Detective Conan


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stock-永遠の恋-


32


「…随分と殺風景な部屋だな」
「まだ家具買ってないからね」


とりあえず工藤くんを部屋に入れた。
は、良いけど、うち何もないんだった…。


「工藤くん紅茶でいい?」
「あ、俺コーヒー」
「…うちコーヒーないし」
「じゃあ聞くなよ」
「…」


どこか、というか、不機嫌を全面に押し出している工藤くんは、あのヘタレた感じがない。
なぜかこの子と出会った最初の頃を思い出した。


「どうぞ」
「どーも」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…いつまで黙ってる気だよ」
「話があるのはキミでしょ?私は話すことないし」
「…あのなー、人がわざわざ来てんのにそりゃねぇんじゃねーの?」
「キミを呼んだ覚えないけど?」
「…減らず口ばっか叩いてんじゃねーよ」
「キミに言われたくない」


ダージリンを口に含みながら、なんとも実りのない話をする。
…さっさと本題切り出せばいいのに、このヘタレ。


「…オメーさぁ」
「なに?」
「週末出てくって言わなかったか?」
「…だから週末に出て行ったでしょ?」
「フツー週末って言ったら土日だろーがっ!なんで金曜に出て行くんだよ!!」
「…金曜は週末でしょ?」
「平日だっ!」
「キミわざわざそんなこと言いに来たわけ?」
「…んなわけねーだろ」


この子は全くもって話の切り出し方がヘタクソだ。
事件現場ではあんなに饒舌なのに。


「それで?」
「あ?」
「そんなわけないなら何しに来たの?高木刑事にうちの場所聞いてまで」
「…」


何しに、なんて理由は1つ。
それは私が待ち望むことであり、恐れていることでもある。


「…俺は納得してない」
「何を?」
「なんで勝手に出てくこと決めてんだよ!」
「前も言った通り、私の人生だから」
「だいたい俺は蘭を好きなんかじゃ」
「それはキミの錯覚」
「ふざけんじゃねーよ!錯覚かどうかなんて俺自身が1番わかってる!」
「わかってないからキミここにいるんでしょ」
「なんでオメーはそうやって俺の心まで勝手に1人で完結させんだよっ!!」
「…え?」
「だってそうだろ!?オメー勝手に俺の心推理して勝手に完結させてんじゃねーかよ!」
「べ、つに推理してるわけじゃ」
「してんじゃねーかよ!オメーに推理は向かねーんだからちゃんと俺に聞けよヘボ探偵!!」


この子の言い分はわかる。
わかるんだけど、


「キミの言い方、今すごく不愉快になった」
「俺はオメーにこの間言われた時からずっと不愉快なんだよ!」
「…キミ喧嘩売りにきたなら帰って」
「喧嘩じゃねぇだろ!話し合いに来たんだ!」
「…話し合う相手間違ってるでしょ。蘭ちゃんのところに行きなよ」
「それはもう話し合ってきた」
「…え」


どくん。
心臓が跳ねるって、このことだろう。
蘭ちゃんの元に戻れって、自分で言っておきながらいざその話を聞くと、こんなにも心臓が、体全身が怯えるなんて。


「蘭にはもううちに来んなって言った」
「…はっ!?」
「生まれた時から一緒にいる幼馴染みだけど俺はオメーの家族じゃねぇんだから、いちいち来なくていいっつった」
「いや、キミ何言ってんの!だいたいキミが蘭ちゃん呼んでたんでしょ!?」
「はぁ?俺今まで1度も自分から蘭を家に呼んだことなんかねぇよ」
「いや、だって風邪の時は?キミがお腹空いて呼んだんでしょ」
「風邪のときぃ?…ああ、あれは朝学校休むってメールしたら蘭が放課後自主的にメシ作りに来ただけだけど?」


え、じゃああの子ほんとにただの押し掛け女房だったってこと?
いや、でもそれは根本に工藤くんが好きで、心配って気持ちがあるからであって。
それを甘んじて受け入れてたのは他の誰でもない工藤くんで。
なのに今更その言い方はどうなわけ?
蘭ちゃんからしてみたら、寝耳に水な話なわけで。
それを突然そんな言い方、


「今までのことは感謝してるけど、もう俺も十分1人で生きていけるし?」
「いや、ちょっと待って!」
「蘭もそーだね、って言ったぜ?」
「言ったぜ?じゃないよ!キミそれほんとに蘭ちゃんに言ったの?」
「だから言ったって言ってんだろ」
「ば、っかじゃないの…。キミ今すぐ蘭ちゃんに謝ってきな!」
「必要ねーし」
「必要なくないでしょ!?もう何やってんの!ほんとにポンコツだな、キミは!」
「俺、」
「何!?」
「別に申し訳ないとも思わなかったけど?悪いことしてるつもりねぇし」
「…今ならまだ蘭ちゃんも」
「しつけーなぁ、オメーも」
「キミ絶対に後悔する」
「しねーよ、別に」
「…あんなパーフェクトな子、他にいないよ?」
「パーフェクトなら俺がいなくても平気だろ」
「…」
「…」
「…なんで」
「あ?」
「だからってなんでここに来るの」
「んなの決まってんだろ」
「何?」
「逆に聞くけど、オメーは俺がたったの1回の拒絶で諦めるとでも思ったわけ?」
「…キミ」
「なんだよ?」
「そういうことは口にしない方がいい。ほんとにただのストーカーにしか見えないから」
「…あいっかわらず口の悪ぃ女だな」


そう言って、紅茶を啜る工藤くんに苦笑いしかできなかった。
そりゃ本音はそうなってほしいとは思ってたけど。
それは夢物語だと思っていた。
し、この子のためにはならないことだと思っていた。
けど。
それはこの子が言うように、勝手にこの子の心を推理して完結させただけだった?


「私ガキのお守りはお断りだから」
「ガキじゃねーって言ってんだろ!」
「早く大人になれ、少年」
「だからガキじゃねーって言ってるだろーがっ!!」


こんな言い合いでも、ここに移り住んで初めて、声を出して笑ってる自分に気がついた。

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bkm

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