キミのおこした奇跡


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噂の2人


意外と世話焼き


「芳賀、オメー明日は?」
「え?」
「学校。道覚えたのかよ?」
「…1日で覚えられたら迷子人口減るよ」
「そんなとこだろーと思った。オメーあんま頭良くなさそーだし」
「ウルサイ」


事実なだけにそれ以上言い返せない自分が切ない。
惨い親子丼をなんとか片付けた後、工藤くんが帰る直前で聞いてきた。
まぁ…、地図もらったしなんとか


「明日も今日と同じ時間な」
「え?」
「学校行く途中だし。マンション前にいれば一緒に行ってやる。いなかったら知らねぇ。勝手にしろ」
「…」
「…」
「…」
「なんだよ」
「工藤くんて女の子苦手って言うわりに面倒見いいよね」


どこらへんが苦手?
そう思えるくらい、面倒見が良いと思う。


「…女は苦手だ」
「うっそだー」
「嘘じゃねーよ。キャーキャーいちいちウルせぇし、すぐ泣くしだいいちっ」
「…だいいちなに?」
「…」


工藤くんはしまった!って顔をしてる。
まだ他に理由があるのか?


「ねぇ、だいいちなに?」
「…だいいち、」
「うん」
「…工藤くんカッコいいとか、騒いでんのはアイツらなのにっ」
「うん」
「…」
「…」
「…」
「なに?」
「…工藤くんはカッコいいけど、もう少し背高い方がいいとか好き勝手抜かしやがるっ!!」
「…」
「俺も好きでちいせぇわけじゃねーってのっ!!」


なんとも虚しい苦手理由に、どうツッコミをいれていいのかほんとに悩む…。


「…大丈夫、まだまだ成長期なんだから」
「だよなっ!?俺はこれからだっ!!」


にゃんこにはほんっとーに、身長ネタはタブーらしい。
それがよくわかった。


「…でもじゃあ毛利さんは?女の子だけど仲良いんでしょ?」
「アイツは幼馴染だし。それに蘭はきゃーきゃー言わねぇし」
「ふぅん…」
「まぁ、どっちかってーと、ぎゃーぎゃー世話焼いてくるんだけどな」
「でも好きなんだ?」
「…は?」
「好きなんでしょ?毛利さんのこと」
「俺が蘭を!?あり得ねぇ…」
「…違うの?」
「違ぇ。…俺は俺よりデカイ女は嫌だ」
「…小さい子見つかるといいね」


ほんっと、心狭いな、このにゃんこ。
うーん、じゃあ工藤くんの成長を待って、工藤くんが人並みくらいの身長になってから毛利さんに恋するのかな?
…いつの話だ、ソレ。
少なくとも今のこの身長見たらあと10年くらい先な感じがするんだけど。


「まぁ別に?今は園子が毎日ぎゃーぎゃー言ってるみてぇに誰がいいだとかなんだとか興味ねぇし!興味あんのはサッカーと推理!」


じゃあな!と言うだけ言って颯爽とにゃんこは去っていった。
興味ない、ねぇ…。
まぁ…。
好きな子より背低かったらアピールしづらいってのはあるんだろうな…。


「あの2人は高2になってももっどかしー両片思いだったしね」


工藤くんが成長するのと、毛利さんが恋心に気づく時が同じだけ時間かかるのかもしれない。
ま、私には関係ないからいいや。
私には明日からの弓道部が大事!!
いや、でも明日もご飯作んなきゃなんだよな…。
家庭科部とかあるかな…。
教えてもらえて即実践できるっていう一石二鳥な部活なんだけど…。
明日工藤くんに聞いてみようかな。


「こういう時に携帯ないと不便」


クラスメートで授業の合間にメール打ってたコがいたから、「携帯」というものは存在してるみたいだけど。
手元になきゃ意味がない。
ほしいけど、未成年は保護者の同意書が…。
なんとかしたいなぁ…。


「工藤くん、おはよー」
「おー」


昨日の朝と同じ時間にマンション前にいたら、昨日と同様に工藤くんに回収された。
昨日と違ったのは爽やかオーラが出ていなかったこと。


「寝不足?」
「あー…明け方まで本読んでて」
「わかった、推理小説だ」
「…オメーよくわかったな。ちょっと探し物してたら読んだことねぇ本見つけちまって、そのまま読み始めたら気がついたら朝になってた」


ほんとに推理小説読んで徹夜するような人なんだ…。
…なんというか、うん。
バカだ、このにゃんこ。


「ほら、コレ」
「うん?何?って、重っ!!」


軽々とほら、と渡されたわりにはずっしりと来たもの。
それはかなり分厚い本で表紙を見たら「これ1冊で安心!簡単!基本料理大図鑑!!」と書いてあった。


「母さんが海外行く前に一番見やすくて親切な本だって置いてったヤツ」
「…それが何故ここに?」
「オメーにやる、ソレ」
「…いやいや、工藤くんがこれ見て料理覚えなよ!」
「俺は別にいーんだよ!蘭も博士もいるし。でもオメーは自炊できねぇと死ぬぞ?」
「死なないよ!!」
「よっく言うぜ。親子丼に卵の殻入れたヤツが」
「…お米の水の量間違えてお粥にした人に言われたくないんだけど」


ほんとに惨かったから、あの親子丼は!


「とにかく!この間蘭もそれ見てすげぇわかりやすいって言ってたし?なんもねぇよりいいだろ」
「…そして私だけ料理の腕が上がって、工藤くんはまたお粥のご飯を作る、と」
「そういうことは料理の腕前あげてから言えっ!!」
「いひゃいいひゃいいひゃい!!」
「おもしれーくらい伸びるなオメー」
「しゃわんないでっ!!」


にゃんこのくせに、思いっきりほっぺつねりやがった!
なんかすっごい悔しいんだけどっ!!
たかが7センチのくせにっ!!


「あ、そういやオメー携帯」
「なに!?」
「…怒ってんじゃねぇよそれくらいで。心せめぇ女だな」


あんたに言われたかない!
って、思うのは私だけじゃないはずだ。


「…昨日それ見つけて連絡しようと思ったら番号知らなくて出来なかったんだけど。オメーんち家電もなかっただろ。携帯は?」
「私携帯ないよ?」
「は?ねぇの?」
「うん、だって私同意書にサインしてくれる保護者いないし」
「…」


まだほっぺがじんじんする。
携帯については、ほんと、どうにかしたいんだけど、私の後見人とか言う人と連絡も取れない、っていうか取りようがないし、たぶん持てないんじゃないかなぁ?


「新一!芳賀さん!おはよう!」
「おー」
「毛利さんおはよ!」
「同じクラスじゃなくて残念だったね」
「うん、私も毛利さんと同じクラスが良かった」
「クラス違うけど今度私の親友紹介するね!」
「園子ちゃん、だっけ?」
「そうそう」
「おい」
「あ、新一何?」
「俺先行くからソイツ連れて来い」
「…はあ?工藤くんも一緒に行けば」
「わかった。また後でね」
「おー」


…え?毛利さん、ここでお別れするの!?
だって行き先同じだよ!?
一緒に行けばいいじゃん!


「ごめんね、新一マイペースだから」


毛利さんて、まだつきあってもいないのにすでに尻拭いさせられてるんだ。
…不憫!


「じゃ、学校行こう?」


今日も毛利さんの柔らかい笑顔に促され、学校の門をくぐった。

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bkm

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