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「キミの言ってた幼馴染の元カノって、毛利さんところのお嬢さんだったんだ」
難事件のあるところ、工藤新一あり！
そして、工藤新一あるところに苗字名前あり！
な、わけでもないんだけどそんなような仕事をしている。
しっかし、何が悲しくて高校生の生意気なお坊ちゃんの後ついて回らなきゃいけないんだろ。
「名前さん知ってるんですか？蘭のこと」
「ああ、うん。知ってるって言うか、キミが雲隠れしてる間、私毛利さん担当になってたようなものだったから」
「…そう、でした、っけ？」
「そうだよ。あのオジサン若い子好きじゃん」
「ああ…」
あんな何も考えていなさそうなおっさんから、よくもまぁあんな賢そうなお嬢ちゃんが生まれたもんだと常々思ってたけど。
「まさかあの子がキミの元カノだとはねぇ」
「…別に元カノじゃないです」
「ああ、そうだった。つきあってないんだもんね？やってないし」
「…下品な女性は嫌われますよ」
「下品じゃないとこの業界生きていけないの」
特に毛利のおっさんみたいな人相手にする時はね。
「それで？私を呼び止めたからには何か話しがあるんでしょ、名探偵」
「…別に話しっていうか」
この子黙って立ってるとかなりのイケメンだと思うんだけど。
なんで童貞？
あ、童貞童貞言うなって言われたんだっけ。
「名前さんは」
「うん？」
「俺が天狗になってた時、蘭以外で唯一真っ向から渇入れてくれた人ですから」
「…驚いた」
「え？」
「キミ天狗になってたって自覚あったんだ」
「…」
あ、また少しコメカミがひくついてる。
「ああいう時期がって、…痛い思いもして。少しは成長しましたしたよ」
「片思いの失恋で成長？若いねぇ〜」
「…別にそれだけじゃねぇし」
「え？」
「…蘭のことはまぁ、命縮めるほどのバカなことに無鉄砲に首をツッコんだ自分に対するツケってところです」
「…はあ」
命縮めるほどのバカなこと、ねぇ。
「いいんじゃない？」
「え？」
「結果、命拾いしたからここにいるんでしょ？」
「…ええ、まぁ」
「今のキミには毛利さんところのお嬢さんが全てかもしれないけど、残念なことにこの世の全人口の半分は女なのだよ。キミが命拾いした甲斐が出てくるような女、まだまだごろごろしてると思うけど？」
もっとも、顔良し、器量良し、なあの子と勝負できそうな子がいるかってなったら話は別だけど。
「名前さんて、」
「うん？」
「辛口だけど、結構そういうとこ好きですよ」
「…私口説きたいなら童貞捨ててからにしてね、少年」
「そっち系の口の悪さは直した方がいいと思いますけど！」
私から言わせてもらえばこの話題で顔を赤らめるの直した方がいいと思いますけどね。
「…なんで俺じゃねぇんだろって、」
「うん？」
「蘭が本堂と並んでるとこ見るとなんであんなヤツって正直まだイライラするけど、」
「…」
「この間名前さんにはっきりフラれたんだって言われてなんか目が覚めたっていうか」
「…え？」
「学校のみんなもそのことには触れないし、明らかに俺に気を使ってるのがわかるし」
「…」
「でも名前さんにはっきり言われて、ああ、俺フラれたんだって初めて認識できたんです」
これだ。
この自嘲めいた笑顔。
物悲しく、儚げで、手を差し伸べたくなるような笑顔。
高校生のお坊っちゃんが、どう生きたらこんな顔できるようになるんだか。
「ま、人生挫折も必要ってこと知れて良かったんじゃない？」
「名前さんて、」
「なに？」
「歳のわりに言うことが老熟ですよね」
「黙れ童貞」
「だから言うんじゃねーって言ってんだろ！！」
工藤新一、間もなく18歳。
彼の新しい道は、ようやく始まる。
のかも、しれない。
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bkm