キミのおこした奇跡


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発展途上


体の成長


太くてちょっとだけ長いバニラ味ソフトクリームを食べた翌日。
私が工藤くんちに泊まったことも、黒猫のストラップ貰ったことも、何より工藤くんが私のソフトクリームを食べたこともみんなが知ってた…。
夏休みが明けてもマシンガンの威力は衰えることなく、むしろパワーアップさえした気がした…。
でもなんで工藤くんが私のソフトクリーム食べたことまで知ってたんだろ?


「工藤くんおはよう」


でもそんなことも慣れたもので気にしないことにした。
工藤くんも気にしてないみたいだし。


「…おーケホッ」
「風邪?」
「あー、たぶん?朝起きたら喉が…ケホッ」


工藤くんの爽やかみなみちゃんボイスが、今日はちょっとダミ声になってた。
夏風邪はバカがひくんだって言おうかと思ったけどやめた。
もう秋だ!とか言いそうだし。


「あおい、新一、おはよう!」
「蘭おはよう!」
「…ケホッおー」
「…新一風邪?」
「あー、たぶん?」
「ええっ、と、ちょっと待って…あ!あった!はい、のど飴!」
「おー、悪ぃな」
「いいの、いいの!それより気をつけなきゃダメだよ?新一今1人暮らしなんだから!」
「ケホッ、わーってるよ!」


ごくごくナチュラルに、蘭がカバンから飴を取り出し、ごくごくナチュラルに工藤くんもソレを受け取って、口に入れた。
たまに。
ほんとーーに!たまにだけど。
こういう場面に遭遇した時、私は消えた方がいいのかここにいてもいいのか…。
蘭がこうやって工藤くんに気を遣ってる場面は、2人の関係からしたら当たり前なことなのかもしれないけど、この2人のこれからを知っている私からしたらちょっとドキドキするし、どこか居づらい感じになる。
こういう時はなるべく2人の邪魔にならないように、空気になるよう心がけている。


「あおいは?いる?」
「あ、私はいいや!」
「そう?」
「うん。…なーんか昨日からお腹痛くて…」
「拾い食いでもしたんじゃねーか?」
「工藤くんと一緒にしないでよっ!」
「俺がいつどこで拾い食いしてたのか教えてもらおうじゃねーか」
「いひゃいいひゃいいひゃい」


心がけてはいるんだけど、見事に空回りしている気もしなくもない日々を過ごしている。
今までこういうビミョーな関係の人たちと接していたことなかったから…。
本音を言うとこういう時どうしていいのかわかんないのが事実だったりする。


「芳賀さん、大丈夫?顔色悪いけど…」
「う、ん…、なん、か、お腹痛くて…」
「え!?…保健室行く?」
「…そう、する」


学校に着いて、授業を受けて。
あんまり動かなければ直るかなーなんて思っていたら、時間が経つごとにお腹の痛みが悪化して。
もうすぐ午後の授業、って時に限界まで来ていた。
クラスメートに言われて、ガタン、と席を立った。
瞬間、くらり、と世界が回った気がした。
遠くで人の声がするけど、何喋ってるのかわからない。
ただ遠のく意識の中で、オカシナ病気だったらどうしよう、って思った。


「気がついた?」


鼻がつんとする独特な臭いの部屋で、目が覚めた。
なんだっけ?オキシドール?
きっと保健室なんだろうなぁ、ってぼんやり思った。


「今まで酷くなかったの?」
「え?」
「生理痛」
「…えっ!?生理痛!?」


思い返せば、私こっちの世界に来て2ヶ月ちょっと。
生理はまだ1度も来てなかった。


「やだ、もしかして初潮?」
「あ、いえ、そんなことはっ!」


そう言われてみたら、ずっと続く鈍い下腹部の痛みは生理痛な気がする。
そうか、それで…。
でも元々重い方だったけど、ここまで酷い痛みは今まで無かった気がするけど…。


「あなた、夏前に転校してきた芳賀さん、でしょ?」
「え?あ、はい」
「ショーツやナプキン、少しならあげられるけど、1人で買いに行ける?」


最初何言ってんだろー、買いに行けないわけがない、って思ったけど。
よくよく考えてみたら、1人暮らしっていう私の情報を保険医が知っていてもなんら不思議じゃないわけで。
この人の中で私は「今」初潮を迎えた女の子になってるようだし、たぶん、そういう心配されてるんだろうなぁって思った。


「大丈夫です」
「そう?…私これから用があって家まで送れないけど…1人で帰れる?」
「え?授業は?」
「もう終わってる」
「えっ!?」


私そんなに寝てたのか!
我ながら寝すぎだ。


「1人で帰れます」
「…そう?家に帰ったらお腹や腰を温めてね」
「はい。ありがとうございました」


先生の好意でショーツ1枚とナプキン4個をいただいて保健室を出た。
カバンを取りに教室に戻る前にトイレに寄ったら、そりゃーもう悲惨な事態になっていた。
…保健室のベット汚してたら申し訳ない。
いやでもスカートが汚れてないってことは大丈夫かな?
まさかこんなに生理痛で悩まされるとは思いもしなかった。
今日はバ○ァリン飲んで早く寝よう。
ちょっと重い体にムチを打って、教室に向かった。

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bkm

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