Detective Conan


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stock-永遠の恋-


22


「…んー、うるっ、さい…」


けたたましく鳴る目覚ましが、頭に響く。
…私今日休みじゃなかったっけ?
目を瞑ったまま手を伸ばし、バチン、と目覚ましを止めて寝直す。
ああ、2度寝サイコー。
お布団気持ちイー…。
このまま夢の世界へ…、って、なんか今日布団固いな…。
なんか敷いて寝たんだっけ?
雑誌?
にしては生暖かい…。
生暖かい!?


「…おはよー、ございます…」
「…おはよ」


うつ伏せ状態から体を起こしたら、どんな寝相だったのか私に下敷きにされていたらしい、赤い顔して視線の定まらない工藤くんがいた。
ああ、そう言えば昨日添い寝したんだった。


「名前さん仕事は?」
「今日?希望休暇出してある。キミ学校は?」
「…行きます」


とは言うものの、私の腰に手を回してる工藤くんは動く気配がなく。


「何、続き希望?」
「早く退けよっ!」
「…手離してくれないかな」
「…」


ここであっさり離すのが、工藤くんなんだろうなぁ…。
いやすごくらしいんだけどね。


「工藤くん」
「はい?えっ!?」
「同じベットで目が覚めたら、せめてこれくらいはするものだよ、少年」


Tシャツを引っ張り頬にくちづけたら、そりゃーもう見事にフリーズした。
そのままマネキンになれるよ、キミ。


「じゃ、先に下行ってるから」


ようやく状況を理解したのか、顔を赤く染め始めた工藤くんを残してリビングに行く。
あの子いろんな意味で見てて飽きないな…。
でも、これ以上は、ね。


「新一ー?学校行くよー?」
「おー、今行くー!」
「頑張れ、学生」
「…行ってきます」


蘭ちゃんは甲斐甲斐しく毎朝工藤くんを迎えに来る。
その姿を見送るのは、やっぱりちょっと…。
でも、「高校生」の工藤くんにはお似合いの「高校生」の彼女。
しかも女としてこれ以上ナイくらいパーフェクトに近い存在。
あんな子と張り合う元気も若さも、ない。


「…これもついでに」


不動産情報誌を片手に手ごろな物件を探す。
…やっぱりジャグジーつきなんてないよな、当たり前だけど。
私のお給料だと、出せる額なんてたかが知れてるし…。
でもこのまま工藤家に居候し続けるわけにはいかないし。
っと、


「だからー!どうして新一はそうなの?もっとちゃんと」
「ウルセェなぁ、俺だってちゃんとやってんだろ!」
「やってないから言ってるんでしょ!今日だって先生が言ってたよ?」
「あのなぁ、あの先生は俺が長期間休んでたのに進級したから金で進級したとか言って目の敵にしてんだよ!んなこと信じるんじゃねーよ」
「でもぉ…」
「だいたい蘭!オメーもな」


…私なんで隠れてるんだろ。
いや、てゆうかあの子達なんでこの時間にここにいるんだ?
そう言われてみれば帝丹の服着てる子ちらほらいるな…。
何?今日早く終わる日なの?
…あの子たちがデートしたら、賑やかで楽しいものになるんだろうな。
高校生同士の初々しい恋愛ができるだろうに。
…工藤くんはきっと、年上という存在が物珍しいだけ。
蘭ちゃんにフラれた直後にタイムリーにやってきた年上の私が珍しく、熱に浮かされてるだけだ。
6つも離れていたらそりゃ珍しいだろうさ。
蘭ちゃんもフリーになったんだ。
私がいなくなれば熱が冷め、彼がその人生のほぼ全ての時を共にしてきたであろう彼女の存在を思い出すだろう。


「わかってるんだけどね」


出したくなかった答え。
彼は私という存在に恋してるんじゃない。
フラれた直後に現れた物珍しい存在に惹かれているだけだ。
高校生の思春期の少年が、年上のお姉さんに憧れてる、よくある話だ。
私がそこにうっかり足つっこんじゃったもんだから、深みにはまってる。
彼のあの真っ直ぐな熱は、蘭ちゃんにこそ相応しい。
今だぎゃーぎゃー騒ぎながら遠ざかる2つの影が、ひどく、羨ましく思えた。
あの場所に自分がいれたら。
6年という歳月がなかったら。
私も同じ高校生だったら。
そこまで思って自分がひどく矛盾していることに気づいた。
私が6つ年上だからこそ、工藤くんと仲良くなれたんだ。
同い年だったらきっと、彼は私という存在にすら、気づかなかっただろう。
それが彼、工藤新一という人と私の距離なのだから。


「ほんと、早く新しいとこ探そ…」


もう誰かなんて識別できないほど離れた2人にもう1度目をやり、その場を後にした。

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bkm

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