Detective Conan


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stock-永遠の恋-


56


「…なんだよ、気持ち悪ぃな」
「んーんー!なんでもないわー!」


お風呂から上がって、軽く逆上せかけていた工藤くんと部屋でぐだぐだしていたら有希子さんの言っていた時間になって。
お隣の部屋に向かったら、そりゃーもう満面の笑みの有希子さんに迎えられた。
…なぜ?


「じゃあ、今日はここでお夕飯ね!」


というわけで、有希子さんたちのお部屋でいただくことになった。
部屋食だったのか。
てっきりどこかに食べに行くのかと思ったわ。


「あ、明日は外で食べるわよ?緩いけどドレスコードもあるからそのつもりでいてね!」


…ドレスコードのある場所で食べるのか。
まぁ、このメンツだし、何があってもいいようにそれっぽい服は持ってきてるけどさ。
それにしてもほんとにやるとは。


「じゃあほらほら!新ちゃんも名前ちゃんも座って!」


にっこにこな有希子さんに促され、工藤くんの隣に座る。
向かいは有希子さん、斜め前が工藤先生。
…まぁ、妥当な席順だ。


「では、軽井沢の夜に」
「かんぱーい!」
「…乾杯」
「おー…」


ワイングラスを傾けながら、慣れた手つきで優雅に乾杯する工藤先生と有希子さんはほんとにCMとかで使われそうな勢いだ。
…いるんだなぁ、こういう人種。


「あ、工藤先生。取材は順調でしたか?ご同行できずすみませんでした」
「ああ!何気にしないでください。それに外に行くよりも内で楽しいことがあるようだし」
「…はあ?」


今度は有希子さんだけじゃなく、工藤先生までにっこにこになった。


「聞いたぞ、新一」
「あ?」
「到着早々、露天風呂に入ったそうじゃないか」
「…はっ!?」
「もう!新ちゃんたらあんなに大きな声出してたら丸聞こえよ!私が恥ずかしくなっちゃったわっ!!」
「んなっ!!」


ああ…、それで。
部屋に来た私たちをにっこにこ、もといニヤニヤ顔で見つめていた理由がようやくわかった。
まぁ、確かに?
隣同士、しかも露天。
聞いてしまっても有希子さんに罪はない。
しかもあれだけ叫んでたし、この子。


「お恥ずかしいところをお聞かせしてしまったようで」
「いいのよー!もう2人がらっぶらぶで羨ましくなっちゃったわ!だからさっき優作と、私たちも久しぶりに一緒に入るぅ?なんて言ってたのよ!」


…若いな、この人。
いや、実際高校生の息子がいるようには見えない若い人だけど。


「考えたくねーから息子の前でそういうこと言うなよ…」
「ええっ!?どーしてー?」
「いやどーしても何も普通親が一緒に風呂入ってるとか考えたくねーだろ」
「なんで?」
「え!?名前さんまでなんで、って」
「キミこの人たちがらっぶらぶじゃなかったら生まれて来なかったんだよ?」
「いや、そりゃそーだけど」
「ご両親の仲が良くて何よりじゃない」
「…いや、なんか違う気がする」


釈然としない顔のまま、ワインを傾ける工藤くん。
いくつになっても恋していられる夫婦なんて羨ましい限りじゃないか。
一緒に風呂入るくらいいいじゃない。


「なんかごめんなさいねぇ、名前ちゃん」
「…いえ、大丈夫です」
「なんなら置いて行ってくれても構わないんだが…」
「大丈夫です、ほんとに。連れて帰りますから」
「私が連れて行こうか?」
「いえ、隣の部屋ですから本当に大丈夫です」


あの後も両親の攻めに耐え切れなかった工藤くんは、普段飲まないワインにすっかりくたばった。
…ガキが。


「ほら、キミしっかり歩きな」
「…無理」


…重いっ!
肩を貸すって言っても工藤くんよりも背の低い+体重の無い私には隣の部屋までとは言え軽い罰ゲームだ。


「名前、俺、無理」
「はぁ?もうドアの前に来たから、ほら、入るよ」


…うん?
この子今私を呼び捨てたか?
相当酔ってるな…。


ガチャ


「ほら、入って。後はトイレでもお好きに」
「名前」
「ぎゃっ!」


部屋に入ったと思ったらこのガキ後ろから押し倒しやがった!!
今もろにフローリングの床に顔打ったんだけど!!!


「キミどきな」
「…」
「…」
「…」
「…おいこら、退け」
「新一」
「は?」
「俺、新一。キミじゃない」
「…」
「名前」


なんでそう呼ぶのかって、なんかもうただの癖なわけで。
それが当たり前になってたから全く気にしなかったけど。
そう言えばこの子、私に化けたキッドに「新一くん」て言われたって喜んでたな…。
そんなこと、気にしてるとは思いもしなかった。
…つーかこの子私が呼ぶまで床から起き上がらないつもりか?
いっくら夏でもこの床冷たいんだけど。


「退きなさい」
「…」
「…新一くん」
「ん」
「…」
「…」
「…」
「…」
「おいこら、新一、退け」
「…」
「…」
「…」


まさかと思いうつ伏せで押し倒された状態から、なんとか顔を天井の方に捻ってみたら案の定寝てやがるっ!
あり得ない。
普通こういうの男女逆じゃないのか?
酔った女が、男に抱きついて可愛いヤツだなオメー、って言って気がついたら一夜をともにしてたってのが定番じゃないのか?
そもそもさっきの露天風呂だって普通は照れる女に男が背中流させるもんじゃないのか?
どうしてこうもこの子はこんななんだっ!
私の女としての立場ってものが、


「名前…」


…上から降ってくる自分の名前が、なんだか自分の名前じゃないように感じる。
私もだいぶワイン飲んだし、どうせこの子動かないだろうし。
もういっそこのままここで寝ようかなぁ…。
なんか床も体温で温かくなってきたし。
背中に感じる新一くんの温もりが、心地よい眠りに向けて手招きしているようだった。

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bkm

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