キミのおこした奇跡


≫Clap ≫Top

ホビットカップル誕生


新たな決意


「はぁぁぁぁ…」


結局あの後も1張も的に届くことなく今日の部活が終わった…。
おかしい。
向こうの世界では5回に1回くらいはきちんと的に届いていたのにっ!
腕が落ちてるなんてっ!!
黒羽快斗が、怪盗キッドが遠のいた気がした。


「お!工藤ー!彼女も今お帰りだぜー!!」
「はあ?彼女って誰が」


とぼとぼと校門に向かって歩いていたら、私が来た方向とは逆方向から、サッカー部と思われる集団が騒がしくやってきた。
…チラッと声のした方に目を向けると、ほんとにちょっとした集団で、とても相手にできるような数じゃなかったから、そのままスルーして歩き始めた。
てゆうか今あの集団ににゃんこいた?
小さすぎて見えなかったわ…。
はぁ…。
…何度か主将がアドバイスしてくれたけど、なかなかうまく的までいかない。
前はどうやって的まで飛ばしたんだっけ?
何が違うのかわからない。


「おい」


今までとどこが違うんだろ。
あんなんじゃ来年の全中どころか、再来年の全中すら怪しい…。


「芳賀」


それってつまり、それだけ黒羽快斗が遠くなるってことで。
もし、今回の全中で優勝とかしちゃったら一気に脚光浴びてさ。
一躍時の人になっちゃってさ。
ただでさえカッコいいんだもん。
袴姿でキリッと弓を構える姿なんて好きにならないわけがない。
だからファンなんかも増えちゃってさ。
私なんて数多くいるファンの1人として埋もれちゃってさ。


「もう泣きそう…」
「は?なんで?」
「え?って、工藤くんいつからいたの?」
「…悪ぃかよ」


とぼとぼと下を向いて歩いてたら、いつからいたのか、隣に工藤くんがいた。
…声をかけられるまで気配に全く気づかなかったわ。
にゃんこ実は忍者?


「で?」
「え?」
「泣きそーって?」
「…工藤くんに関係ないよ」
「…」


にゃんこは確かに同じ顔なんだけどなー…。
でもやっぱり違うんだよなぁ…。
だってにゃんこだし。
だいたい!
怪盗キッドは女の子にヘッドロックなんて


「今日は?」
「え?」
「メシ」
「…お1人でどうぞ」
「…」


あまりの自分の下手さ加減に、ご飯作る気力も残ってないや…。
夕飯はコンビニ弁当にしようかな。
ああ、でもそうすると明日の朝が…。
朝はトーストでいっか。


「芳賀」
「何ー?」
「ついて来い」
「え?ち、ちょ、何!?」


言うが早いか、にゃんこは私の手首を掴んですたすた歩き始めた。
は!?ナニゴト!?


「ちょっと工藤くんっ!」
「仕方ねーから」
「え?」
「今日は俺がメシ作ってやるよ」
「…は?」


それっきり無言ですたすた歩くにゃんこに手首を掴まれてる私は、自分の意志とは関係なく歩かなければいけないわけで。
いつも以上に早い歩調に、工藤家に着く頃には軽く息が上がっていた。


「…工藤くん」
「なんだよ」
「メシを作ってくれるというお話でしたが」
「作ってやったじゃねーかよ」


工藤家のリビングで待つことしばし。
出てきたのはお湯入れたてのカップラーメンでした。


「これ私でも作れる…」
「そりゃ良かったな」
「…工藤くん、こんなのばっかり食べてるから背が伸びないんだよ」
「今日はたまたまだっ!!」


いやでもさっき棚開けてるところをチラッと見たら結構あったよ、カップラの買い置き…。


「3分経ったぜ?」
「…いただきます」


ちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるー


広い工藤家のリビングで、カップラーメンを啜る音だけがこだました。
…虚しい。


「工藤くんて、」
「あん?」
「食べてる物は別として、いっつもこうやって1人で食べてたの?」
「あー、まぁ…だいたいそうだな」


よくよく考えたら、この家は「豪邸」な部類なのに、その家でたった1人なんだよな…。
私には無理かもしれない…。


「私、」
「あ?」
「家庭科部も頑張るね」
「…おー」


自分がものすごく落ち込んでたハズなのに、この家でたった1人の工藤くん見てたら(しかもこんな食生活!)私より不憫な人を発見してしまった気がした。
工藤くんが私の世話を焼くのは、自分が寂しいからなのかもしれない。
だってよく考えたら13歳でこの豪邸で1人暮らしって!
私より絶対可哀想っ!!


「…泣くほどウメェか、そのラーメン?」
「う、うんっ!!」
「…」


元々地に落ちてたところに、変なスイッチが入ったらしい私は、何故か工藤家リビングでカップラーメンを食べながら号泣した。


「工藤くん!」
「なんだよ」
「私、料理絶対上手くなるから!」
「…いーことだな」
「うん!毎日は無理でも工藤くんに美味しい料理作るからっ!」
「…美味しい料理が出来るようになってから言え」
「わかった!待ってて!!」


最初に私を夕飯誘ってくれたのは、やっぱり自分が寂しいからなのかもしれない。
弓道はもちろん頑張る。
でもまともな料理が食べれるように料理もほんとに頑張ろう。
弓道漬けの日々に料理もプラスされ、明日からは忙しい毎日になりそうだった。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -