Detective Conan


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stock-永遠の恋-


28


「空飛ぶコーヒーカップゥ?」
「キミ知らないの?」


取材も無事に終わり、引き続きトロピカルランドにいる私と工藤くん。
工藤くんはなんでも1年前にここに来たそうで。
…蘭ちゃんとだろうけど。
どうせならその時乗れなかったアトラクションを制覇しよう、ということになり、端から1つずつ片付けていた。


「コーヒーカップってあれでしょ?ぐるぐる回すヤツ」
「そう。あれは地上に固定されてるでしょ?でもここのは園内に敷かれたレールの上をゆっくり回ってくの。地上のヤツ同様360度回すこともできて、まぁ…景色をみるのにはいいよね」
「へー。そんなのがあるんですね」
「行く?」
「もちろん」


工藤くんは顔の赤みもとれてすっかりただの生意気な高校生に戻ってしまった。
それが少し残念ではある。


「…ほんとにコーヒーカップなんだな」
「だから言ったでしょ?空飛ぶコーヒーカップ、って」


コーヒーカップの上には日避け用なのか、申し訳なさ程度のパラソルがついている。
この時期には欠かせない。


「おぉ、動いた」
「そりゃ動くでしょ。むしろ動かない方が問題だよ」


ほんとに初めてらしい工藤くんは小さなことにも感動してる。
…これだいぶ前からあるアトラクションなのに、ほんとに乗ったことないのか?


「へー!ほんとに眺めいいですね!」


ゆっくりゆっくり動くコーヒーカップを程よくぐるぐる回しながら感動してる工藤くん。
少し昔の自分とダブる気がした。


「なんです?」
「え?」
「笑ってるから」
「ああ…。私も初めて乗った時はそうだったなぁ、って」
「いつ乗ったんですか?」
「高校生の時。当時の彼氏と今日の記念に、って」
「…へぇ」
「2人でテンション上がってたから思いっきりコーヒーカップぐるぐる回してたら、そこのスピーカーから危ないから止めてくれって注意された」
「…へぇ」
「その当時うちの学校で流行ってたジンクスがあってね」
「ジンクス?」
「あそこ。あの山のてっぺんにコーヒーカップが登ると5秒間は頂上に2人きりになるから、その時にキスしたカップルは別れない、ってヤツ。どこにでもあるようなありきたりなジンクスが流行ってたんだよね」
「…参加したのかよ?それに」
「そうだね。ジンクスはジンクスでしかなかったから、今キミと昔ばなししてるんだろうけど。」


その時のキスがきっかけで別れましたとは言わないけど。
いやだって、あのがっついた感じのところに当時の私はドン引きだったって言うか。
こう見えて乙女だったから、あの血走った感じはいただけなかった。


「ま、若かりし頃の思い出、ってヤツだよ」
「…そーかよ」


ゆっくり、ゆっくり、コーヒーカップが昔の思い出の場所へ近づいて行く。
そう言えばあの時以来これに乗ってなかったから、ほんと久しぶりだ。


「名前さんは、」
「え?」
「どんな高校生でした?」
「え?どんな?…普通?」
「なんで疑問系なんだよ」
「いや、キミの質問が抽象的すぎてわからない」
「抽象的って…。あるでしょ、口が悪かった、とか、掴み所なかった、とか。いろいろ」
「それは今の私に対するキミの評価でしょ?」
「…まぁ、そうだけど」
「普通だよ。キミのように探偵になれるような頭があったわけじゃないし、…蘭ちゃんのように都大会で優勝できるほど運動神経があったわけでも、可愛かったわけでもない。普通の女子高生」
「名前さんて、」
「うん?」
「たまに突然蘭の名前出しますよね?」


キミがそれ言う?
ほんとにこの子現場以外じゃポンコツだな…。


「…あの子は女の私から見てもパーフェクトに近い存在だよ」
「そうですか?」
「キミはそう思わない?」
「よくわかんねーや。…少し前までならそう思ったかもしれねーけど。今は別に」
「蘭ちゃんが泣くよ」
「泣きませんよ、これくらいじゃ」
「…キミは女心をほんとにわかってないね」
「名前さんにだけは言われたくないです」
「私女なんだけど」
「いや、そういう意味じゃなくて」


地上の人々が豆粒くらいになってきた。
そろそろ頂上が近い。


「…ジンクス」
「え?」
「叶ったヤツいんの?」
「ああ。私のクラスメート結婚したよ」
「マジで!?」
「うん。20歳でデキ婚だったけど」
「へぇ…」
「あ、ほら。ここ上りきったら頂上。園内が一望できて結構オススメ」


ガタン、と揺れるコーヒーカップ。
いやだってまさか。
このへタレがこんなところで行動を起こすとは思いもしないじゃないか。
頂上に到達した直後の吹き抜ける、生暖かいけど、優しい風がすごく心地よかった。

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