Detective Conan


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stock-永遠の恋-


52


「苗字くん!よくやった!!」
「え?」
「工藤先生がっ!工藤先生がっ!!」


翌朝職場に行けば、軽くお祭り騒ぎだった。
…さすがです、工藤先生。
たった1本の電話でここまで編集長のテンション上げられるなんて…。


「じゃ、そういうことで明後日から4日間有給使って休んでね」
「…はっ!?いや、私夏休みに、」
「苗字くんの夏休みよく見たらさ来週じゃないか!その間、工藤先生の気が変わったらどうする!?」


そんなバカな…。
私の有休、こんなあっさり使わさせられるのか…。
しかも2日前に有休取れるって、私この職場でいらない子なんじゃ…。


「楽しんで来てね、軽井沢!」
「…行き先まで知ってるんですね」
「工藤先生の新作が楽しみだよ!」


でも編集長。
私工藤先生の新作は軽井沢と関係ないんじゃないかと思いますよ…?


「明後日の朝出発みたいですよ?」
「…うん、聞いた」
「なんか母さんがすっげぇ張り切ってる」


…あの人があれ以上張り切るとどうなるんだ。
そのテンションに4日もついて行けるか心配だ。


「まぁなるようになる」
「え?」
「…なんでもない」


1人じゃないし、なんとかなるだろう。
何より息子が一緒なんだ。
何かあったら息子に押しつけよう。


「名前さん?」
「うん?」
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「いや…。昨日博士の家出てからなんか変だし、行きたくない、とか?」
「…」


それはキミがうちに泊まること断ってまで会いに行ったからでしょう、宮野さんに。
…ああ、そう言えば一緒にディナーだったんだっけ?
なんだかなぁ…。


「キミと、」
「はい?」
「…」
「…」
「…」
「…名前さん?」
「…キミと宮野さん、」
「うん?」
「どういう知り合い?」
「…は?宮野さん、て灰原?」
「…」
「…どういう、って、うーん…」
「そこ悩むところなの?」
「いや、一言では言い難いんだけど、」
「うん?」
「なんつーか…戦友、とか?同志、とは少し違うけど、そんな感じ」
「…はあ?」


戦友?
って、何。
なにかと戦ったのか?
何と?
ますますわからん。


「だいたい彼女いくつ?」
「ああ、19」
「…はっ!?年下なの!?アレで!!?」
「…気持ちはすげぇよくわかる」


あ、あり得ない。
あの子あれで私より年下なわけ?
うん?
19でドイツの研究チームにいる、ってことは飛び級した、ってことだよな。
…なるほど。
態度だけがデカイわけじゃなく、頭でっかちなわけだ。
…まぁ、この推理オタクな探偵少年とは、話が合うだろうな。


「名前さん?」
「キミ、」
「はい?」
「あの子何しに帰って来たかわかってんの?」
「え?何しに?…その後の経過を見に?」


なんのその後だ、おい。
持ってた電話がミシッと音を立てたのが聞こえた。


「まぁなんでもいいけどっ」
「はぁ?」
「キミもっと他人と真剣に向き合いな」
「…は?」
「キミがいい加減な態度だからこうなるんじゃない」
「こうって?」
「蘭ちゃんのことといい、宮野さんのことといい、キミはどうしてそうなの」
「え?蘭?」
「とにかく、明後日の朝そっち行くからそれまで自分で真剣に考えな」
「え?あ、ちょ」


通話終了ボタンを押して携帯を床に投げる。
まぁ、真剣に考えたところで彼に答えが出せるとは思えないけど。


「あり得なくないですか?」
「…僕の家で真夏に鍋をやることの方があり得ないです」
「だって美和子さん今福岡に出向中でしょ?高木君をよろしくね!って言われたんでご飯作りにきたんじゃないですか」
「…だからってなんで真夏に鍋」
「汗っだくで食べるのが爽快なんじゃないですか!」
「…それ工藤くんとやってくださいよ」
「さすがに私も彼の前で汗だくで物を食べる勇気があるほど乙女心捨ててないので高木刑事にしたんです」
「…今すごいバカにされましたよね?」
「いいえ、バカにしてません。男として見てないって言ってるだけで」
「…」


今日の夕飯は高木刑事の家で鍋料理。
しかもキムチ鍋と汗っだくなチョイスをした。


「まぁいいんですけどね。僕も苗字さんを女性として見てないんで」
「やめてくだいさい」
「え?」
「そういう発言をされること自体がまずキモい」
「…僕のこと嫌いなら来なきゃいいじゃないですか」
「え?高木刑事のこと好きですよ?」
「え!?」
「からかうと面白いし。美和子さんの犬みたいで」
「…」


ふぅふぅしながら高木刑事とキムチ鍋をつつく。
嫌いならまず鍋料理なんて一緒に食べたりしないっつーの。


「でも、」
「はい?」
「工藤くんのことですけど。その宮野さん?って何者なんです」
「それがわからないから愚痴らせろってここに来たんじゃないですか。寝ぼけてないでください」
「寝ぼけてなんかいませんて!…工藤くんが米花町にいない1年の間、何があったんでしょうね」
「…さぁ?戦友らしいですよ、宮野さんと」
「戦友、ねぇ…。あ、」
「え?」
「もしかしてあれじゃないですか?」
「どれ?」
「ほら、工藤くんが戻ってきた時デカデカと記事になったでしょう。とある犯罪組織を壊滅させたって!あれを壊滅させるために一緒に戦った、とか」
「なんのために?」
「え!?それを言われると…」
「どんな組織か知らないですが、探偵である工藤くんが壊滅させたのはまぁ納得できますが、一科学者である彼女がその組織とやらを壊滅させるメリットがわからない」
「…そう言われると。ま、まぁ、僕の想像ですし!」
「高木刑事、」
「はい?」
「それは想像じゃなく、妄想って言うんです」
「…苗字さん」
「はい?」
「次からもっと滑らかな表現にしてくれません?」
「あ、気をつけます」
「…そうしてください」


インナーに着てるキャミソールに汗をびっしりつけながら、キムチ鍋をつつく。
友達は友達でも、絆は友達以上。
そんな印象を受けた今日の電話。
ちっ。
蘭ちゃんといい、ほんとにあの男はっ!
今日たくさん汗を流して盛大に愚痴らせてもらって、明後日までに引きずらないようにしないと。
そう思いながらぐつぐつ煮えたぎるキムチ鍋に手を伸ばした。

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bkm

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