キミのおこした奇跡


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新学期


big & long


「その地図で大丈夫?」
「うん、たぶん。わかんなくても日本語通じるから誰かに聞くよ」


割引き券をくれた子にソフトクリーム屋さんまでの地図を書いてもらった。
どうせならこの子と行けばいーじゃん?て話なんだけど、今日は学習塾の日なんですって!
中1から塾!
さすが私立!!
…でもこの地図ぶっちゃけわかりにく


「おい、帰るぞ」
「…私ソフトクリーム屋さんに行くので」
「だから連れてってやるって言ってんだろ!」
「…槍が降る」
「バカなこと口走るのはこの口か?」
「いひゃいいひゃいいひゃい」
「オメーがうちのクラスに来たせいであの後さんざんだったんだ!連れてってやるんだから奢れよ!?」
「ひゃい」
「ほら、行くぞ」


スタスタ歩くにゃんこに両手でたぶん赤いだろうほっぺを擦りながらついていった。
連れてってくれるのはありがたいけどさっ!
いちいちほっぺ引っ張らなくていいじゃん!
にゃんこめっ!!


「で?チラシは?」
「あ、うん、コレ」


靴を履き替えて生徒玄関を出たところでにゃんこに割引き券つきチラシを手渡した。


「…住所しか書いてねーじゃねぇか」
「だから蘭たち誘ったんだって!」
「オメー1人なら間違いなく迷子決定だな」


そんなこと言われなくてもわかってるよっ!
でもソフトクリーム屋さんに連れてってもらうんだから言い返せないっ!


「あの人だかりじゃねー?」
「ほんとだ!今の人ロングソフトクリーム持ってた!」
「うげぇ…。あんなに長ぇの食えっかよ…」


工藤くんは甘いのはあまり好きじゃないらしい。
だからやっぱりワサビ味にすればいいと思う。


「バニラとワサビ味ください!」
「誰がワサビ味食うんだよっ!?」
「え?工藤くん」
「ふざけんじゃねーっ!コーヒー味にしてくださいっ!!」


なら最初から言ってくれればいいのに。


「太くて短いのと、細長いのどっちがいい?」
「俺短いヤツで。芳賀は?」
「太くて長いモノが好きですっ!」
「「…」」


これこそ一石二鳥!


「いったいな!何すんのっ!?」
「オメーが何口走ってんだよっ!!」
「…はぁ?何が?」
「何がじゃねーよっ!このバカ女っ!ちょっと黙ってろっ!!」


工藤くんが少し赤い顔して怒ってた。
チラッとお店のお兄さんをみたら、肩を震わせて笑いを堪えていた。


「オモシロイ子だねー!確かに太くて長い方がいいね!」
「でしょう!?太くて長ければサイコーですよね!ほら、工藤くんが変なんだよ!」
「だからオメーは黙ってろ!!」
「痛い痛い痛いっ!!」


にゃんこに耳を引っ張られた。
耳が千切れるっ!!
ソフトクリームを買おうと並んでいたお姉さんたちのくすくす笑う声が、後ろから聞こえた。
にゃんこのせいでまた注目浴びてるじゃないっ!
もっと大人しくなってよっ!


「今日は特別に短いコーヒー味と、太くてちょっとだけ長いバニラ味ね」
「ありがとうございますっ!」
「…すみません」
「また来てねー!」


終始笑顔のお兄さんに手を振られ、食べながら帰ることにした。
バニラ美味しいっ!


「美味しいねー!」
「別にフツー」


…奢り甲斐がないよ、その言葉。
暑い時に美味しいのに。
歩いてると所々道路にソフトクリームらしい物体が落ちていた。


「この暑さで食うのが間に合わなかったんだろ」


もったいない、もったいない。
場所も覚えたし、もう少し涼しくなったらロングソフトクリームに挑戦しようかな!


「って、ほら!工藤くん垂れてる!!」
「あー?っと、うっわ!」
「あーあー、もったいない!ほら!!」
「ほらとか言って、何ちゃっかり指で掬って俺の食ってんだよっ!!」
「え?クリーム垂れ流しよりいいじゃん!」
「…オメー半分近く指で奪い取ってったじゃねーか」
「たまたまだって!あ!何すんのっ!?」
「…うげぇ、やっぱ甘ぇ…」
「信じらんない!!人のソフトクリーム食べたっ!!しかも文句つけたっ!!」


工藤くんが私の手首を掴んで、かなり豪快にバニラを奪い去っていった。
あり得ない!!
人のを奪い去るなんてっ!!


「ねぇ園子、いい加減止めようよ…」
「バッカねー!あんたあの2人がどんなデートしてんのか気になんないの!?」
「そりゃあちょっとは気になるけど、こういうの良くないよ…」
「さっきの見た!?あの工藤くんがあおいのソフトクリーム食べてたわよっ!?写メ撮りそびれたけどばっちり目撃したわっ!!またみんなに教えてあげないと!!」
「…だからいつもあの2人の噂はあっという間に広がるんだよね」


そんな会話が数メートル後ろでされてるとは知らず、私も工藤くんも溶けるソフトクリームの勢いに負けずにぎゃーぎゃー口論していた。

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bkm

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