キミのおこした奇跡


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ホビットカップル誕生


今1番ホットなホビットカップル


「毎朝一緒に来てー」
「毎日一緒に帰ってぇ」
「携帯もお揃いなんだよ!」
「夕飯も一緒に食べてるみたいだよね!」
「「「あの工藤くんとどうやって仲良くなったの!?」」」


帰りたいです、お母さん。
鈴木マシンガン園子の威力はそりゃあスゴいもので。
今日は朝からクラスメートたちがこんなです。
にゃんこは自分が背が低いからモテない的に言ってたけど…。
どこらへんが?
何この、今1番ホットなネタです的扱い。
改めてにゃんこ人気を知った気がした。
…私がこんなってことは、工藤くんも多かれ少なかれこうなってんのかな。
蘭とのこれからのこと考えると申し訳なくていたたまれないや…。


「何度も言うけど私と工藤くんはそんなんじゃないからね?」
「何言ってるのー!」
「そうだよ、今さら否定しなくても」
「いやほんとになんでもないから…」
「大丈夫!みんな応援してるから!」


別に応援されなくてもいいんだけど…。


「でも工藤くんの彼女が芳賀さんで良かった!」
「うん?」
「毛利さんだったらなんかちょっとなぁ…って思ったけど」
「蘭が何?」
「毛利さんも可愛いんだけどね…」
「あ、わかるそれ!毛利さんも可愛いんだけどさぁ、」
「うん、蘭は可愛いよ?それじゃダメなの?」
「工藤くんの彼女が毛利さんだったら、毛利さんが良くて私はダメなの?って思ったと思う」
「…私なら?」
「芳賀さんならなんて言うの?工藤くんと並ぶと妖精さんのカップルみたい!」
「よ、妖精さん?」
「わかるわかる!なんかねー、芳賀さんと工藤くんは小人族のカップルみたいで見てると癒されるぅ!」
「小人族…」


それにゃんこが聞いたらぶちギレるよ、きっと…。


「毛利さんと工藤くんよりはお似合いだと思う!」
「…嬉しくないわ、それ」


ほんとに。
にゃんことじゃなくて、黒羽快斗とお似合いになりたいんだけど。
まだまだ続くガールズトークにため息を吐きながら教室から抜け出した。
もう否定する気力もないや…。


「「あ」」


教室から抜け出して廊下をふらふらしていると、ホットなネタの片割れがいた。


「…俺が言いてぇことわかるよな?」
「はい、すみませんでした」
「どういうことだ、あれは?」


そしていきなり説教が始まりました。


「で、でもね!あれは私も被害者で園子がっ」
「オメーが園子にベラベラ喋ってなきゃこーならなかったんじゃねーのか?」
「…すみませんでした」
「だいたいなんだよ、ホビットカップルって!意味わかんねー」
「…え?ホ、ホビットカップルなんて言われたの?」
「おー。オメー意味知ってっか?」


なんてチャレンジャーなヤツだ…。
工藤くんにホビット…。


「工藤くん児童文学とか読まなそうだもんね…」
「児童文学?まぁ…全く読まねぇわけでもねーけど?それがどうした?」
「…私に怒らないでね」
「あ?…なんだよ、言ってみろ」
「…ホビットって、児童文学に出てくる小人族のことだよ」
「…」
「…」
「…」
「わ、私が言ったんじゃないよっ!!痛い痛い痛いっ!!」


怒らないでって言ったのに!!
ヘッドロックしてきやがった!!
しかも頭を拳でぐりぐり!!!
痛いってっ!!!


「こんなところでじゃれてるなよー!」
「ほんっと仲が良いね!」


その声にハッとして頭をロックされながら周囲に目をやると、また人だかりが…。
ああっ!!
頭がさらに絞まっていくっ!!!


「テメーら見せもんじゃ、ねーーーっ!!!!」


にゃんこの怒り爆発。
でも1番の被害者は頭をロックされて逃げそびれた私だったっていう…。
すごい迷惑な話だ。


「じゃあ今日からよろしくね」
「はい!よろしくお願いします」


あの後チャイムという正義のサイレンのお陰で無事解放され、教室に戻るとさらににやにや度が増したクラスメートたちに出迎えられた。
いつまで続くんだろ、あの顔…。
その後はなるべく教室から出ないようにして、なんとか放課後を迎えることができた。
そして待ちに待った弓道部初日!!
ホビットカップルなんて知らないっ!
私は弓道を頑張るのっ!
黒羽快斗に出逢うためにっ!!


「芳賀さん経験あるって言ってたよね?」
「はい!」
「じゃあ試しにどんな感じか1張射ってくれる?」
「はいっ!!」


私の今のこの頑張りで、明るい未来が待ってるんだからっ!!


へろへろへろーー…


「弓道初めてどのくらいなんだっけ?」
「…2ヶ月です」
「…来年は行けるといいね、全中」
「…はい」


気合だけでは的を射れないなんて知ってたけどさ。
気合で2次元に来れたんだから、もしかしたらなんとかなるかもとかちょっとだけ思っちゃったけどさ。
料理のことといい、人生そう甘くはないようで。
「的を射る」なんて言葉あるけどさ。
そもそもその「的」まで辿りつかないって話で。
これからみっちり、弓道漬けな日々になる予感がした。

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bkm

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