Detective Conan


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stock-永遠の恋-


3


「俺の方がイイ男だと思うんですよね」


最近のお決まり。
難事件があるたびに取材に出かけ、行った先で華麗に推理し解決させる高校生探偵に、事件後全く関係ない童貞喪失相談、あ、いや、恋愛相談をされること。
…だいたいなんで私なんだ。
他に相談相手いないのか。


「ごめん、一瞬寝てた。なんだって?」
「だから俺の方がイイ男だと思うんですよ」
「ごめん、一瞬寝てた。なんだって?」
「…」


天狗の時期を乗り越え、成長したと言い放った高校生探偵の鼻は全く折れていなかったようだ。
自分のことイイ男とか言うか、フツー。
だからコイツ彼女いないんだな。


「…俺の方が本堂瑛祐よりイイ男だって言ってるんです」
「ああ、そうなの?良かったね」
「もっと真剣に話し聞いてください」
「ホンドーエイスケ知らないし。誰よ、ソイツ」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…諦めませんか?」
「キミが話しを振ってきたんでしょ?無かったことにしていいならすぐ消去するわ」
「消去って…」
「キミと違って覚えていられることに限界があるの。で?ホンドーエイスケ、消去していいのね?」
「…恋人です」
「誰の?」
「…蘭の」
「ああ…」


まだ言ってたんかい。
毛利さんところのお嬢さんにフラれたって話は結構前だった気がするんだけどな…。
まぁ…男の方が感傷に浸るって言うしそれか?


「で、そのホンドーエイスケがどうしたの?」
「だから俺の方がイイ男だと思うんですよ」
「それ自分で言ってて恥ずかしくない?」
「…」


どうやったらこのお坊ちゃんの鼻へし折れるんだか試してみたい気もするけど、やっかい事はごめんだ。
フツーに受け流そう。


「確かに頭はキレるかもしれないけど、それだけなんですよ?別にスポーツができるわけでもないし、すごいカッコいいってわけでもない」
「それ遠まわしに自分はスポーツできてカッコいいって言ってる?」
「別にそういうわけじゃ」
「キミ案外モテない男街道つっ走ってるね」
「…名前さんは毒舌お局街道に向かって走ってますね」
「最高の誉め言葉だわ」
「誉めてねーし」
「ああ、そうなの?気づかなかった」
「…」


毒舌お局街道上等だっての。
そんなのにビビッてたら殺人事件現場まで取材に来れるわけがない。


「名前さんて」
「うん?」
「掴み所ない人ですよね」
「…高校生のお坊ちゃんが気軽に掴めるほど浅い人生送ってないつもりだけど。」
「いや、ほんとにそう思いますよ?俺いろんな人見てきたし。…善人も悪人もたくさん。名前さんはその中でも掴み所がないです」
「悪人て?担当した事件の加害者のこと?」
「…それだけじゃないです。世の中には普通に生きてたら知らずにすむ世界が、一回判断を誤っただけでやってくるんですよ。そこにはそれまでからは想像のつかない苦悩が待ってるんです」


今回は私のコメカミがひくついた気がした。
ガキが何言ってんだ。


「随分と波乱万丈な人生をお送りのようですね、探偵くん」
「…まぁ、平坦じゃなかったですね。この1年は特に」
「この1年て?キミが雲隠れしてた時期よね?どこに行ってたの?」
「いましたよ」
「え?」
「米花町に、いましたよ」
「…でもキミの家お化け屋敷って近所の子供達の間でまことしやかに言われてたみたいだけど?」
「…家にはいませんでしたけど」
「はあ?」


米花町にいたのに家にいないってなんだ?
このお坊ちゃん、お父上がかの有名な推理小説家の工藤優作先生で、お母上が元女優。
金だけはあるだろうから、あれか?
1人暮らしってヤツを経験したのか?
でもそれにしたって実家と同じ町内はありえないよな…。


「まぁよくわかんないけど、わかったわ」
「わかったんですか?」
「うん。キミが自分は苦労してきたのに報われないかわいそうな人間だと思ってることは」
「…」


さながら悲劇のヒーローになってるのだろう。
どんな経験したのか知らないけど、たかが17年で人生がわかった風に語るなっての。


「名前さんて、」
「うん?」
「俺のこと嫌いだったりします?」
「えっ!?好かれてるとでも思ってたわけ!?それに驚くわ」
「…」


どこらへんからその自信が沸くわけ?
ほんとこのお坊っちゃんはわからん。


「…この前、少し好きになったって言ってましたよね?」
「ああ、童貞のキミは少し好き」
「そういう趣味なんですか?」
「そんなわけないでしょ。でもキミにフツーに彼女がいて順風満帆な高校生活送ってたら嫌いなままだったよ」


親は超有名人で豪邸に住んでて。
眉目秀麗、頭脳明晰、嫌味なことこの上ない存在。
それプラス恋人も女としてパーフェクトに近い毛利さんちのお嬢さんだなんて言ったら刺されても文句言えないと思うけど?


「そんなにはっきり人から拒絶されるの初めてかも…」
「あー、ほんと?キミ自分が思ってる以上に敵いると思うよ?」
「…否定するとか、慰めようって気はねぇのかよ?」
「え?なんで?キミと友達なら慰めるかもしれないけど、それはないから慰めない」
「…じゃあ友達になりましょう」
「はぁ?」
「俺名前さんのこと嫌いじゃないし」
「…私の話聞いてた?」
「聞いてましたよ。今の俺が少し好きなんですよね?友達にはぴったりじゃないですか」


意外とポジティブだな、コイツ。
でも私そろそろ帰りたいんだけど。


「じゃあ友達ね」
「なってくれるんですか?」
「ああ、うん、いいよ。じゃあまぁそういうことで解散」
「あ、ちょっ、」
「なに?」
「番号教えてください」
「私ケータイないから解散」
「そんなわけねーだろっ!!って、おいっ!!」


というわけで、私の友人史上一番天狗に近い少年と友達になった。

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