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10万打企画


もしもお泊まりデートしたらA


side S
名前の様子がおかしい。
いや…、普段はまともか?って聞かれたら間髪入れずNOと言えるから、今が平常運転なのかもしれねぇけど。


「オメーさぁ、」
「うん?」


ホントは泊まりに来るの、嫌なのか?
って、聞けるわけがねぇ。
実はかなり楽しみにしてる俺がいるわけで、嫌!なんて言われた日にはもう…。


「あ、あのね、」
「うん?」
「じ、実は、」


目を泳がせて何かを言おうと口ごもる名前。
まさか泊まり来たくないとか言う気じゃっ…!!


「お泊まり当日、なに作ればいいか決まらない!」
「………は?」
「だ、だって、せっかく初お泊まりだからなんかこう…わぁー!って感じなのが良いんだけど、なにが良いか決まらない!」


…至って平常運転だった。
1つ安堵のため息を吐いた。


「…工藤くん?」
「別にいつも通りカレーでもラーメンでもなんでもいいけど」
「それじゃダメ!」


なにがダメかわかんねぇけど、まぁ安心した。


side H
「別にいつも通りカレーでもラーメンでもなんでもいいけど」
「それじゃダメ!」


カレーやラーメンなんてっ…!!
せっかくの新婚さんいらっしゃいなのに…!!
ああ、でも普段の何気ない一コマな新婚さんいらっしゃいがいいのかも…!
悩む!ホントに悩むっ…!!
なんて思ってたら、あっと言う間に当日。


side S
「…で?」
「…ぐすっ…」
「無難にカレーにしようとしたら、ルーも入れて後は煮込むだけ、ってところで鍋ひっくり返しちまって結局カップラーメンになった、と」
「う、うわぁぁん!!」


コイツが気合い入れて何かを作る時、大抵ロクでもないもんが出てくる。
予想通りだ。
…いや、予想の斜め上をいった。
まさかあの気合いの集大成がカップラだとは、誰が予想できた?


「ご、ごめっ…ぐすっ…」
「…名前」
「え?」
「火傷は?してねーか?」
「それは大丈夫…」
「ならいい」


ま、食べ物かどうかわかんねぇもん出されて腹下してせっかくの泊まりが台無しになるよりは、なぁ?


side h
「名前」
「え?」
「火傷は?してねーか?」
「それは大丈夫…」
「ならいい。…いただきます」


そう言って3分経ったカップラーメンを食べ始める。
…工藤くんが!
工藤くんが優しいっ!!
これはやっぱりアレなのかな、新婚さんいらっしゃいが成功してるのかな?
オメーも食え、って言われて私もカップラーメンを啜る。
ちょっぴり哀愁漂う音もなんだか今日は美味しそうだ。


「ごちそうさまでした」


きちんと合掌してごちそうさまをした工藤くんの食べたものを片づける(と言っても空いたカップと箸)
ご飯も食べたし、次はお風呂?
はっ!!
も、ももももももしかして一緒に入るのっ!?
や、やだ、どうしようっ!!
だってそんな電気の下でアルトバイエルンを見なきゃだなんて…!
ダメだよそんなだって一緒にお風呂なんて私


「名前ー」
「な、なに?」
「そこ終わったら風呂入るか?」


side S
「名前ー」
「な、なに?」
「そこ終わったら風呂入るか?」
「えっ!?」


たとえカップラでも、食べたらゴミやら洗い物が出るわけで。
率先してやってくれた名前に風呂を薦めた。


「だから風呂!そこ終わったら」
「ダ、ダメだよっ!!」


うちはオープンキッチンでキッチンに立つ名前がよく見えるんだけど。
俺のいる場所から見える名前の顔が何故か赤かった。


「ダメって何が?」
「な、なにがなんてそんなだって私たちまだ高校生じゃないっ!!」


…うん?
今の会話のどこに俺達の年齢が必要な話題が含まれてた?


「…悪ぃんだけど、」
「そうでしょ、工藤くんも悪いことだって思ってるでしょ!?まだ早いって!!」


悪ぃんだけど、言ってる意味わかんねぇって言う前に、さらに話がわからない方向へ進んだ。
まだ早い?
え?風呂入るのが?
…あぁ、食ったばっかだからか。


「じゃあ、」
「で、でも工藤くんがどうしてもって言うなら、バ、バスタオル巻いてていいなら、一緒に入っても、い、いいよっ…!!」


……………えっ!?
ち、ちょっと、待てっ!
今の会話のどこに風呂一緒に入るなんて言葉が隠れてたっ!?
俺一っ言もそんなこと言ってねぇよな!?
じゃあ、俺から先入っていいか?って言おうとしただけだよな!?
でもなんでだ?
目の前にいる名前は顔(ていうか耳まで)真っ赤にして俯いてる。
え?
俺一っ言も言ってないのに、一緒に風呂入れんのか?


「じ、じゃぁ、バスタオルで…」
「…うん…」


そう頷く名前はさっきよりさらに顔を赤くした気さえして。
…俺、一言も誘ってねぇのに、一緒に風呂入れんだな。
なんて、まるで棚からぼた餅な今の状況に、嬉しいのかなんなのかよくわからない感情が芽生えた。

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bkm

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