Detective Conan


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stock-永遠の恋-


13


「あ」
「あ、れ?」
「名前さんお久しぶりです」
「久しぶり、蘭ちゃん」


米花駅前のコンビニに抹茶アイスを買いに来たら、ずいぶん懐かしい人に遭遇した。
…相変わらず胸デカイ子だな。


「最近めっきり会いませんでしたね」
「あー、うん。最近は取材先に毛利さんと言われないから」
「…うちもまぁ、コナンくんがいなくなってから閑古鳥なんですけどね」
「コナン、て、あの眼鏡の男の子?いなくなったの?」
「はい。両親のいる海外に行っちゃったんです。以来お父さんの仕事もパッタリで…。お父さんは福の神が去ったー、とか言ってるけど、私もコナンくんは弟みたいだったからちょっと寂しくて…」
「…そう言えば毛利さん復縁されたって聞いたけど?」
「はい!母が帰ってきて、喧嘩も多いですけど…でもうまくやってますよ!」
「そう。良かったね」


あのオッサンがそれで女好き収まるとは思えないけど。
まぁ、蘭ちゃんが幸せなら何よりだ。


「…名前さんて、」
「うん?」
「今新一と一緒に住んでるんですか?」
「やめてくれる?」
「え?」
「誤解招きそうだから。家が見つかるって言うかお金貯まるまでの間居候させてもらってるだけだから」
「そう、なんですか?」
「そうだよ」
「でも新一…」
「え?」
「…」
「…」
「…」
「…'新一'がなに?」
「…新一、料理するようになりました」
「え?…うん、そうだね」
「私があんなに言ってもしなかったのに」
「…そりゃー最終的に蘭ちゃんがやってあげてたからでしょ?」
「カレーライス」
「はい?」
「作りませんでした?新一」
「…ああ、うん。この間作ってたよ」


イマドキの子の話の流れが掴めない私はすでに「オバサン」領域に片足入れてるのか?
この子こんなに話の組み立て下手だったっけ?


「カレーライス、」
「うん?」
「嫌いなんです、新一」
「…は?」
「昔ご飯ぐちゃぐちゃにして食べる子がクラスにいて、見てて汚いから嫌って」


…あの男らしいな。
でもこの間好きって言ってたはずだけど?


「でもカレーならそうそう失敗はないはずだから教えてくれ、って」
「え?」
「いっつも作ってもらってるの悪いからたまにはお返ししないと、ってわざわざ阿笠博士のお家借りてカレー作る練習してたんです」
「…阿笠って誰?」
「新一の家の隣に住んでる発明家で」
「ああ!あのおじさん!…そのおじさんにカレー教えてもらったんだ?」
「いえ、その家を借りて私が教えたんです」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…は?」
「聞いてませんでした?」
「いやだって、蘭ちゃんが教えたわりにエライひどいの出てきたよ?」
「ひどいって…」
「男の料理って枠組からも外れそうな豪快で斬新な切り口の野菜がごろごろしてるチョコ味のカレーが」
「………新一……」


いや、私が頭抱えてため息吐きたいんだけどね。
何をどう教えたらあんなカレーになってでてくるわけ?


「…でも、全部食べてあげたんですよね」
「え?うん。そりゃー仕事帰りでお腹ぺこぺこだったし、なんでも美味しく感じられたから」
「新一、私に料理作ってくれたこと1度もないんです」
「…え?」
「自分が作った料理を人が全部食べてくれることがこんなに嬉しいとは思わなかったって言ってました」
「…」
「…年上気取りでスバスバ物を言う同居人って誰のことかと思ったけど、この間たまたま新一の家から出てくる名前さんを見て驚きました」
「…」
「私にはしてくれなかったこと、名前さんにはするんだ、って思ったらなんていうか…」


…ああ。
この子達は近くにいすぎて相手が見えなくなって、ボタンを掛け違えてしまったんだ…。
きっとそのボタンの掛け違えに気づいても、どうしていいかわからずに外すこともできないでいる…。
でも…。


「蘭ちゃん、彼氏できたって聞いたけど?」
「…別れたんです」
「え?」
「…最初は気のせいって思ってたけど、やっぱりどうしても比べちゃうから。笑って気にしなくていいずっと待ってるって言ってくれたけど、本堂くんに失礼だし」
「…そう。それ工藤くんは?」
「…知りません。新一は、今も昔も推理のことで頭がいっぱいで私のこと考える余裕なんてないんです」


そんなことないと思うけどなぁ…。
大して仲良くもなかった私に蘭ちゃんの話ししてきたくらいは、蘭ちゃんのことで頭がいっぱいだったハズだし。


「じゃ、私こっちだから」
「え?新一の家に行くんじゃないんですか?」
「うん。ちょっとお出かけ」
「そう、です、か」
「…今いると思うよ?工藤くん」
「…」
「私外でご飯食べて帰るって伝えておいて」


高校生の初々しい恋愛の横槍を入れれるほど若くもないし、温かく見守れるほど、老いてもいない。


「ま、オバチャンにできるのはこんなところでしょ。…がんばれ、少年」


溶けかけた抹茶アイスを公園のベンチで頬張りながら、これからのことを思った。

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bkm

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