Detective Conan


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stock-永遠の恋-


11


「さすがに高校生と浮気されたら別れるしかないよな」
「え?や、それ冗談に決まって」
「てゆうか俺も彼女できたから。じゃ、元気で」
「あ、ちょ、待っ…」


いともあっさりと、2年と言う月日に終止符が打たれた。
たった一本の電話で。


「だいたいさぁ、あっけなさすぎると思わない?」
「…ソーデスネ」
「女ナメテルよね?」
「…ソーデスネ」
「高校生と浮気なんかしてねーっての」
「…ソーデスネ」
「しかもちゃっかり自分彼女できたとか言ってんの!それ私のせいじゃないじゃん!」
「…ソーデスネ」
「壊れたラジオじゃないんだからきちんと答えてよ!」
「はい、聞いてますよー」
「キミ私をバカにしてる?」
「してません、してません」
「そもそもキミの存在自体が嫌味なんだよ」
「…スミマセン」
「だいたいさぁ、キミなんなわけ?」
「え?」
「頭脳明晰、眉目秀麗、豪邸に住むほどのお坊ちゃん。キミ苦労って言葉知ってる?」
「知ってます。だから絡まないで下さい」
「知らないだろうから教えてあげる。そこへ直れ」
「…」


大した思い出もないヤツだったけど、フラれたとなったら話は別だ。
だいたい自分の浮気の罪を人になすりつけんなっての。
つーか誰が言った、高校生と浮気してるとか。
あり得ない!


「ちょっと!何片づけてんのよ!」
「明日も仕事でしょ?もうそこら辺で止めた方がいいですよ」
「はぁ?あんたいつから私の小姑になったわけ?」
「小姑だったら追い出してます」
「…まぁ、そうだな」
「ほら、部屋に戻って」


シッシッとリビングから追い払われて部屋に行く。
…こんな時間に部屋に1人でいてもすることもない。


「だからって俺の部屋に来ないでください」
「大丈夫、キミの童貞は守るから」
「今すぐ出てけ」
「つーかさぁ、男ってなんなわけ?」
「…タチ悪ぃ酔っ払いだな、おい」


初めて入った工藤新一の部屋は、まぁ…お洒落とは遠い位置にあったけど、探偵目指してる少年なだけあって、これまた難しい本が勢ぞろいしていた。


「…なに、キミ進学目指してんの?」
「当然でしょ」
「いや、キミのことだからどこかの探偵事務所に入るんだと思ってた」
「個人事務所はほしいですけど、雇われる側になるつもりはないので経営や経済学も学んでおきたいんです」


生意気だけど、この子先を見据えて行動するんだよなぁ。
中途半端に夢を見ないと言うか。
うん、存在自体が嫌味。


「キミの夢は?」
「え?夢?」
「そー。探偵事務所を持つこと?」
「…まぁ、そうですね。事務所を構えて、迷宮入りって言われてる事件を片っ端から解決してくのが夢です」
「…キミらしいね」
「名前さんは?」
「…ねーよ」
「ねーのかよ」
「もう随分前に忘れちゃったー」
「…て、ことはあるんですね、諦めてる夢が」
「…キミここ聞き流すところだよ」
「スミマセン、あえて空気読まない人間なんで」
「自分のことよくわかってるじゃん」
「…」
「夢なんて、夢から覚めたら見るわ」
「…はぁ?」
「今の現実があまりにも思い描いたこととは違いすぎて悪夢でも見てるとしか思えない!」
「…そんなに違うんですか?」
「…」
「…」
「…」
「…ま、別に諦めなくていいと思いますよ?今は無理でも、いつかその悪夢が覚めて思い描いた夢を見れる日が来ると思いますから」
「生意気に慰めないでくれる?」
「俺に何望んでるわけ?」
「相槌」
「…ソーデスカ」


テーブルに置かれたコーラは温くなり、コップの中の氷が音を立てて崩れた。
ああ、私の夢は今こんな感じ。


「絵本作家」
「え?」
「…こう見えて美大目指すくらいは絵が得意なんです」
「…それで絵本作家?」
「出版業界で収入得つつ、ハウツー学ぶ一石二鳥で独学でやっていこうって考えが甘かった」
「…」
「想像以上にいっそがしくて、絵本書くどころじゃない」
「それで悪夢ですか」
「理想と現実のギャップで夢はあえなく溶けていった感じ?」
「…結局テメーがやらねぇ言い訳じゃねぇかよ」
「え?」
「自分で自分に言い訳してやらねぇだけだろ?だからいつまでたってもできねぇし、悪夢から抜けられねぇんだよ。テメーでもがいてでも抜け出す気がねーんだから」
「…」
「やりゃーいいじゃねぇか、絵本作家。ここにいる限り俺も協力するし」
「…」
「あ、でも俺絵心ないかも」
「…キミって、」
「あ?」
「意外にイイ男?」
「…なんだその疑問系」
「いや、あくまで疑問だから。基本モテない男街道突っ走ってるでしょ、キミ」
「…あのなぁ、俺言っただろ」
「ホンドーエイスケよりイイ男だと思うって?私ホンドーエイスケ知らないしね」
「…」
「でも今のキミならホンドーエイスケよりイイ男かもしれない」
「…なんか気持ち悪いからやめてくれません?」
「…」
「あ、ちょ、何すんだよっ!」
「…」
「いっ!?ちょ、マジでいてぇって!!!」
「昨日プロレスでやってたんだよね。…意外に使えるな、この技」
「俺で試すんじゃねーよ!!いってぇぇー!!」


工藤新一の咆哮をBGM変わりに、ちょっとだけ、諦めていたものを見つめ直そうかって考えた。

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