■初メール
「では、こちらに保護者の方のサインをお願いします」
私がいた世界のケータイとは微妙に違う気もしなくもない、こっちの世界のケータイに迷っていたところ、工藤くんがこれにしろってオススメしてくれたものを買った。
工藤くんと同じ機種だからわからないところは教えてやれるからって理由だそうだ。
ぶっちゃけ説明書?何ソレ?って人間の私にとってはありがたい提案だったからその言葉通りにした。
「良かったのぉ、あおいくん」
「はい!ありがとうございました!」
「新一とお揃いじゃから、わからんことがあったら聞いたらいい」
「はい!」
そう言われてよく考えたら、工藤くんとケータイお揃い?
…明日の学校がっ!
でもまぁ工藤くんも気にしてないみたいだし、いっか。
「ほら、買ったヤツ出せ」
「え?」
「え?じゃねーよ。登録しねーと意味ねぇだろ?」
「あ、ああ、そうだね」
ピピピッと、慣れた手つきで工藤くんがボタン操作をする。
どうやら私のこっちの世界での初ケータイの最初の登録者は「工藤新一」らしい。
「俺のケータイと、うちの家電入れといたからなんかあったら電話しろ」
「…ありがと」
…世話好きで良い人なんだよなぁ、「工藤新一」は。
「博士、俺来たついでに本屋寄って行きてぇんだけど」
「おお、構わんがあおいくんはどうする?」
「あ、私ここで待ってていいですか?」
初ケータイを早く弄りたい!
「それなら30分後にここに集合でどうじゃ?」
「博士どこ行くんだよ?」
「発明で使う部品の買い出しじゃよ」
「じゃあ、私ここにいますから、30分後に!」
ショッピングモールの一角にある携帯shopからそれぞれ好きな場所に散って行く工藤くんと博士の後姿を見送り、ケータイを取り出した。
やっぱりニューケータイってテンションあがるっ!!
ええっと、こ、れ、が、メール作成画面、で、こう、や、って…
「出来た!」
試しにメールを作成したけど、今アドレス知ってる人は1人しかいないから、さっそく送ってみることにした。
to :工藤新一
sub :初メール!
本文:メール練習中!ちゃんと届いてる??
メールの返信がこんなにドキドキするのは初めてだ。
返事が来ないかそわそわ、あ!来た!
from:工藤新一
sub :Re>初メール!
本文:おー
…は?
それだけ?
初メールの返信が「おー」だけ?
絵文字も顔文字もなく「おー」だけ?
あり得なくないですか?
to :工藤新一
sub :ちょっと!
本文:人が真剣に練習してるんだから、もっと真剣に返信してよっ!
にゃんこのくせにっ!
メールくらいつきあってくれてもいいじゃんっ!!
from:工藤新一
sub :Re>ちょっと!
本文:ウルサイ
う、うるさい!?
にゃんこのくせにうるさいっ!!?
to :工藤新一
sub :Re>Re>ちょっと!
本文:うるさいって何!?少しくらいつきあってくれてもいいじゃんっ!!
ピッと送信ボタンを押して携帯を閉じる。
私が座ってるベンチの前にあったフレッシュジュースのお店で飲み物を頼むために立ち上がった。
フレッシュなジュースでこの気持ちもフレッシュにしよう、うん。
…工藤くんは良い人って思った矢先にこれだ。
あんなんじゃ背高くなっても蘭に好きになってもらえな
「いったい!!!」
「いちいちメールしてくんじゃねーよっ!!!」
物凄い勢いで走って来たらしい工藤くんに後ろから頭をどつかれた。
あり得ないっ!!
「何すんのっ!?」
「オメーが何してんだよっ!ゆっくり本選べねーだろーがっ!!」
「本!?本なんていつでも選べるでしょっ!?私の初メールにつきあってくれてもいいじゃん!!」
「だからつきあってやっただろ!?しつけーんだよオメーはっ!!何回初メール寄越す気だ!?」
「しつこいっ!?まだ3回しか送ってないでしょ!?」
「1回送れば十分だろーがっ!!3回も送ってくんじゃねーよっ!!」
くすくす笑う声に、はっとして周りを見ると、学校の時のような人だかりができつつあった…。
「可愛いカップルー!」
「あれ帝丹中の制服でしょ?」
「女の子もちっちゃくて可愛いけど、彼氏の方も可愛いー!」
「私たちが中学生の頃あんな男の子いなかったよね?」
オネーサンたち、丸聞こえです…。
「…行くぞ」
「うん…」
工藤くん、顔赤いなぁ、とか思ったけど、きっと私の顔も赤いはずだからツッコまないことにした。
「…あ、博士?待ち合わせ場所変更。え?いや、別に…とにかく車に先行ってっから、あん?おー、一緒…ああ、じゃあそういうことで。…ほら、行くぞ」
「うん」
赤い顔した2人そのまま無言で、ビートルに向かった。
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bkm