Detective Conan


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stock-永遠の恋-


19


「キミそこで何やってるの?」
「推理小説読んでんだけど?」
「自分の部屋で読みな」
「別に名前さんの邪魔してねぇだろ」
「雰囲気が邪魔」
「…」


私たちは確かに1度関係を持ってしまったけど、ただそれだけ。
今はなんとも穏やかな大家と居候という関係が定着している。
…まぁ工藤くんがヘタレすぎてそれ以上になりようがないってのが正しいけど。
私を好きらしいけど、決め手を出せない押しの弱さ。
それが、彼の彼らしいところなのかもしれないけど。
私からはどうこうする気はないし。


「あいっかわらず口の悪ぃ女だな」
「誉め言葉としてもらっとく」
「誉めてねぇだろっ!!」
「キミ」
「なんだよ」
「叫ぶならほんとに邪魔」
「…」


全てが日常に戻ったのかどうか。
それはわからない。
彼が決め手を欠いていることと同様に、私も答えを出していない。
私は結局、彼を何だと思っているんだろう。
悩んだ時、むしゃくしゃした時。
昔からしていたこと。
真っ白いスケッチブックにただただ色を置いていく。
何を描くわけでもない。
今の自分の感情を、真っ白いスケッチブックに色彩と言う形を借りて表していく。
…ことに、誰かいると気が散るから出てけって言ってるのに、この少年は新作読んでないとか言ってどこぞの誰かが書いた推理小説を私の部屋に持ち込んだ。


「…静かにしてるし」
「…」
「…」
「お茶」
「え?」
「喉乾いたからお茶煎れて来て」
「…煎茶?番茶?」
「煎茶」
「…あり得ねぇくらい美味い茶煎れてきてやるよ」


自信家で生意気。
キミも相変わらずだ。
結局これが私たちの日常なんだろう。


「…茶煎れるのに何分かける気だよ」


数日いない間に煎れ方忘れたのか。
区切りもいいし、リビングに行くか。


「でもちゃんと生活してるみたいで安心した!」
「だーから大丈夫だって言ってんだろ?料理もまぁ…するようになったし?」
「掃除は?新一の家広いんだから掃除する場所いっぱいあるんだよ?」
「あー…」
「してないんでしょー?そんなことじゃないかと思った」
「いや、してないわけじゃねぇって!」


最近の若い子は押し掛け女房になるらしい。
蘭ちゃんが来たなら、私はいない方がいいんだろうなぁ…。
いろんな意味で。
どこに行こうか。
最近お金使いすぎたから節約しなきゃだし。
またコンビニでアイス買って公園ベンチコースか。
…私の人生これでいいのか虚しさが襲ってくるわ。


「…雨降って来たしっ!」


あっさり公園ベンチコースが却下されたじゃないか!
傘も持って来てないしどうしよ。
アイス買う分の小銭しか持ってきてないしな…。
バーガーショップで100円コーヒー飲むか。
コーヒーあんまり好きじゃないけど。
まぁ…、時間潰しにはなるだろ。


「あ、携帯忘れた」


仕事してる上で携帯が三種の神器の1つになっているせいか、オフになると無意識に携帯を遠ざけている。
ああ、そう言えば新しい番号工藤くんに教えてないな。
聞かれないからすっかり忘れてた。
まぁ…聞きたいなら聞いてくるだろう。


「なんででぇへんのや!」


…さっきから独り言の煩い男だな。
帽子被ってて顔見えないけど、どっかで見た気がするんだよな…。
関西弁、色黒、たぶん少年…。
そんな知り合いいるわけないから気のせいだな。


「どーせ工藤のヤツあの姉ちゃんとおって気づかへんのやろぉな…」


工藤?
って、あの工藤?
いやでも工藤なんてわりとよくあるしな…。
でもこの子格好からして、工藤くんと同じくらい?
じゃあほんとに工藤くんの…


「あっ!」
「あ?」
「西の高校生探偵!」
「お、なんや俺も東で名通るようになったんやな!」


やっぱり…。
じゃあ今の電話の工藤ってほんとに工藤くん…?
世の中狭すぎる。


「西の高校生探偵が何しに来たの?」
「俺か?親友に会いに来たったんや!」
「親友、ね」
「アイツ、ちーと調子えぇと全く連絡寄越さへんさかい、渇入れたらなあかんし」
「工藤くん今取り込み中だよ」
「おー、電話出ぇへんし、なんや取り込んで」
「今蘭ちゃんと大掃除中じゃない?」
「…」
「あとで掛け直したら?」
「…姉ちゃんなんで工藤のことそないに知っとんのや?」
「あ、私今工藤家で居候の身だから」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…なんやてーーー!?」
「キミいちいち煩い」
「姉ちゃん工藤と同棲しとんのかっ!?」
「いやそれ誤解招くから。同棲じゃなく同居ね」
「アイツ俺に連絡寄越さへん思ぉとったら何1人でおいしいことしとんねん!!」
「…キミ私の話聞いてないでしょ?」
「姉ちゃん、工藤しばきに行くでっ!!」
「…私キミとだけは友達になれないと思う」
「ほら、はよせんかいっ!!」
「え、雨降ってるから嫌」
「はや来んかい!!」
「…キミそれが人に物を頼む態度?」
「あのキザ男、俺になんも話さんと友達甲斐のないヤツやなっ!!」
「…キミとはコミュニケーション取れる自信ない」
「ほら、俺の傘に入れたるさかい、はよ来んかい!!」


私の腕を引っ張って店を出る西の高校生探偵は、何やらお怒りのようで。
てゆうかこの子と親友になれる工藤くんが輝いて見えるわ。
あの子も人の話聞かないけど、さらに上を行く…。
なに、類友?
それなら納得いく。


「で?」
「え?」
「工藤の家どっちや?」
「…キミほんとに高校生探偵?」


あまりにも直情型すぎる…。
探偵に向かないんじゃないのか?


「こっち」
「いや〜、姉ちゃん連れてきて良かったわ!」
「…」


いつの間にか引っ張られた腕が逆転して、私が腕を引っ張り工藤家に向かった。

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bkm

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