Detective Conan


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stock-永遠の恋-


4


「なんで番号教えてくれないんですか?」
「だから携帯持ってないって言ってるでしょ?」
「…今手の中に持ってるものはなんです」
「これ?小型通信機」
「…」


すっかり工藤新一から友人扱いされるようになった今日この頃。
いちいち番号教えなくても事件の度に顔合わせるんだからいいだろう、と思っていてもそれは私だけで、このお坊ちゃんは不服らしい。


「キミさぁ、同い年くらいの女の子に言いなよ、そのセリフ。喜んで教えてくれる子いっぱいいると思うよ?」
「…同年代は嫌なんです」
「なんで?童貞バカにするから?」
「それはオメーだろ」
「キミも実は口悪いよね?」
「…」


こほん、と咳払いをする工藤新一。
普段はお上品に話しているわりに、節々で言葉が荒れる。
恐らく、こっちがほんとの「高校生・工藤新一」だろうに。


「…同年代のヤツらは、幻想抱きすぎなんですよ」
「え?」
「俺を理想の王子かなんかだと思ってる」
「ああ…」
「俺は王子なんかじゃねぇ、普通の高校生だっつーの」
「むしろ普通より経験値の低い高校生だよね」
「…そこにこだわるんじゃねぇよ」
「まぁ、いいや。それで?」
「…で、思ってたのと違うだのなんだの言われるのめんどくせぇし。その点名前さんは、素の俺見せても驚かないし」
「だって私はキミに対して期待してないから」
「…」


まぁねぇ…。
あれだけ連日新聞に載ったり雑誌で特集組まれたり。
身近なアイドル的に扱われてれば、理想の王子と錯覚する女子高生はごろごろいるだろう。
しかもコイツ顔だけはほんとに良いし。
人当たりもまぁ、良いようだし。
理想を押し付けられるだろうさ。


「名前さんは、なんつーか、楽なんです」
「…」
「なんか、こんなこと言うと失礼だろうけど、蘭といるような気がする」
「それすっごい失礼だよ。そういうことはヨソで言わない方がいい」
「…名前さんにしか言いませんよ。蘭といた時と同じように素になれて、蘭といた時よりも楽」
「それはキミも私にときめいてないからでしょ?そりゃ楽に決まってる」
「…そう、なんですかね」
「そうでしょ」


他になんかあったら怖いっつーの。


「…まぁ、だからそういうわけで番号知りたいんです」
「全くどういうわけか意味が伝わらないわ。キミ国語の成績悪いでしょ?」
「…強いて言うなら国語は悪いです」
「強いて言うなら?」
「基本全教科90点以上なんで」


毛利さんのお嬢さんがコイツを選ばなかった理由が最近わかってきた。
なんて存在自体が嫌味なんだ、工藤新一。


「だいたいさ」
「はい?」
「キミの中の男女間の友情の定義は?」
「…一緒に食事に行ったり、遊園地行ったり?」
「それは絶対嫌」
「…」


なんで男友達、しかも高校生のお坊ちゃんと2人きりで遊園地に行かなきゃいけないんだ!
ご飯ならまだしも…。


「キミもしかして毛利さんとこのお嬢さんとそういうつきあい方してたの?」
「蘭とですか?まぁ、そうですね。買い物行ったり、食事に行ったり。ああ、うちの親がいるロスに一緒に遊びに行ったこともあります」
「…なんでそこで押し倒さなかったの」
「はっ!?」


泊りがけで旅行?
しかも親公認?
コイツ、押しが弱くて逃げられたんじゃないのか?
だいたい何そのつきあい。
すでにただの友達の域超えてるじゃん。


「…まさかキミ、それを私に求めてたりしないよね?」
「え?普通じゃないですか?男女間の友情として」
「…」


危ない危ない…。
うっかり番号教えようものなら、半彼氏状態で私のプライベートに居座るな、コイツ。


「で?」
「え?」
「番号。いつになったら教えてくれるんです?」
「だから携帯持ってないって」
「携帯じゃなくて小型通信機の番号です」
「…これ仕事用だから」
「構いませんよ、お互い仕事の時に会うんだし」


めんどくさいな…。
どうしよ。


「…キミさ、もうちょっとオシャレセンス磨いたら?」
「話すり替えましたね?」
「いや、私の通信機に登録する男友達はそんなイケてない格好の人嫌だから」
「…」


蝶ネクタイはありえない。
しかも高校生が。
どこのぼんぼんだ。
いや、工藤先生のところのぼんぼんなんだけど。


「俺そういうの興味ねーし」
「そう、じゃあ交渉は決裂。解散」
「あ、じゃあ」
「え?」
「一緒に行きましょうよ。買い物」
「え、嫌」
「人のセンスとやかく言うってことはさぞセンスに自信があるんでしょう?選んでくださいよ、俺の服」
「え、嫌」
「名前さん俺んち知ってるんですよね?今度の週末、俺んちで待ち合わせて買い物行きましょう」
「え、嫌」
「待ってますから、好きな時間に来ていいですよ。じゃあ解散」
「おい、こら」


珍しく颯爽と去っていく工藤新一を見送る。
アイツこのノリ慣れてきやがったな…。
一応確認のため手帳を開く。
驚くべきことに今度の週末は空欄。
迷いながらも手帳を閉じた。

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bkm

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