キミのおこした奇跡


≫Clap ≫Top

ホビットカップル誕生


最新式マシンガン、その威力


結局マズイだなんだと言いつつも、工藤くんはレモンパイを全部食べてくれた。
自分で作っておきながらなんだけど、私があのレモンパイ出されたら、一口食べて突き返すと思う。
帰りは昨日見つけた本をやっぱり買いに行くとかでマンション前まで一緒に行った。
…工藤くんはなんだかんだで良い人なんだと思う。ほんとに。
にゃんこみたいで可愛いし、口の悪ささえなんとかすれば無敵?
ああ、でも肝心の身長がっ…!
今度背が伸びる食材調べてみようかな。
私もせめて160くらいほしいし。


「おはよ、工藤くん」
「おー」


一緒に登校するのがすっかり日課になりつつある。
まぁ行き先同じだし、いっか。


「おい」
「はい?」
「持て」
「…なんで?」
「昨日あり得ねぇくらい酸っぱいレモンパイ食わせたのどこのどいつだ?」
「…いやいやいや!工藤くん完食したじゃん!」
「バーロォ、出されたものはどんなに不味くても残さず食うもんだろーが!」


そう言えば工藤くん親子丼も完食したもんな…。
でも「どんなに不味くても」は余計だと思う。
ちっ。朝から舌好調じゃないかにゃんこめっ!


「失敗作食ったんだから荷物持て」
「違うよ!」
「あ?」
「あれはあの酸っぱさが売りのレモンパイなの!」
「…この口か、バカなこと口走るのは」
「いひゃいいひゃいいひゃい」
「ほんっと、よく伸びるなオメーの顔」


ムニューっとほっぺを引っ張りやがった!
にゃんこのくせにっ!


「…なんだこの手」
「わひゃひもひっぱらひぇへ」
「悪ぃな、俺人間の言葉しゃべれねぇヤツと交信できねぇんだ」


私も工藤くんのほっぺを引っ張ろうとしたら手を叩き落とされた!
くぅっ!!


「新一!あおい!おはよう!」
「おー」
「いったいなぁ!もう!!…蘭おはよ!」


工藤くんの手を振り払って、声がした方を振り向くとニッコニコ笑顔が眩しい蘭がいた。
…いつも以上に笑顔が眩しいのは気のせい?


「じゃあ俺」
「先に行くんだよね?後でね新一」


工藤くんはチラッと私たちを一瞥した後、さっさと歩き出した。
…いつかあのほっぺを思う存分引っ張り回してやるっ!!


「あおいも行こう?」


柔らかく笑う蘭に促されて学校に向かう。
ん、だけど…


「ねぇ、蘭…」
「んー?なにー?」
「なんかイジョーにみんなの視線を感じるのはなぜ?」
「え?そーお?」


帝丹生と思われる人たちとすれ違うたびに、なぜだか見られてる気がするんだけど…。
気のせいかな?
工藤くんに言ったらうぬぼれんな、バーロォ、とか言われるんだろうな…。


「いややっぱり気のせいじゃないって!」


教室に着く頃にはあからさまにみんなが私を見ていることに気がついた。
なんなのっ!


「あ、芳賀さんおはよー!」
「…おはよ」


このクラスメートたちもニヤニヤしてるし…。


「ねぇ何笑ってるの?」
「えー?そんなの決まってるじゃない!」
「…なに?」
「芳賀さんてば、なんだかんだ言って工藤くんとラッブラブなんだもーん!」


…は?


「ごめん、何?」
「聞いたよ!毎日工藤くんの部活終わるの待ってるんだって?」
「しかも手料理用意して!」
「芳賀さん健気ー!」
「工藤くんはそういう子が好きだったんだねぇ…。私とは全然違うからもうバッサリ諦めがつくよ!」


この会話を聞いて、心当たりが1つだけ、いや、1人だけいた。
昨日帰りに出会った友人。
それなら朝蘭がいつも以上に笑顔が眩しかったのも納得が行く。


「…どこで聞いたの、ソレ」
「昨日の部活帰りに鈴木さんがみんなに喋ってたよ!」


やっぱりっ!!
最新式マシンガンは、正門前で来る人来る人を呼び止めぶちかましたらしい。
…園子めっ!
後で仕返しに行ってやるっ!!
この日を境に、みんなが私を「季節外れの転校生」から「工藤くんの公認彼女」という目で見るようになったのは言うまでもない。
…にゃんこに当たられるのは、私じゃないことを願おう。
そう思いながら今日の授業が始まった。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -