部持って来たけど?」
「ああ、うん、ええっと、コレコレ!」
「…キャンドル?」
「そ。お風呂に浮かべることができるヤツ」
「…それが?」
「え?それがって?」
「それがどーした?」
「どーしたも何も、これ浮かべてお風呂入るんでしょ?私とキミが」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…は!?」


失踪したヘタレが戻ってきたな、完全に。


「万座の露天風呂からしたら落ちるけど、キャンドル浮かべて入るのもいいもんだよ」
「ち、ちょっと待て!一緒に入るのかっ!?俺んちの風呂でっ!?」
「そう。嫌?」
「えっ!?いや、嫌とかじゃなく、いやだけど、」
「別にもう一緒に入ったんだから1度入るも2度入るも一緒でしょ?」
「旅先で入るのと自宅で入るのとじゃ全然違うだろーがっ!!」


顔を真っ赤にして叫ぶ新一くん。
ああ、逃げ回った容疑者を確保した刑事の気分だわ。


「入りたくないなら無理にとは言わないけど」
「いや誰もそんなことはっ」
「とにかく私お湯張ってくるから。あ、ライター出しといて」
「…」


かなり自分のいいように話をすり替えてしまったけど。
でもまぁ、大丈夫だろう。


「じゃ、私タオル巻いて先に入ってるから気が向いたら入ってきなよ」
「…」


あの難しそうに何か考えてる顔を見ると、気が向く向かない以前に行動起こせるかどうかだけど。
どんな選択でもとりあえずは、今日が無事に終わるだろう。
水面に揺れるロウソクの灯りを見つめて今日の疲れを癒した。

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bkm

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