キミのおこした奇跡


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噂の2人


モーセ工藤降臨


朝学校に来たら、クラスメートの私を見る目がおかしい気がした。
なんていうか…興味津々に転校生を見る、っていうのとはまた違った視線を感じる。
なんで…?


「芳賀さんもひどいなー!」
「え?」
「言ってくれればもちろん応援したのに!」
「…うん?」
「でもやっぱり彼女がいたのかと思うと、ちょっと残念な気持ちはあるよねぇ…」
「…何が?」
「「「芳賀さん工藤くんの彼女なんでしょ?」」」


そのネタ、昨日終息したんじゃないの?


「だって!あの工藤くんが部活終わるの待ってろって叫んでたらしいじゃん!」
「あ、それは」
「私スーパーに2人で食材買いに行ったらしいって聞いたよ!」
「あ、それも」
「え!?工藤くんて1人暮らしでしょ!?…まさかもう芳賀さんとそんな仲にっ!!」
「きゃーー!ねぇねぇ!工藤くんどうだった!?」


いや、何が?


「工藤くん結構モテるし、経験あるのかなぁ!?」
「んー、でもあの工藤くんなら、好きな子以外はってヤツかもしれないよ!?」
「えー!?ねぇ芳賀さん!」
「「「工藤くんはどっち!?」」」


にゃんこが、女の子を苦手な理由が少し、わかった気がした。


「…私、ちょっとトイレに」
「あ!逃げないで!」


逃げさせて!!


「芳賀いるかー?」


出た、元凶っ!
教室中がざわついたのがわかった。
転校生に向ける好奇な目以上の好奇な目を向けられた。


「ちょっと来て!!」
「あ、おい、ちょ、」


昨日とは逆に、私が工藤くんの手を引っ張って、人気のなさそうなところに連れて行く。
…といってもそんなところ知らないから階段の踊り場が終着点だった。


「いってぇなぁ、なんだよ」
「学校で私に話しかけないでっ!」
「…奇遇だな、俺もそれには賛成だ」


今わざわざうちの教室に話かけに来たじゃんっ!!


「で!?」
「あ?」
「用件!なんか用があって来たんでしょ!?」
「ああ、オメー放課後空けとけ」
「…はあ?私今日から部活が」
「断れ。こっちの用事が緊急」
「断れー!?入部初日にそんなことできるわけ」
「ケータイ!買いに行くから空けとけよ?」
「…え?」
「俺んちの隣に住んでる阿笠っておっさんに頼んだら快く引き受けてくれたから。でも明日以降はちょっと家空けるらしーから今日買いに行くぞ」


博士!
こんなところで博士の名前がっ!


「じゃ、そういうことだから放課後空けとけ。俺もついてってやっから」


そう言ってにゃんこは立ち去ろうとした。
ん、だけど、


「2人でケータイ買いに行くんだって!!」
「やっぱり工藤くんと芳賀さんつきあってんだよっ!!」
「なんだ、工藤女に興味ねーみたいなこと言ってたくせに!」
「コイツはそういうヤツだよなー」


1年の教室の端にある階段の踊り場で話していたものだから、気がついたら人だかりが…。
あ、工藤くんがぷるぷる震えてる。


「うるせーーー!!!どけ!邪魔だっ!!!」


お怒りのにゃんこにさっと、道が開く。
後に残された私は、モーセのように工藤くんによって真っ二つに別れた人だかりに、それまで以上の好奇の目を向けられた。

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bkm

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