Detective Conan


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stock-永遠の恋-


34


「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…声でますか?」
「あ、はい」
「良かった。驚かせすぎてしまってしゃべれなくなったのかと思いました」


いやあなただって2時の方角からやってくるとか来ないとか、さっき密閉空間にいたムサイおっさん警部が言ってたよ?
え?ここあの部屋から見て2時の方角?


「ここ女子トイレですけど」
「ええ。知ってます」
「何してるんですか?」
「隠れてるんです」
「それはまぁ…、見ればわかるけど」


すごい、怪盗キッドをこんなに間近で見たの始めてだ。
いや鏡越しだけど。
…しくった。
さっき工藤くんに預けたかばんにデジカメがっ!
持ってきてたら臨時ボーナスが出たかもしれないのに!


「なんだって女子トイレに…」
「ここにいればゆっくり話ができるんじゃないかと思ったので」
「誰と?」
「苗字名前嬢、あなたと」
「…なんで私の名前を」
「おや、自覚がない、と?あなたはちょっとした有名人ですよ。かの有名な高校生探偵の純愛相手、ということで」
「…最近の怪盗はスポーツ新聞の3面記事を読むんですね」
「スポーツ新聞に限らず、工藤新一くんのあらゆる情報は目を通してますから。ですからあなたとの記事を見たときは本当に驚きました」
「…」
「私という者がいながら、他所のお嬢さんとスクープされるとは許しがたいですからね」
「…えっ!?」
「…」


ニヤリ、と不敵に笑う鏡越しの怪盗紳士。
いやいやいや、


「あなたゲイなんですか?」
「歯に絹着せない物の言い方をするレディですね。ご心配には及びませんよ。私は両刀ですから、工藤くんはもちろんのこと、名前嬢あなたも十分許容範囲です」
「…」
「…」
「…」
「…ぷっ」
「えっ?」
「ああ、すみません。あまりにも驚いた顔をしていらっしゃるのでつい。ほんの冗談です」


どこからどこまでが?
一体この人のどこが怪盗「紳士」?
今私のっていうより、いろんな意味で工藤くんの身を案じたわ…。
相変わらずくすくす笑っている怪盗紳士を振り返る。
ニヤリ、と笑う顔はあまりに無機質。


「噂通り、」
「はい?」
「何を考えているのかよくわからない人ですね、怪盗紳士さん」
「お褒めいただき光栄ですよ、レディ」


褒めてねぇし。
いつもなら、そう言っているかもしれない。
でもこの人には、なんというか…。
工藤くんを取材する上で殺人を犯した人をたくさん見てきた。
でもこの人が持ち合わせる「怖さ」は彼らのそれとは違う。
顔は笑っているけど、決して笑っていない。
それがひどく、恐ろしさを植えつける。
…伊達に世間を騒がせている怪盗じゃない、ってことだ。


「と、そろそろ時間です。あなたはどうされますか?名前嬢」
「…取材しますが」
「随分仕事熱心なんですね」
「お金貰ってますから」
「…苗字名前、K出版入社3年目、某雑誌の情報コーナー担当なものの、高校生探偵・工藤新一の助手に指名されて以降事件現場に多々出没する。ただし、助手らしき行動はなく、記事にするためにいる模様。…ちなみに現在はとある絵本作家コンテストに向けて作品作りに熱中している…違いますか?」
「な、なんでそんなことまでっ」
「私も仕事熱心なんです」
「…工藤くんの近くにいるから調べ上げたんですか?」
「そうですね。それともう1つ」
「え、」


プシュー、という音とともに視界が歪んでくるのがわかった。


「あなたになるとおもしろそうなので」
「なっ」
「苗字名前嬢、あなたの顔、お借りしますよ?」


ああ、この人はやっぱり世間で騒がれているだけのことはある。
あっという間に意識が途絶え、次に気がついた時にはどこかのソファの上で寝かされていた。

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bkm

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