Detective Conan


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stock-永遠の恋-


39


「キミ夏休みなのに他に行くところないの?」
「ねーよ」
「寂しい高校生活だね」


不法侵入者扱いをしてしまった翌日も、工藤くんはまるで番犬のようにうちの前にいた。
玄関扉の横に寄りかかり、たぶん推理小説だろう単行本を静かに読んでいた。
…なんて従順なんだ。


「人が待っててやってんのに、その言い方ねーだろっ」
「キミ、」
「あっ!?」
「あんまり可愛いことすると襲っちゃうよ?」
「………はっ!?」


家の前で毎日毎日仕事が終わるの待ってるなんて。
むしゃくしゃして酔ってた昨日こそストーカー扱いしたけど。
私に好きの感情がなきゃほんとただのストーカーだけど、今は根底にそれがあるからな…。
この間見たHACHIを思い出すわ…。
こっそり忠犬・工藤って呼んでやろう。


「キミご飯は?」
「え!?あ、いや、ま、まだだけど」
「大したの作れないけどうちで食べてく?」
「…食べてく」
「そ?じゃあどうぞ」


今日は酔ってないから段差で失敗することもなく、部屋に入った。
あー、やっぱり外から帰ってくると嫌になるくらい暑い!


プシュ


「…おい」
「うん?」
「いつもやってんのか?それ」
「え?ああ…」


部屋に入ってとりあえず冷蔵庫から取り出した缶チューハイをあけたら、工藤くんに缶を指差されながら言われた。
あまりにいつもの流れで忘れてたけど、帰宅後真っ先にチューハイ開けるって女としてヤバイ?


「…たまに?」
「そういう行動、癖になるから止めろよな」
「…そうね」


工藤くんはこういう行動はNGらしい。
いや、すごくらしい感じはするけど。
…ちょっと気をつけよう。


「いただきます」
「はい、どうぞ。…いただきます」


あ、今日ちょっと味薄すぎ?
もう少し味付けを


ピリリリリ


「キミじゃない?」
「…ですね。えーっ、と…げっ」
「出ないの?」
「あ、いや、出、ます、けど」
「…誰から?」


携帯持って固まってる工藤くんの手から、携帯を抜き取った。
蘭ちゃんとか言ったら、この携帯便器に沈めてやる。


着信 目暮警部


「…出てやりなよ。まだ鳴ってるし」
「…わーってるよ。…はい、工藤です。…はい、はい。…はい、わかりました。じゃあ後程」
「事件?」
「…それ以外に何があんだよ、目暮警部の呼び出しに」
「大穴でご飯のお誘いとか」
「バーロォ、んなわけねーだろ」


めずらし。
事件と聞けばお風呂入っていようが飛び出して行く子なのに。


「…食べかけですけど」
「あー、うん。片づけるから気にしないで行ってきな」
「…」
「…」
「…」
「…警部待ってるよ?」
「わーってるよ…」


ま、この子の気持ち、わからなくもない。
それを何一つ言葉にも行動にも出せないのが彼の彼らしさ。


「ほらっ」
「え?」
「持ってきな、名探偵」
「…なんですか、これ?」
「鍵」
「いや、それは見ればわかるけどどこのってことを」
「うちの鍵」
「へー、名前さんちの」
「うん」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…はっ!!?」


…またずいぶん時間かかったな、理解するまでに。


「え!?な、えっ!?」
「キミ、」
「はい!?」
「黙ってたら毎日玄関前で私の帰り待ってるでしょ」
「えっ!?いや、さすがに毎日は…」
「訂正する。ほぼ毎日玄関前で私の帰り待ってるでしょ」
「…」
「近所の目もあるから困るんだよね」
「…スミマセン」
「だから今度からそれ使いな」
「…」
「ただし、」
「はい?」
「来る前に必ず連絡すること」
「…はいっ」


赤い顔して合鍵握りしめる工藤くんに、ちょっとくらっとした。
ああ、やっぱり私って肉食なのかもしれない。


「…名前さん」
「うん?」
「名前さんもこれ、持っててください」
「…どこの鍵?」
「俺んち」
「…えっ?」
「…貰ったからには、渡しときます」
「なに、ジャグジー使い放題!?」
「…オメーの中の俺んちのイメージってそこかよ」
「ヤバイ!休み前日は無料ジャグジー入りに行かないとっ!!」
「…まぁなんでもいーけど」
「ああっ!でも今週の休みはあと5日も先っ!!」
「…俺そろそろ行くけど」
「有給入れれないかなっ!?」
「…じゃあ行くわ」
「…あ、すみません苗字ですけど今週の休みなんですが」


まさかの無料ジャグジー入り放題にテンション振り切れた私は、赤い顔した工藤くんがいつ出ていったのか全く気づかなかった。

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bkm

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