Detective Conan


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stock-永遠の恋-


14


「今何時だと思ってんだ」
「え?21時?」
「どこまで抹茶アイス買いに行ってんだよ」
「駅前のコンビニ?」
「駅前のコンビニに抹茶アイス買いに行った人間がなんで6時間後に酒臭くなって帰って来てんだよ」
「それがさー、たまたま入った屋台のオッチャンが良い人ですっかり打ち解けちゃって話し込んじゃったよ!」
「…あのなぁ、名前さんが屋台だろーがBarだろーがどこで飲もうと構わねぇけど、共同生活してんだから連絡くらい入れろよな」
「それがさー、携帯部屋に忘れて来たって屋台入ってから思い出してさ!」
「…」


蘭ちゃんと別れた後、気を利かせてたまたま目についた屋台に入って時間潰そうと思ったら、思いの他居座ってしまった。
もうそろそろいいだろう、と頃合いみて帰ってきたら、エライ仏頂面の工藤新一がリビングでコーヒー片手に新聞を読んでた。
…どこの上流家庭のモーニングだよ。


「なんだその袋」
「チューハイ買ってきたんだ。キミの分はないよ」
「…それだけ酒臭くなって帰ってきながらまだ飲む気かよ」
「あ、大丈夫。臭いほど飲んでないから」
「…名前さん明日も仕事だろ?さっさと風呂入って寝ろ」
「一緒に入る?」
「…」
「やだな、冗談でしょ。睨まないでよ」


いつもなら狼狽えるくせに。
蘭ちゃんと会った直後だから強気になってるのか?


「このジャグジーともお別れか…」


あんなはっきり蘭ちゃんに嫉妬された手前、素知らぬ顔で居候続けられるわけないしなぁ。
あと何回このジャグジーに入れるかしら。


「あー…。変な時間に目覚めたな…」


お風呂から出たあとパタッと記憶がないってことは、さっぱりするだけして寝たらしい。
何時に寝たか知らないけど、まさか夜中の1時半に目が覚めるなんて!
…飲み直すか。
いや、明日の仕事に命取り?
でも目がギンギンして寝れる気しないんだけど。


「……ぅ……はっ……」


あれ?
工藤くんの部屋のドア少し開いてる。
………聞かなかったことにしよう。
思春期の少年、右手が恋人な時もある。


「……っああああーっ!!」
「どうしたのっ!?」


とてもアレな最中じゃない雄叫びをあげた工藤新一の部屋に飛び込んだら、寝ていたのか暗い部屋のベットの上ではぁはぁ言って頭を抱えている工藤くんがいた。


「…どうしたの?」
「…」
「うなされたの?」
「…なんでもありません」
「いやキミ、なんでもないって状態じゃないでしょ」


良く見たらこの子汗びっしょりで少し震えてる…。


「ねぇ、ほんとに」
「触んなっ!!」
「…」
「…スミマセン、よくあることですから」
「…よくあるって?そうやってうなされることがよくあるってこと?」
「…」
「…」
「…」


こんなになるほど何かにうなされることがよくあってたまるか。
…でもこの子頑固なところあるから、口閉ざしたら言わないだろうしな。
どーしよ。


「…ぃんです」
「え?」
「怖いんです」
「…怖い、って夜が?」
「…寝て起きることが」
「なんで?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…また、」
「え?」
「小さくなるかもしれない」
「……は?」
「いつも、目が覚めて一番に、自分の体を確認するんです」
「うん」
「ああ、今日も俺のままだって」
「…」
「灰原の薬を信用してないわけじゃねぇけど…。でもまたあの体になるんじゃねぇのかってっ…!」
「…」
「…だいぶマシになってきたんですけどね。たまに、あの日、ジンと会ったあの日の俺が夢に出てきてうなされるんです。…自業自得なんですけど」


そう言って自嘲気味に笑う工藤くん。
…この顔だ。
その年齢らしからぬ、やりきれない物悲しさを含ませた、見てるこっちが胸が痛くなるような顔。


「言ってることはよくわからないけど」
「…」
「…今の状態のキミを助けられる方法は知ってる」
「…え?」
「眠れない夜の過ごし方」
「え、」
「教えてあげる」


これは酔ってるからだ。
酔った勢いってヤツだ。
軋むベットの音に工藤くんが目を見開いたのがわかった。


「嫌なら逃げていい」
「…」
「でも」
「…」
「触れたら途中で止めないよ」


工藤くんは息を飲んだけど、逃げはしなかった。
自分でも、少し口角が上がるのがわかった。


「キミが知らないこと」
「…」
「教えてあげる」


昼間会った蘭ちゃんの顔が過らなかったかって言ったら嘘になる。
それでも、目の前で震えて泣きそうな顔をしていたこの子を、私が、私の手で、どうにかしてあげたかった。

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bkm

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