Detective Conan


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stock-永遠の恋-


60


「私今頃万座の屋上露天風呂で有給消化してる予定だったんですが」
「…」
「どういうことなのかもちろん説明していただけるんですよね?」
「…」
「怪盗キッドさん」


軽井沢から万座に向かう途中、知らない番号から電話が来た。
出てみると教えた覚えのない中森警部からキッド確保の応援要請だった。


−お断りします−
−…我々も一般人の力なんぞ借りたくもないんだが、キッドの希望だ−
−…はあ?−
−先日届いた予告状の予告日が今日なんだが、今朝になって予告状に追加でメッセージを送ってきたんだよ!苗字名前、あんたを現場に呼ぶようにと!−
−…なんだって私が−
−それはこっちの台詞だっ!お前キッドに何をした!?−


永遠に続くんじゃないかっていう中森警部とのやり取りに呆れた新一くんが、自分も同行することを条件に東京に戻ると提案した。
中森警部的には、キッドが追加で予告状を出すなんて今までないことだから、何かあるに違いないとどうしても私を現場に呼びたかったようで2つ返事で承諾した。
…すげぇ迷惑極まりない話だ。


「この間も思ったけど、」
「うん?」
「…名前、オメーキッドに何した?」


これから東京に向かう道のりでこの質問が永遠に続くんだろうか…。


「むしろ私がされたんだけど。催眠スプレー吹きかけられて嫁入り前の大事な体を公衆の面前で大の字書いて寝かされた」
「その前にキッドとなんか話したんじゃねぇのか?」


私の意見は無視か、おい。


「…まぁ、話したは話たけど」
「その時にキッドの気を引きそうな話題になったんじゃねぇのか?」
「別に取り立てて気を引くような話なんてしてないけど」
「オメーはそうでも向こうはそうは思っちゃいねぇってことだろ。だからわざわざオメーを呼び出した。違うか?」
「…違うかって聞かれても」


私自身、なぜ大怪盗様にご指名を受けたのかわからないわけだし。
まぁ…、このへタレがせっかく勇気を振り絞って屋上露天風呂に誘ってくれたのに、一瞬にして泡と化したわけだ。
苛立つキミの気持ちすごくよく分かる。
むしろ私は有給休暇中に警察に呼び出され泣きたい気分だ。


「…で、コイツが今日の獲物、ブルー・ペクトライト、別名ビッグジュエル・ドルフィン・ストーン、ですか」


あの後もなんの嫌がらせだ?的尋問が車内を包んだ。
うん、キミは名探偵だよ。
それは認める。
高校生の普通の質問が取り調べにしか思えなかった…。
現場についたらいつものように、装甲車やらなにやらをご用意されていた中森警部。
相変わらずすごいな、この無茶っぷりが。
そして本日の獲物、世界最大の癒しの石ブルー・ペクトライト、別名ドルフィン・ストーンと対峙した。
…世界最大の癒しの石でも今の私を癒せるだけのオーラはないらしい。
いや、私っていうか新一くんを癒せるだけのオーラはないらしい。
車内でも不機嫌度が少しずつ上がっていたけど、現場について追加で来た予告状を見た瞬間不機嫌メーターは振り切れたらしい。
どーすんだ、この子。


「予告時間まであと30分、か」
「ギリギリ間に合って良かったね」
「…」


浮かれた万座温泉のツケはきっちりあのキザ怪盗に払ってもらえるんだろうか。
だいたいなんで私がっ!
その時、ブルー・ペクトライトが展示されていた室内の照明が落ちた。
え?でもまだ20分前くら


「っ!?」
「しっ!お静かに願いますよ?名前嬢」


後ろから片腕で体を押さえつけられる。
もう片方の手は、私の口をしっかりと押さえていた。


「何してる!?早く電気をつけろっ!!」
「警部!懐中電灯をっ!」
「貸せっ!ブルー・ペクトライトは無事だなっ!お、やっと電気が戻ったか!おい、異常は」
「…名前?名前っ!」
「…まさかキッドに連れ去られたのか!?おい!探せ!!宝石もまだあるし、キッドはこの近くにいるはずだっ!!」


バタバタと一気に室内が騒がしくなったのがわかった。
…私からは目の前に白い壁があってその様子は見えないけど。
ここは室内らしいけど、自分の居場所すらわらかない。
中森警部も、そして新一くんも、今ごろ必死で探してるんだと思う。


「さて、」
「…」
「あなたとはもう少し静かな場所でゆっくり話がしたいので、つきあっていただきますよ?名前嬢」


真後ろからそう聞こえたかと思ったら、首に衝撃が走った。
ああ、私またこの人に気絶させられたのね、と気づいたのは犯行予告時間から実に1時間は経とうかとしていた時だった。

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bkm

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