キミのおこした奇跡


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発展途上


体だけ成長


from:にゃんこ
sub :帰るとき
本文:電話しろ


保健室から教室に戻ったら、誰もいなかった。
みんな薄情っ!置いて帰るなんてひどい!
って思ったけど、私が逆の立場だったらきっと待っていなかったと思うから仕方ないのかなぁって思った。
カバンに入れてたケータイの存在をすっかり忘れ、さっくりと学校から帰宅しスーパーで必要なものを選び終わった頃。
お財布どこだっけ?って探したら、カバンの中に入れていたケータイがメールが来てることをお知らせしていた。
…もう帰ってきちゃったんだけど、これは電話しないとマズイのかな。
それともスルーしててもいいのかな。
工藤くんが電話しろとか珍しいなぁとか思いながらも、とりあえずマンションに着いてから電話すればいいかって思って、もう1度ケータイをカバンに入れた。
生理用品は意外とかさばって困る。
買ったナプキンたちを仕舞う場所も考えなきゃだし、あ、汚物入れがないっ!
そう思うと出費がかさむ。
でも不思議なことに、通帳には毎月決まった日にどこかからお金が振り込まれていた。
だから出費が多少かさんでも、案外平気な自分がいる。
いや、でも、あの「魔界からの送金」(命名私)がいつまで続くかわからないから、節約する方がいいんだろうけど。
そんなこと考えながらマンションに戻ってきたら、見慣れた姿が仁王立ちしていた。


「工藤くん、ここでどうしたの?」
「はあ?」
「なに?うちになんか用?」
「…」
「あ、聞いて、私今日初めて気絶した!」
「オメー、ケータイはどうした?」
「あ!そう言えば工藤くんからメール来てたね!さっき気がついたんだ!用件なに?」


にゃんこのコメカミに青筋が見えた気がした。


「用件なに?じゃねーよっ!オメー人が心配してメールしてやったのにふざけたこと言ってんじゃねーっ!」
「え、」
「普段あれだけメールの返事催促するくせにオメーが返事しねーんじゃねーかよっ!!」
「…ごめん?」
「またぶっ倒れてんのかもしれねーってわざわざ部活帰りに来てみりゃ何ノンキに買い物行ってんだオメーはっ!!」
「工藤くん、」
「なんだよ!?」
「それ以上叫ぶと余計声枯れるから叫ばない方がいいよ」
「…」


たぶん、普段ならスゴい勢いで耳に入ってくるんだろうけど。
現在風邪気味のみなみボイスは、全く迫力なく。
私の心配をしているかのような内容だったけど、その声に逆に私が心配になった。


「ケホッ…もう俺帰るわ」
「あ、お茶飲んで行かない?私も風邪ひいた時喉がやられ易いんだけど、前にお母さんがハチミツしょうがが効くって教えてくれて、いつなってもいいように作りおきしてあるんだよね。お湯で割ったり、紅茶とかに溶かして飲むと美味しいよ」
「…」
「どうする?飲んでく?」
「…おー、ケホッ」


てことで、そのまま2人で部屋に入った。
…さすがに工藤くんがいる前で生理用品をごそごそしたくないし、荷物は全部自室に投げ入れた。



「で?」
「うん?」
「芳賀はなんで倒れたんだ?」


ハチミツしょうがが効いたのか、カムバックみなみボイスで工藤くんが喋る。
お母さんの年の功はさすがだ!
こっちでもその知恵役に立ったよっ!!


「…腹痛?」
「なんだその疑問系」


いっくらにゃんこ相手だったとしても、生理痛です、と堂々と言えるほど人生経験?男性経験?のない私は、とぼけるしかなかった。


「寝たら治ったからよくわかんないや」
「寝た、っつーか教室でぶっ倒れたんだろ?」
「教室で倒れたってよく知ってるね」
「誰も聞いてねーのに、A組のヤツらがわざわざ俺のところに来てオメーが倒れたって大騒ぎしてったからな」


誰だ、にゃんこの前で騒いだヤツは…。


「私自分が貧血で倒れる日が来るなんて思いもしなかった!」
「は?貧血?」
「え?」
「腹が痛すぎて倒れたんじゃねーの?」
「え?あ、うん?そうだけど?お腹痛くて貧血」


あれ?
腹痛で倒れるのと、貧血で倒れるのとは違うの?
あれれ?


「…腹痛で貧血って、」
「うん?」


それっきり工藤くんは黙ってしまった。
…なぜ?


「おーい!帰ってきてー!」
「えっ!?」
「あ、帰って来た」


黙っただけならまだしも、そのまま違う世界に旅立った工藤くんの目の前で手を振ると、こっちの世界に戻って来たようだった。


「なに?なにかあった?」
「え!?いや、別に…」


戻ってきたけど、なんか工藤くんの反応が変?
少し顔も赤い気がするし。


「…俺帰るわ」
「あ、そう?また明日ね」
「おー…」


そそくさと立ち上がって帰る工藤くんを玄関まで見送る。
…なんか変なの。


「あー…じゃあまぁ、お大事に」
「ありがと。工藤くんもね」
「おー、じゃあな」


スタスタ去っていく工藤くんはまた少しグッバイみなみボイスになってた。
工藤くんも風邪早く治るといいねー、って鈍い痛みのお腹を擦りながら眠りについた。

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