Detective Conan


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stock-永遠の恋-


26


「…」
「…」
「…」
「…」
「ごちそうさまでしたっ」


翌朝のリビングはそりゃもうお通夜?って感じで。
工藤くんは相当お怒りらしい。
いただきますとごちそうさま以外一言も話さなかった。
まぁ…、彼の立場で考えてみたらそうだろうなとは思うけどね。


「いってきます」


誰もいない空間に言っても、虚しさだけが響く。
1人って、こんなに物悲しいものだったっけ?
もうほんと重症…。


「お疲れ様でした」
「おーぅ、お疲れ様!」


今日の業務内容は?って聞かれたら、気がついたら終わってましたって答えるわ。
私今日何したっけ?
工藤家に帰るのが気が重い。
荷物全部置いてあるから帰らないわけにはいかないんだけどさ。
帰ってさっさと自分の部屋に引きこもろう。
そう思いながら会社のロビーを抜けて入り口を出た。


「…キミどうしたの?」


ら、入り口脇の壁に優雅に寄りかかってる工藤くんがいた。


「ああ、名前さん。良かった」
「…良かったって何が?」
「帰りますよね?行きましょう」
「はあ…」


少し前を歩く工藤くんの後ろ姿を見る。
背が高い!ってわけでもなく、かといって低いわけでもない後ろ姿。
…この子何しに会社まで来たんだ?
無言で先を歩くものだから、意味わからん。


「スーパー」
「え?」
「寄って行きますけど、いいですよね?」
「あ、うん」


何、買い出し手伝えってこと?
…きちんとコミュニケーション取れよ。


「…そう言えばキミ風邪は?」
「治りました」
「そう」


この子、怒ってるのになんで会社に来たんだろ。
もともと意味わからんところある子だったけど、ますます意味がわからん。


「正直、」
「うん?」
「…もう口聞いてもらえないんじゃないかって思った」
「…え?」
「俺、ひどいこと言ったし」
「え、どの言葉のこと?」
「…それ本気で言ってます?」
「うん。いつの時のどの言葉を指してるのかわからない」
「…俺そんなに名前さんにひどいこと言ってます?」
「自覚出てきたならいいんじゃない?」
「…」


いやほんと。
最近は私の心情の変化からこの子の無意識が怖いし。
でもそれに対して自覚出たならまだ…。


「蘭に」
「え?」
「今日、蘭に聞きました」
「…何を?」
「昨日蘭が余ったヤツ冷蔵庫に仕舞おうとしたら、名前さんが作りおきしてくれてたヤツ冷蔵庫に入れてあったって」
「…ああ」
「蘭も食材買ってうちに来たから冷蔵庫開けなくて食べ終わってから気づいたって言ってたし、蘭が片づけてる時俺先に部屋で寝てたし」
「…」
「そもそも冷蔵庫開けても調理しなきゃ食べられないヤツばっかだって思ってて、開けもしなかったから気づかなかった」
「別に気にしてないし」
「生ごみに捨てただろ?作ってたヤツ」
「…」
「食べ物粗末にするともったいないお化けが出るって教わらなかったのかよ?」
「…それ私がキミに言ったんでしょ」
「なら知ってるよな、もったいないお化けが出るって」
「そういう非現実的な話は信じない主義なの」
「よく言うぜ」
「…何が言いたいの?」
「ちゃんと食うから、もっかい作れ」
「…キミさぁ、それが人に物を頼む態度?」
「…きちんと食べますから、もう一回作ってください」
「嫌」
「…オメーはほんっと…」
「あれ病人食だから風邪治ったなら必要ないでしょ」
「…」
「むしろキミが何か作れ」
「命令かよ」
「当然」
「…何が食べたいんです?」
「カレー」
「…」
「キミ、カレー好きって言ってたでしょ?カレーにして」
「…わーったよ」
「あ、ルーは大辛にして。キミのチョコと相殺されてちょうどいい味になる」
「…作る前から喧嘩売ってんのか?」
「食べやすくなるような提案って言ってくれない?」
「…はいはい、大辛ですね。あとは?」
「あとは…」


1口も食べずに捨てた料理は、もったいないお化けにならずに、違う形で出てきたらしい。
工藤くんがアレに気づいてくれたことがどこか嬉しくて、どこか気恥ずかしかった。
きっとまだまだこの生意気な高校生探偵に振り回されるんだろう。
でも今は、昨日から奈落の底まで沈んだんじゃないかってくらいの心が一気に浮上してきたから。
何1つ好転していなくて厄介なことに変わりないけど、今はこの一瞬が嬉しい。
昨日流れた涙はきちんと希望の涙になったようだ。
今はそれだけで、良しとしよう。

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bkm

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