Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「名前さん…」
「なに?」
「確かに鍵渡したのは俺ですよ」
「うん」
「俺ですけど、」
「けど?」
「うちはオメーの銭湯じゃねぇんだよ」
「当たり前じゃない!テレビ付きジャグジーのある銭湯なんてないでしょ!」


工藤くんと合鍵を交換してから、残業がある日は工藤くんがうちに、残業がない日は私が工藤くんの家に行くのが習慣化しつつあった。
ん、だけど。
ここ数日残業する必要がなかった私はお風呂道具を持って工藤くん家にやってきてたら、銭湯じゃないと言われた。
銭湯ならわざわざ夕飯の食材2人分も買い込んでこねーっつーの!


「だいたいなんなんだよ、あの歌」
「え?」
「いっつも気になってたけど、なんで人んちの風呂場でアンパンマンマーチ歌ってんだよ…」
「え?何がダメ?」
「いや、もっと選曲ってのがあんだろ」
「アンパンマンをバカにするな。あの歌は深いんだぞ」
「知らねーよ」
「仕方ない、聞かせてあげるからそこに座りな」
「いや、別にいいし」
「なんのために生まれて〜何をして生きるのか〜♪」
「聞いてねぇし…」


私は昔から機嫌がいいとお風呂場で大熱唱してしまう癖がある。
都会のマンションに暮らすようになってさすがに封印されていたけど、工藤家の開放的なお風呂の前ではついつい歌にも熱が入るってものだ。


「ちょっと待て」
「なに?」
「そこ歌詞が違うだろ」
「え?どこ?」
「そうだ、ってところ」
「え?…そうだ、怒らないでみんなのために〜♪」
「バーロォ、怒ってどーすんだよ!恐れないで、だろ?」
「えー?キミちょっと歌ってみて」
「え、」
「ほら、歌って」
「…」
「…」
「…」
「…勿体ぶらずに早くしろ」
「…コホン。…そうだ、おそれないでみんなのために〜」
「キミ、」
「…」
「もう2度と歌わなくていい。みんなのために」
「…ルセェ」


家庭科以外はなんでもソツなくこなす子だと思ってたけど、まさかこんな落とし穴があるなんて思いもしなかった…。
いや、いくらなんでもこれは酷い。


「キミ音楽の時間実は仮死状態だったんじゃないの?」
「んなわけねーだろっ!」
「いやでもいくらなんでもそれはあり得ない。オブラートに包みようがないくらい酷い」
「…オメーがいつオブラートに包んだよ」
「失敬だな。最近はだいぶオブラートに包んでる」
「…どこが?」
「何をしたらあのわずかな時間にあれだけ音を外すことができるの?むしろ合っている音程を探すことが難しいレベルだよ」
「知らねーよ」
「推理の才能のほんの少しでも音楽の才能に回れば、もう少しどうにかなったのに」
「バイオリン」
「え?」
「バイオリンなら、ひける」


あんなに見事な歌声の人間がひくバイオリン?


「ごめん、私がいないところでひいて」
「今持ってきて聴かせてやるからそこに座れ」
「いやほんとにいいし」
「ちょっと待ってろ」
「聞いてねぇし…」


私これからあのキィーとか言う身悶えそうな音を聴かされるんだろうか…。
なんの拷問だ。
音楽の話フルんじゃなかった。
2度とフラないようにしよう。


「何かリクエストあります?」
「キミが一番まともにひける曲」
「どーいう意味だよ」
「さぁどうぞ」
「…」


バイオリンを構える工藤くんは、なんというかほんとに王子さながらに見える。
さすが工藤先生のご子息。
見た目だけはものすごいいい音だしそうだ。
…いや、油断大敵だ。
構えて聴こう。


〜♪〜♪


…驚いた。
本人がひけると言うだけある…。
まさかこんなにまともにひけるなんてあの歌声からは想像もできなかったっ!
しかもこの選曲、ね。


「〜♪〜♪」

〜♪〜♪


「…まさか名前さんが歌うとは思わなかった」
「合唱部」
「え?」
「学生の頃は美術部と掛け持ちして入ってた」
「えっ!?…似合わねぇ…」
「バイオリンで頭殴ったら、コントみたいに割れるかな?」
「よせっ!いくらしたと思ってんだっ!」


自分の金じゃないくせに。


「でもキミひき癖あるね」
「え?」
「最初気のせいかと思ったけど、ちょっと独特」
「それ、」
「うん?」
「前に蘭にも言われたんだけど、俺のひき癖って何?」


出た、蘭ちゃん。
私が蘭ちゃんの名前をよく出すんじゃなく、自分で名前出してることに気づいてないわけ?
一気にテンション下がったわ…。


「名前さん?」
「自分で録音して聞いてみたらわかるんじゃない?」
「え?」
「後片付けも終わったし私明日早いから帰る」
「えっ?あ、送ります」
「あ、お風呂にお風呂セット忘れてる。ごめん、取ってきて」
「え?ああ、はい」


誰が一緒に帰るかバーロォ。
この下がったテンションどうしてくれる。
またオッチャンの屋台に行こうかな。
でもここからあの屋台に行く途中、
この時間てビミョーに人気なくて暗いんだよな…。
まぁ私襲うもの好きなんて


「っ!!?」


いきなり後ろから大きなゴツゴツした手で口を抑えつけられ、路地に一気に引きずりこまれた。

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bkm

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