Detective Conan


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stock-永遠の恋-


12


「名前さん、これなんてどうです?」
「え?」
「絵本作家コンテスト」


酔った勢いでポロッともらしてしまった夢の話。
以来工藤新一はやけに懸命に後押ししようとしてくれた。
なんだかそれが少し、気恥ずかしかった。


「まだコンテストとか言う段階じゃ」
「バーロォ!目標はあった方がいいに決まってんだろ!しっかり目標立てねぇから迷うんだよ。コンテストなんて一番わかりやすい目標じゃねーか」
「…キミ意外と体育会系?」
「意外じゃなく体育会系」
「いや、どちらかと言うと根暗なオタク系だと思った」
「…」


目標を見つけられるかられないか。
それで人生大きく変わる。
…工藤先生は、売れっ子作家として働く傍ら、大事なことはきちんと息子に教えていたようだ。


「ここ最近、キミを見直す機会がありすぎてビックリする」
「はぁ?見直すって?」
「でもまぁ、いろいろ見直されるくらい今までが評価低すぎ、ってだけの話なんだけどね」
「…」


生意気なお坊っちゃんから、生意気な工藤くん、に昇格するくらいは見直した。
…とは、天性の天狗気質のこの少年には言わないけど。


「…まぁ俺も見直したけど?」
「え?」
「絵本作家って言うけど、どんな悪どい絵描くのかと思ったら、名前さんなんつーかめちゃめちゃ優しい絵描くからマジでビビった」
「…」
「し、見直した。って、いてぇぇって!!」
「…」
「この間と技変わってるじゃねぇか!!」
「プロレスも日々進化してるのだよ。…ふんっ!」
「いっってぇぇぇぇ!!!」


何が見直した、だ。
生意気なんだよ、キミはほんとに。


「今日の食事当番キミだよ」
「…今日はパンとデパ地下の惣菜です」
「今日の食事当番キミだよ」
「…パンとデパ地下の惣菜です」
「今日の食事当番」
「しつけぇな!パンとデパ地下の惣菜だって言ってんだろ!」
「作りな、自分で」
「出来ねぇからデパ地下だって言ってんじゃねぇか!!」
「あのねぇキミ、出来ないじゃなくてやらないだけでしょ?言い訳してやろうとしないだけでしょ?ここにいる間は私も協力するから」
「…どっかで聞いたような台詞しれっと言ってんじゃねぇよ」
「いや、この言葉ひどく感銘を受けたからほら」
「…」
「苗字名前が聞いた名言集ベスト100の73位くらいにはランクインしたよ」
「なんだよそのビミョーな数字」
「キミへの評価?」
「…すげぇビミョーな評価されてるのは伝わった」
「良かった」
「…」


だいたいデパ地下の惣菜をこんなに買い込むな…。
作ればいくら金が浮くと思うんだ。
不経済な男だよ。


「名前さん今日仕事何時上がり?」
「今日?はー、20時過ぎるだろうなぁ…。なんで?」
「同居人の動向は知っときたいんで」
「…ああ、キミに番号教えてなかったわ」
「教えてくれるんですか?今さらですけど」
「うん。居候として最低限連絡取れた方がいいし。080995XXX」
「え、」
「アドレスがpucXXX@XX.ne.jp」
「ち、ちょっ、なんで口頭なんだよ!」
「…」
「えーっと、携帯が080995XXXで?アドレス、が、pucXXX@XX.ne.jp…ですよね?」
「…嫌味なヤツ」
「はい?」
「それで登録」
「リョーカイ」


普通他人の携帯番号一度聞いただけで暗記できるか?
どういう脳ミソしてんだよ。
嫌味なヤツ。


「今日」
「うん?」
「夕飯作っときますから、真っ直ぐ帰ってきてください」
「…え、私今日死ぬの?」
「なんでだよ!」
「まさかキミの口から夕飯作っとくって聞くとは思わなかった」
「…オメーがさんざん自分で作れって言ったんだろ」
「ちゃんと食べられるもの作ってね」
「…」
「ここんち胃薬あったっけ?」
「必要ねぇだろ!」
「ほら、昔から言うでしょ?備えあれば嬉しいな、って」
「オメーの希望じゃねぇかよ!!」
「まぁ期待しないで仕事…」
「…なんです?」
「仕事終わった後の美味しいご飯が楽しみで1日頑張ってるのに、キミの手料理が待ってるの?え?何の罰ゲーム?」
「さっさと仕事に行けっ!」


工藤家の存在感ある門から追い出され職場に向かう。
…これで明日寝込むハメになったら、毎朝あんたの味噌汁にタバスコ入れるぞ。


「苗字さん、お疲れさまー」
「お疲れさまです」
「この後どう?」
「飼ってるペットが餌作って待ってるんで直帰します」
「ぺ、ペットが作るの?」
「言葉のアヤですよ。正確には居候してる家の天狗が餌作って待ってるんです」
「て、天狗?」


う〜ん、梅雨はじっとり。
日本ならではの湿度だわ。
不快指数どころか私の不愉快指数がMAXになる。


「ただいま」
「お帰りー」
「…」
「どこ行くんだよ!」
「…ソバ食べに行こうかと」
「夕飯出来てるの匂いでわかるだろ!」
「いや、匂いでソバにしたいなぁと」
「なんでだよ!食べもしねーで失礼な女だな!」
「…だってこのじっとり暑い日にカレー?」
「いいじゃねぇか」
「なぜあえてカレーチョイス?」
「…好きなんだよカレーがっ!」
「…初耳」
「ほら、そこに突っ立ってないでさっさと中入れ」


キッチンに行くに従いカレー独特の匂いが強くなる。
…暑いのにカレーか。
ほんのり汗ばむ覚悟で食べればいいか。


「なんと言うかまぁ」
「んだよ」
「えらいダイナミックにお切りになられたのね」
「一口サイズだろ、一口サイズ!」
「猪木もびっくりな一口サイズだね」
「黙って食わねぇか!」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「なんか言えよ」
「黙れって言ったりなんか言えって言ったりヤカマシイ男だな、キミ」
「食ったら感想言うだろフツー!」
「キミ私の料理に感想くれたことあったっけ?」
「え、」
「初めて作ったからって新一くん美味しいよ!なんて言うと思った?」
「べ、別にそんなこと」
「人にしてもらいたいことは、まず自分もしなさい」
「…」
「でも」
「あ?」
「…イチイチ拗ねるな、少年」
「でもなんだよ」
「初めてにしては隠し味が効いてて美味しい」
「…どうも」
「ちょっとチョコ入れすぎで隠れてないけどね」
「…次は減らします」
「ま、甘口カレーもたまにはいいよ」


ほんと、たまにならね。

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