Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「今日、泊まってく?」
「………えっ!?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…ぶっ。あ、ごめんごめん」


あまりに見事にフリーズした工藤くんに、思わず吹き出してしまった。


「…からかってんのかよっ」


赤い顔のまま怒る工藤くんは、ほんとに可愛い。


「いいや、本気」
「…」
「どうする?泊まってく?」


泊まったとしても何も起こらなそうだけど。


「……………今日、は、帰る」
「そ?」
「…この後予定あるし」
「この後?こんな時間から?」
「…19時羽田着の便で、帰ってくるから博士の家で会う予定」
「博士って、隣の家の人だよね?帰ってくるってその博士が?」
「いや。…灰原が半年ぶりに日本に帰ってくる」


灰原…って、どっかで聞いた気がするけど、どこでだっけ?


「…19時着なら手続き諸々しても米花町に着くのは20時半過ぎるだろうね」
「博士の家には21時くらいに行くって言ってある」


うーん…、やっぱり思い出せないな、灰原。
工藤くんから聞いたんじゃなかったのかな?


「じゃあ、俺帰るけど」
「うん、気をつけて」
「…」
「なに?」
「…俺ほんとーに蘭の話してるつもりなかったんだけど」
「…」
「…だから、」
「だから?」
「…気をつけ、ます…」


だからってすぐに何かが変わるわけじゃないだろうけど。
それでも。
その一言が嬉しかった。
鼻がツーンとするくらいには。


「…俺も気をつけるから、名前さんも、考えておいてください」
「え?何を」
「何をってオメー…」
「なんかあったっけ?」
「…俺んち!帰ってくること、考えておいてください」


そう言って工藤くんは玄関の扉を閉めた。
まさかそこまで話掘り返されるとは思わなかった…。
でもあの事件があってから、夜中に物音がするとビクッとする自分がいるのは確かで。
だから、工藤家に戻るには良いきっかけなのかもしれない。
いや、でもなぁ…。
前と違って「同居」より「同棲」に近くなるだろうし。
そもそも高校生と同棲ってどうなんだ?
世間的にもそうだけど、自分的にも。
うーん…。


「あーーっ!!オネーサン発見っ!!」
「は?」
「よっしゃ!じゃあケー番教えて!」
「キミ誰だっけ?」
「ひでぇ!ほんとに忘れたのかよ!?」


考え事が解決しないまま翌日、いくらなんでも連日仕事を休むわけにはいかないため出勤。
思っていたほど上司・同僚からの追及はなく、平穏に過ごすことができた。
その日の帰り、通りの真ん中で声かけられたと思ったら、いつぞやの的になった少年がいた。
ええっと、確か名前は


「くろばか…」
「黒羽!快斗っ!!おかしなところで切るんじゃねーよっ!!」


相変わらず元気いいな、この子…。


「どうしたの黒羽快斗くん。また的になりに来たの?」
「…オネーサンとは2度と行かない」


工藤くんにはない強引さを持っている黒羽快斗くんに、気がついたらアイスを食べに行こうと引っ張られていた。
え?この時間から?って思ったけど、この行動力がある意味新鮮で思わず入店してしまった…。


「オネーサン怪我してんの?」
「え?」
「なんか歩き方変?」
「ああ…」


チョコアイス、ミントチョコアイス、チョコアイスのサンドを大口開けて食べる黒羽快斗くん。
…見てるこっちが気持ち悪くなりそうな甘党なんだろうな、この子。


「ちょっと足の裏擦りむいてるだけだよ」
「何したの?」
「…裸足で全力疾走?」
「…オネーサン変わってるよね、ほんとに」


それから他愛ないことをしばらく話した。
工藤くんが血統書つきの番犬なら、この子はチワワとかきゃんきゃん騒ぐ小型犬?
いや、図体は小型じゃないけど。
イメージがそんな感じ。


「そういやその後どうなったの?」
「え?その後って?」
「両片想いのヤツ!」
「ああ…。うーん、うまくいってる?」
「なんだよ、その疑問系!」
「…いやうまくいくための方法はわかってるけど、そこに素直に乗れない私がいる」
「…はぁ?意味わかんねーけどなんで素直に乗れねーの?」
「…世間体?」
「くっだらねー!何、オネーサンそんなん気にする女だったの?俺の見込み違いだったな!」


…高校生にがっかりされた私って一体。


「くだらない、かぁ…」
「オネーサンはそういうの気にしない人だと思ってたけど?」
「うん、まぁ普段は気にしない。けど、これは別」
「なんでー?」
「なんで、って言われても困るけど、別」
「なんだそりゃ。…まぁよくわかんねーけど、別なのはいいことだよな」
「…そう?」
「おー。他とは別ってことはそれだけその事に対して真剣に思ってるってことだろ?ただそれがオカシナ方向にいってるだけで」
「…キミたまに良いこと言ってる気がするけど、素直に受け入れられないのはなんでだと思う?」
「俺に聞くなよ!」


他の物事よりは真剣に考えてるさ。
だからこそ、世間体も考える。
…それがオカシナこと?
それが、くだらないこと、なのかなぁ。
目の前でとろけるような笑顔でチョコアイスを頬張る黒羽快斗くんを見ながら、ここにはいない彼を思った。

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bkm

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