Detective Conan


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stock-永遠の恋-


53


「…車で行くんですか?」
「そーよー!嫌?」


軽井沢旅行前日、朝8時工藤家集合と何故か有希子さんから連絡をいただいた。
息子はどうした?
と思ったけど、彼は彼なりに真剣に考えている最中なんだと納得した。
そして今日、軽井沢旅行当日。
工藤家に来てみたら黒光りした先日のアルファロメオがこれでもかと主張して工藤家前に横付けされていた。


「…どうせ車で行くなら、新一くんとドライブしたことないので新一くんとのんびりドライブしながらもいいなぁと思いまして」


ていうより、この人のロデオドライブに何時間も命懸けたくないわ…。
ああでもあのドライビングテクニックならある意味何時間もかからないかもしれない。


「あらやだ!それもそうね!私ったら気が利かないでごめんなさい」
「いえ、私の我が儘ですから」
「いいのよー!新ちゃーん」


どうやら有希子さんの運転に命を懸けずに済みそうだ。
ホッとしたのも束の間、渡された車の鍵はBMの鍵で。
…私左ハンドル運転したことないんだけど。


「名前さんの運転で行きます?」
「…キミ、左ハンドルの経験は?」
「日本じゃ初めてだけど、アメリカで何度もありますよ」


ああ、この子ほんとにお坊っちゃんだわ。


「…よろしく」
「はい。…どーぞ」


さりげなーく、助手席のドアを開ける工藤くんは、さも当たり前だみたいな顔をしていて。
私車乗る時にドア開けてもらうのなんて、ホテルで仕事中の人以外で初めてなんだけど。
どういう教育してたらこんな息子になるんだ。
こういう行動ができるのに、肝心なところでヘタれるのはなんとかならなかったんですか、工藤先生。


「名前さん?」
「…ありがと」


ああ、ちょっとお姫様気分だわ。
初心者マークが輝くBMで、高速をひた走る。


「キミ意外と安全運転なんだね」
「どんな運転すると思ったんだよ…」
「ロデオみたいな運転?」
「どんな運転だよ…」
「車幅感覚もしっかりしてるし、ちょっと驚いた」
「…どんだけ下手くそだと思ってたわけ?」
「いやだって初心者マークついてるし」
「…まぁ免許取ったのは確かに最近だけど、元々ロスの家の敷地内でよく運転してたし」
「…は?」
「え?」
「ロスの家の何?」
「敷地内。まぁ教習所並みってわけには行かねーけどそこそこ運転できるスペースあるし」


今この子との身分差を感じたわ…。
運転練習ができるスペースがあるほど広い自宅って…。
ああ、宮野さんの言葉を思い出す。
私はやっぱり農民の娘でこの子は王子なのかもしれない。


「でも、」
「うん?」
「家族以外を乗せるの初めて」
「今すぐ止めて」
「大丈夫だって」
「無理、怖すぎる。私が運転するから今すぐ止めろ!」
「左ハンドル運転したことのないヤツの運転の方が怖ぇだろーがっ!」


ぎゃーぎゃーと、なんとも不毛な言い争いをしながら車は走る。
あれ?
この前のしこりはどこ行った?
高木刑事とキムチ鍋で汗と一緒に流れたのかもしれない。
そうだったらいい。


「名前さんて、」
「うん?」
「ドライブ中に何か聴きますか?」
「あーうん、聴くって言うより、熱唱するタイプ」
「…アンパンマンじゃねぇだろーな」
「キミまたアンパンマンを馬鹿にしたね?」
「別にそういうわけじゃねぇけど」
「まぁドライブ中にアンパンマンは歌わない」
「じゃあ何歌うの?」
「最後にドライブした時はViva!LasVegasを熱唱したな」
「…どういうチョイスだよ」
「ラスベガスな気分だったんだよ」
「…ラスベガスねぇ」
「今ならViva!Karuizawaって歌ってやろうか?」
「気が滅入りそうだからやめてくれ」
「…」
「痛い痛い痛い痛いっ!!」
「…」
「運転してんだからつねるの止めろっ!!」
「…言わせてもらえば」
「いってぇー…、うわ、腕赤くなってるじゃねぇか」
「キミの歌声の方が気が滅入る。滅入りそうじゃなく、滅入る」
「…もう絶対歌わねー」
「まぁ無難にCD聴こう。何入ってんの?」
「さぁ?母さんが聴いてたヤツだから何が入ってるかまでは…」
「…ふぅん」


パチッ、とオーディオボタンを押す。
流れて来た曲は、


「…有希子さんの趣味だったのか」
「あー、まぁ確かに母さんがよく歌ってるの聴いてたってのはあるな」


この間工藤くんがバイオリンで弾いた曲。
工藤くんがボリュームをあげる。


「どうぞ、歌ってください?」
「キミはバイオリン弾いてる気になりなよ?歌わなくていいから」
「歌わねぇからっ!…気持ちだけ参加してます」
「そうして」


工藤くんが曲をもう一度最初に合わせる。


〜♪〜♪


オーディオからの曲と私の歌声が響く中、一路軽井沢へ。

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bkm

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