Detective Conan


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stock-永遠の恋-


33


「で、その時こう言ったんですよ」
「全ての不可能を消去して残ったものが如何に奇妙なものだとしてもそれが真実である」
「名前さんも読んだんですか?」
「キミ、」
「はい?」
「次またホームズの話したら、2度とキミと話さない」
「…」


工藤くんがうちに来た日。
まぁ…、仲直り?
は、したんだろう。
戻ってくればいいじゃないかと言った工藤くん。
それこそふざけるなって話だ。
敷金・礼金いくらかかったと思ってんだ。
たった1週間で引っ越してたまるか。
…結局のところ、蘭ちゃんとこの子がどうなったか正確なところはわからないし。
工藤くんは「家に来るな」と言っただけで、「フッてきた」とは言わなかった。
そもそもこの子が私に言ってきた言葉一言一句違わず蘭ちゃんに言ったとは到底思えない。
蘭ちゃんにしても、18年という歳月を、まぁ一時ヨソに目移りしたようだけど。
その歳月を費やして思ってきた男を、それこそたった一度の拒絶であっさり引き下がるとも思えない。
そこにうっかり工藤家に戻って、蘭ちゃんと出くわそうものなら昼ドラよろしくな修羅場にだってなりかねない。
何がタチ悪いって、当の本人が修羅場になるだろうって自覚が全くないのが1番タチが悪い。


「ほんとポンコツ」
「何が?」
「キミ殺人事件担当じゃなかったの?」
「そうだけど?」
「じゃあなんで今日ここにいるの」


今日も事件現場に高校生探偵・工藤新一が行くからお前も行けって言われて来たわけだけど。
事件現場というか、犯行現場。
いや、正確には「犯行予定現場」か。


「アイツだけは別。あのヤローは俺が絶対捕まえる。だから来たんです」
「そういうキミの個人的な感情で仕事振り回される私の身になってくれない?」
「いいじゃねーかよ別に。普段滅多に見ることのできないビッグジュエルが見れるんだぜ?」
「私興味ないし」
「何に興味あるんだよ?」
「温泉」


どうせジャグジーがないなら安く済まそうと思ったのが間違いだった。
追い炊き機能がないマンションなんてマンションじゃないじゃないか!
入居後気づくなんて私としたことがっ!
おかげで毎日シャワーのみで疲れが取れやしない。


「随分枯れた発言だな、おい」
「キミ喧嘩売ってるならもう2度と口聞かない」
「…」


早く帰って休みたいのに、どこぞのコソドロさんは律儀に時間指定で予告してきたものだから帰るに帰れない。
何が怪盗紳士だ。
紳士なら紳士らしく淑女の予定に合わせろってんだ。


「あ、どこ行くんだよ。もうすぐ時間だぜ?」
「トイレ」


あんなムサイおっさんどもがいる密閉された室内に何時間もいれるか。
それこそなけなしの若いエキスが吸い取られて枯れるってんだ。


「…はぁ」


今日何時に解散になるんだろ。
ほんと帰って寝たい。


「あ、そこ入ってますよ?」
「そうなんですか?」


まぁ別に用足しに来たってより気分転換しに来ただけだし。
その気分転換場所がトイレってどうよって話しだけど、あちこちムサイおっさんがいて落ち着ける場所が女子トイレしかない。
…ほんと私情で借り出される私の気持ちになれ。


「あ、すみません、そこいいですか?」
「はい、どうぞ?」


随分と綺麗なお姉さんに人が入ってると言われた個室はまだ奮闘中らしく。
お姉さんはお姉さんでお化粧直しをしていたため、1つしかない鏡の前を退いてもらった。
まさか手を洗わずに帰るわけには行かないし。


「…ふぅ」


最近ため息が増えた。
自分でも自覚してる。
もしかしたら悩まなくていいところで悩んでいるのかもしれないけど。
でもこればっかりはどうにもなんない。


「…え、」


もう1度ため息を吐きながら顔を上げ見た鏡越しに、先ほどまでの綺麗なお姉さんはいなく、女子トイレには似つかわしくない白く正装した男が立っていた。

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bkm

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