Detective Conan


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stock-永遠の恋-


35


「名前さん、大丈夫ですか?」
「…ここは?」
「博物館のロビーです」


博物館のロビー?
…ああ。


「キッドは?」
「…逃げました」
「キミは追わないの?」
「それは警察の管轄ですから。名前さん置いていけねぇし」


な、んか…?
なんか工藤くんが、そわそわしてる…?


「なに、何かあった?」
「え!?あ、いや、別に…」
「…キミその赤い顔で何もないって言っても説得力ないって知ってる?」
「…」


工藤くんが人差し指で頬をぽりぽりと掻く。
…何、ほんとになんかあった?


「キミ、」
「はい?」
「何があったか言わないと、今ここでプロレス技しかけるよ」
「えっ?…いや、別に、何かあった、って、言うか…」
「うん?」
「…キッドが名前さんに化けてたんですけど」
「ああ、うん。それで?」
「…いや、俺もおかしいってすぐ気がついたんですよ?」
「うん?」
「でも、その、名前さんの顔と声だったし、」
「なに?」
「…」
「…」
「…」
「…さっさと言いな」
「だ、だから」
「だから?」
「あ、愛してるって言われて抱きつかれたんですっ」


それはもう、見事に顔を赤く染めて工藤くんは横を向いた。
…あの人、人を眠らせてそんなバカなことしたんだ。
いや、私の顔を使って本音を言ったのか?
ますますわからない。


「キミ男にそれされて嬉しかったわけ?」
「だ、だからっ!中身は違っても顔と声は名前さんだったって言ってんだろっ!!」
「私そんなこと滅多に言わないからおかしな興奮しないで」
「…るせぇ」


例え顔と声が私だったとしよう。
でもあっちは中身男だぞ?
何をそんなに照れることがある。


「で、キミが狼狽えてる間に犯行に及び逃げられたわけだ?」
「…」
「そりゃ警察の管轄って言いたくもなるね」
「…」
「むしろ警察がキミに来るなって言うでしょ」
「あーそうだよっ!名前さんになったキッドに抱きつかれて驚いてる俺に催涙スプレー吹き掛けて逃げてったんだっ!それ見てた中森警部にここに残れって言われたんだよっ!」
「…それエラソウに言う内容じゃないよ」
「うるせぇっ!」


あの怪盗、両刀云々言う前に工藤くんのヘタレさ加減を知ってて楽しんでるな…。
なるほど。
だから私になるとおもしろそう、なわけね。


「キミ、」
「なんです?」
「その反応がキッドの思うつぼなんだよ」
「…」
「だいたい偽者って気づいたんでしょ?なんだってそんなことに」
「仕方ねーだろっ!」
「開き直るな、へぼ探偵。目の前で催涙スプレーかけられるほどキミどん臭くないでしょ」
「…し、」
「うん?」
「…名前さんの顔と声で、し、」
「し?」
「し、新一くん、愛してるって言うから俺マジで驚いて…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…はぁ」
「ため息吐くんじゃねーよっ!」
「キミ暗号文の推理が出来てもその性格直さない限り彼を捕まえられないと思う」
「…わーってるよっ!!」


この子のコレはどうにかしないと、あの怪盗の思うつぼだ。
こんなに大成功だったんだ。
しばらくは彼の中でこの作戦が頭にあるに違いない。
いつまた私になるかわからない。
赤の他人になりすまされるなんて、迷惑以外の何物でもない。
なんとかしないと…。


「…はあ、まぁ、そういうわけで…いえ、写真は…はい、はい。…はい、後はお願いします。失礼します…。…はぁ」
「電話終わりました?」
「…」
「内容から察するにかなり絞られたとか?」
「…誰のせいかわかって言ってるの?」
「俺のせいじゃねぇだろ!」
「へタレなキミ以外他に誰のせいなわけ?」
「…」


記事にできるほど、現場を見ていたわけでもなく。
キッドと会話したと言っても証拠写真が残っているわけでもなく。
犯行時刻に何をしていたかと問われたら、寝てましたとしか答えられず。
そりゃ私があのふざけた上司でも怒るってもんだ。
ああ…、減給にならなきゃいい…。


「…もう帰るわ」
「あ、送ってきます」
「キミ、」
「はい?」
「送ってもらっても家に寄せないから」
「…別にそういうつもりじゃねーし」
「そう?ほんとに寄らないでいいんだね?じゃあそのまま帰って」
「え!?いや、そういうつもり」
「さぁ帰ろう」
「おいっ!って、待てって!!」


今だ蘭ちゃんのことで頭が痛いのに。
まさかここにきてかの有名な大怪盗で頭を抱えることになろうとは。
この子といるとネタがつきないのは気のせいか?
しなくていい苦労が降って来るっていうか…。
ああ、しなくていい苦労って言ったら毛利さん追ってた時もそうだったな。
あの人も大概巻き込まれなくていいような事件に自ら飛び込んでいくっていうか、引き寄せるっていうか…。
そう言えば毛利さん2人目のお子さんがそろそろ生まれるって聞いたけど…。
知らない人じゃないし、というかむしろ去年は何かとお世話になった人だし…。
お祝い持っていこうか、な。
平日の昼間事務所に行けばいっか。
とりあえず近々毛利探偵事務所に行く時間を作ろう。

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bkm

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