Detective Conan


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stock-永遠の恋-


17


「…キミもしかしてここに泊まった?」
「ええ。皆さん親切にかけるものまで貸してくれましたし」
「…学校は?」
「今日は休みですよ。創立記念で」
「…前も言ったと思うけど」
「なんです?」
「キミ一歩間違うとストーカーだよ…」


屋台で愚痴って、マンガ喫茶で泊まって、さぁ今日も仕事。
疲労が溜まる体に鞭打って社に来てみたら、ボロいソファで実に優雅にくつろぎながらコーヒー飲んでる工藤くんがいた。


「あ、編集長さん。ありがとうございました」
「ああ、あんなところだけどちゃんと眠れたかな?」
「はい、助かりました」
「…どういうことですか?」
「いや〜、工藤くんが苗字くんを助手に指名してくれてから、他紙より詳細が書かれてるって工藤くんが活躍した時のうちの売り上げ右肩上がりでね!受けた恩は返さなきゃでしょ!」
「…私を売りましたね?」
「大丈夫、大丈夫。工藤くんが載った時の売り上げ考えたら苗字くんは安い女じゃないよ」


所詮は売り上げか。
数字の前に部下をも見放すのか。


「…私これから仕事だから帰ってくれないかな?」
「編集長さん」
「あ、苗字くん今日外回りね」
「はぁ!?なんでですか!今日は取材記事の」
「取材先1件追加したから行って」
「…たかが高校生に何で買収されたんです」
「工藤優作の新作獲得優先交渉権ですよ。ねぇ、編集長さん?」
「あの工藤先生の新作載せれたらさらに右肩上がりだよ!工藤くんよろしく頼むよ」
「任せてください。父には必ず伝えますから」


この子探偵なだけあって冷静に物事を分析しすぎる。
自分がどういう立場で世間からどう見られてるか知ってて、それを最大限活用するとか生意気極まりない。


「っていうことだから、社会見学したい工藤くん連れて取材よろしく」
「…拒否したら」
「減給」
「…それでもいいんで」
「ボーナスカットでもいい!?それなら仕方ない。工藤くん諦めて」
「ボーナスカットされたら私生きて行けません!」
「じゃ、一緒に外回りよろしく」


世知辛い世の中だ。


「私仕事中だからプライベートな話題は休憩中にして」
「いいですよ。どうせ今日は話ができるまでずっとついていくつもりだったし」
「キミ…」
「なんです?」
「間違えなくてもストーカーだわ」
「…」


私なんて追っかけまわさなくても、蘭ちゃんを追っかけまわせばいいのに。
キミたちのボタンはまだまだ掛け違いのままなんだろうな。
相手がこんな男だなんて蘭ちゃんも可哀想だ。


「いやー、でも取材ってどんなものかと思ったらまさかあの工藤新一くんが来てくれるなんて思いもしなかったよ!」
「僕も彼女にはお世話になっているので、空いてる時は手伝っているんです」


初めてついて来たくせにしれっとよく言う。
どこのペテン師だ。
ああ、女優の息子だから演技力があるのか。
こうも爽やか青年装う工藤くんに、取材相手もすっかり騙されるってもんだ。


「サインもらっていいかな!?」
「え?僕のですか?そんな、サインするほどの人間じゃないですよ」
「いやいや、娘がキミの大ファンでね!」
「へぇ、お嬢さんいらっしゃるんですね」
「ああ、今年高校生になったんだけど、どうだい?彼女いないならうちの娘なんか」
「…スミマセン、僕そういうこと興味ないので」


この千両役者がっ!!
あれだけ蘭ちゃん蘭ちゃん言ってた男がよく言うよ!


「なんだなんだ!若いんだし、顔もいいんだ、遊ばなきゃもったいないだろ!」
「…いいえ。僕は1人の女性に振り回される方が性に合ってるみたいです」


いや、どっちかって言うとキミが蘭ちゃんを振り回したんじゃないのか?
あ、でも我慢ならず蘭ちゃんがホンドーくんとつきあったんだから蘭ちゃんに振り回されたのか?


「ほぅ。興味ないってわりにしっかり1人の女性はいるわけだ」
「…さぁ?どうでしょうね」


粘着質でストーカー気質のこの男に好かれる蘭ちゃんは大変だ。
ああ、でもあの子も要領良さそうだし、くっついたらくっついたで要領よくどうにかうまくあしらいそうだな。
あの子も意外としたたかだし。


「無事終わりましたね」
「うん、ありがと。あの人すっかりキミの虜だね」
「敵が多いって言われたんで、なるべく好かれる努力はしようかと思って」
「へー、そんなこと言われたんだ。的を得た発言されたね」
「オメーが言ったんだろうがっ!」
「え?私?……そんなこと本人に言わないって」
「言っただろうが!自分が思ってる以上に敵がいるって!!」
「いや、そう思ってるけどまさか本人に言うわけないじゃん」
「…」
「…」
「…まぁどっちでもいいけど」
「そう?じゃあそういうことで」
「…」


取材が終わったってことは、休憩に突入するわけで。
…なかったことにしようって女が言ってるんだから、それで納得してさっさと次にいけよ。
これだから童貞は。
いや、もう童貞じゃないけど。
ああ、そう考えると私今さらながらとんでもないことしたのかも。


「で?」
「え?」
「今どこにいるんですか?」
「キミの目の前にいるけど」
「そういうバカなことは寝てる時に言って起きてる時くらいまともに話してください。今どこに住んでるのかってきいてるんです」
「…キミ今私をとんでもなくバカにしたよね?」
「してません。事実を言ったんです」
「…」
「で、どこに住んでるんです?」
「キミには関係ないと思うけど?」
「関係あるから聞いてるんです」
「…どこらへんに関係があるのか聞きたいんだけど」
「…まさかオメーこのままバックレる気じゃねーだろうな?」
「…逆にお聞きしたいのですが」
「あ?」
「…もしやキミ私に責任取れとか言ってる?」
「…」
「いやほら、キミの童貞をいただいてしまったことは謝るけど、そこはねぇ?良い経験したと思って1つ収めてもらって」
「…オメーさぁ…」
「うん?」
「オメー…」
「なに?」
「…俺のことなんだと思ってるわけ?」


キミはあんなに演技力あるんだから。
こういう時くらい演技してみろってんだ。
ひどく、傷ついたような顔で問い詰めてくる工藤くんをただ見つめ返した。

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