■wedding night
side K
ようやく名前ちゃんの言った言葉の意味を正確に理解した俺は土下座の体制から体を起こした。
けど名前ちゃんは今だベッドの上で土下座中。
「とりあえず、さ、」
「え?」
「それ止めねぇ?」
消え入りそうな声でうん、と言いながら体を起こした名前ちゃんの顔は見事に赤かった。
side H
「それ止めねぇ?」
「…う、うんっ…!」
体を起こすものの、快斗くんを静止できずにやっぱり俯いていた私。
「あー…じゃあ…、寝る?」
それを見た快斗くんが困ったような声を出しながら提案してきた。
「そ、そうだねっ…!」
「んじゃあそこちょっと退いて。ちゃんと布団掛けてねぇと風邪引くぜ?」
現在掛け布団の上で正座なうな私たち。
快斗くんの言葉にそれはそうだ、と立ち上がろうとした。
瞬間、
「ぎゃっ!?」
「おっと!!……大丈夫か?」
痺れた足で上手く立ち上がれず、前のめりになり快斗くんが咄嗟に体を支えてくれた。
「あっ、」
「うん?」
「足がっ…!!」
びりびり?じんじん?する足に全神経持って行かれた気がした。
side K
「ぎゃっ!?」
「おっと!!……大丈夫か?」
ベッドの上で立ち上がろうとした名前ちゃんは上手く立ち上がれずそのまま倒れそうになった。
そこに咄嗟に手が出た俺が結果的に体を支えてやる形になった(最も倒れてもベッドの上だしそんなに痛くねぇと思うが)
痕が残る、左足のせいか、なんて思った時、
「あっ、」
「うん?」
「足がっ…!!」
名前ちゃんは足を触るに触れず、俺の腕の中で悶絶していた。
「もしかして、」
「…」
「痺れた?」
「…くぅっ…!!」
俺の問いには答えなかったものの、足をどうしてくれようかという格闘をその顔が物語っていた。
「こうすると楽になるぜ?ほら」
「ぎゃーーーーーっ!!!」
ぐぃ、っと名前ちゃんの足の指を手で反らすようにしてやったら思いっきり悲鳴を上げられた…。
そんな俺が犯罪者みてぇな声出さなくても…(あながち間違っちゃいねぇけど)
「ううっ…!快斗くん酷いっ…!!」
俺にしがみついてそう嘆く名前ちゃん。
涙目で俺を見上げてくる夜空のように暗い瞳と目があった。
side H
そりゃあ今日はそうゆう趣旨だけどっ!
でもなんていうの、結果的に自分から抱きつくなんてそんなそんなそんな(でもまだ足が痺れてて動けない)
なんてちょっとどきどきしていたら、
「…」
快斗くんの顔が近づいてきて自然と目を閉じた。
何度も何度も。
触れるだけのちゅうを繰り返し繰り返しした。
なんだかくすぐったい、なんて思った頃、
「…」
ベッドに押し倒されて快斗くんが覆いかぶさってきた。
side K
こんな状況で、触れるだけのキスで終わらせるなんて出来るわけない(なにせベッドの上だし、第一そんな女に恥かかせるような真似性格的に無理)
頃合を見計らって、舌ツッコミながらベッドに押し倒した。
「…んっ…ふっ…」
口の端から漏れる吐息にまでクチビルを寄せた。
「…はぁ…」
クチビルを離し、少し上体を上げた。
瞬間、
−快斗くん!ヤメテッ!!−
−快斗くんに抱きしめられたくなんかないっ!!!−
−…っ、いやぁぁぁぁぁっ!!!−
過去の自分の過ちが、フラッシュバックを起こした。
side H
「…んっ…ふっ……はぁ…」
くちびるが離れる瞬間、口の端にちゅって音を立ててちゅうした快斗くん。
その快斗くんが少し、体を起こしたのを感じた瞬間、ビクッと快斗くんの体から振動が伝わってきた。
「…快斗くん?」
私のおなかの辺りにまたがって体を起こしている快斗くんは、右手で口元を抑えるようにして俯いていた。
「…」
突然の快斗くんの行動に驚いて、私も起き上がった。
「快斗くん?」
「…悪ぃ、」
「え?」
「俺やっぱ無理」
そう言う快斗くんの口元を隠すように覆っていた右の手の指先が、少し、震えているのに気がついた。
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bkm