Detective Conan


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stock-永遠の恋-


30


「私、キミの家出ようと思う」
「…は?何言ってんだ、オメー」


夢の国の夢の時間は「夢」だから眩しくて当たり前。
そこに恋焦がれた現実は、ないのだから。


「キミの家を出ようと思う」
「だから何言ってんだよ」
「最初から私がお金貯まるまでの間ってことだったでしょ?貯まったから出ようと思う」
「…はぁ?」
「この間の休みに契約済ませてあるから、週末に出て行く」
「…さっきから何言ってんだ」
「居候してた間にかかったお金は、またおおよそになるけど渡すからそれで」
「おいっ!!」
「…なに?」
「1人で話し進めてんじゃねーよ!」
「でも私のことだし」
「ふっざけんじゃねー!!」
「…」
「なんなんだよっ!何勝手に話し進めてんだよっ!!冗談じゃねー!俺は」
「キミ勘違いしてない?」
「ああ!?」
「キミと私はただの大家と居候でしょ?勝手に決めるもなにも、私の人生私が決めて何が悪い」
「…テッメー…」
「まぁ、そういうことだから、週末までは我慢して」


それ以上は私が限界だ。
この子といると、窒息しそうになる。


「キミ蘭ちゃんのところに戻りな」
「…はぁ?」
「キミと蘭ちゃんはただの幼馴染み」
「…そーだけど?」
「本当にただの幼馴染みが、風邪引いた人間のところにわざわざご飯作りに来ると思うの?」
「…え?」
「蘭ちゃん、ホンドーくんと別れたんでしょ?」
「え?なん、で、知って」
「どうしてホンドーくんと別れたのか、なんでまたキミの家に出入りするようになったのか、考えたこと、ない?」
「え、いや、だっ、てそれは」
「キミ、事件現場以外では本当にポンコツだね」
「…」


だからこそ、この子は今私の目の前にいるんだけど。


「キミがずっと、好きだった子でしょ?」
「…」
「もう戻りな、蘭ちゃんのところに」
「い、や…、俺は」
「今度はきっと、蘭ちゃんもキミを選ぶから」
「…俺はっ!」
「キミは、私を好きだって勘違いしてるんだよ」
「…は?」
「勘違い。蘭ちゃんに失恋した痛みを、恋に恋することで逸らした」
「…何?」
「キミは私に恋した気になっただけ。キミが恋してるのは、今も昔も蘭ちゃんだけ」
「なんだよそれ」
「だからこそ、蘭ちゃんがキミの家に出入りすることを、キミのためにご飯を作ることを、甘んじて受けてる」
「…」
「キミが恋に恋する時期は終わったの。私もちょうど家を出るし、蘭ちゃんのところに戻りな」
「…」


工藤くんが、何度か口を開いては閉じてを繰り返す。
でもその口からは何も言葉は紡がれない。
…これでいい。
キミたちが見失ってしまった道、掛け違えてしまったボタンが本来あるべき形に戻るだけなんだから。


「…明日も仕事あるから、そろそろ家に」
「俺、」
「うん?」
「1人で帰るから名前さん先に帰って」
「…そう?じゃあ気をつけて」


当然と言えば当然。
そういう行動するだけの物の言い方したんだ。
…この恋は甘い。
でも、この恋は痛い痛い。
あの真っ直ぐな瞳は私には苦くて、心がズタズタだ。
わかってる。
これは逃げだ。
今までも十分、傷ついた。
これ以上、傷つきたくない私が、工藤くんを傷つけて逃げただけだ。
でも。
見た目も中身も年齢もキミに相応しく、誰からも好かれるようなあの子に、私が勝てるわけ、ないじゃないか。


「ママー、あのお姉ちゃん泣いてるよ?」
「しっ!見ちゃダメよ!」


こんな人のいるところで泣くなんてどうかしてる。
…工藤くん。
きっとキミのことはこれからずっと、私の中で褪せることがないと思う。
生意気な名探偵。
頬を伝うこの涙が希望の涙と言うならば、私の望みは1つ。
キミが、キミらしくあり続けること。
そのための涙なら、いくらでも流してあげる。
だからキミは変わらないで。
あの子の隣で、ずっとキミのままでいて。
生意気で自信家で、なのにいざと言う時に押しが弱い。
そんなキミが、大好きだったよ。

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