全国大会制覇

冬休みに入り、クラスメイトと会うことはほぼなくなった

けれど毎日学校に行ってみんなの練習を見守る



いよいよ全国大会の本戦が始まる

先輩たちにとって最後の試合
























結果は立海が全国大会を制覇

立海が全国1位のテニス部


今日はそれを記念して部室で祝全国制覇、そして先輩たちの追い出しパーティを行なっている


「丸井の手作りケーキはうまいな!」

先輩たちが褒めているのは丸井くんが作ったケーキ

チョコペンで「祝!日本一!」と書いてある



「桜宮も遠慮なく食えって!」

『うん...ありがとう!』

「君の支えがあって俺たちは頑張れたんだ」


そうやって優しく微笑む幸村くん

『そんなことないよ、みんなが頑張って練習した成果だよ』


みんな休むのも惜しまず練習してきた

その努力もあってついに頂点に立つことができた


私はただ、みんなの練習のお手伝いをしただけ

けれど少しでも役に立てたなら嬉しいな



「少しも役に立ってないって思ってんだろい?」

『え...』


どうして口に出してないのにわかったの...

丸井くんまでエスパーになったの?



「お前のその顔見ればわかんだよ。自信無さげに微笑むから」

そんなつもりはなかったんだけど


「ふふ...桜宮さんを常日頃見ているブン太にしか分からない事だね」

「全くだな」

幸村くんと真田くんがそう言うと丸井くんは顔を赤くした


「...っ当然だろい!俺と桜宮はクラスメイトだし!」

「2年に上がる時離れたらどうするんじゃ?」





クラス替え

それは学校生活を送る上で決して避けることのできない行事



新しい友達、新しいクラスメイト


新しい出会いがもうすでに目の前まで迫ってきていた



今までその事について考えなかったのは“今という時間”がとても楽しくてかけがえのないものだから

ずっと今のままがいいなんてどこかで思っていたから...




「仮にクラス離れたとしてもお前たちは友達のままだろう」

「ジャッカル....」


友達のまま

丸井くんはそう思ってくれるのかな?




「ジャッカルのクセにいい事言うじゃねえか、なぁ桜宮?」

『.....私、丸井くんと友達のままでいていいの?』

「何を今更...当然だろぃ?クラス離れても学校離れても俺たちはずっと友達だぜ!」


その丸井くんの言葉はとても暖かい


「ブン太だけじゃないよ?俺だって君の友達であり仲間だ。これからも一緒に屋上の花壇を綺麗な花でいっぱいにしようね」

「こんなブン太だがこれからも仲良くしてやってくれ」

「親みたいな事言うんじゃねえ!」




『あははっ!』


やっぱり丸井くんとジャッカルくんのやり取りは面白い

親子みたいでいつ見ても仲良いなって思う



「ようやくみんなの前で笑うようになったな」

「素敵な笑顔ですね」

「ピヨッ」

「桜宮も立派な俺たちの仲間だ。これからもよろしく頼む」

そう言って私に差し出したのは


『真田の書...?』

「あ、俺もそれ持ってるぜ!俺のは確か小欲ち...何だっけ?」

『小欲知足かな?』

「そうそうそんなだった!」


丸井くんは小欲知足か...


欲をあまり持たず、今ある分で満足しろって意味だよね、ざっくり言うと


丸井くんに必要なことなのかな?


「桜宮のは何だ?」

表紙を開いて見るとそこには____________________






















“一期一会”



その言葉をみんなが覗き込む


「一期一会か、桜宮さんらしい言葉だね」

「その日、その瞬間が全て一度きりであり、それを心得た上で過ごすべし、という意味ですね」



今こうしてみんなとこの瞬間を生きているのは今日一度限り

引退する先輩とも今日が最後だろう


「桜宮にピッタリじゃん」

そう言って私の肩に腕を回す丸井くん


思ったよりすぐ近くにある丸井くんの横顔

突然のことにびっくりしていると



「こういうのに慣れてないのか?可愛いとこあんじゃん」

丸井くんからの”可愛い”という言葉


『...そんなことないよ』

「これからもよろしくな?」



一期一会という言葉


その日、その瞬間は一度きりであり、その事をわかった上で今を大切に過ごすということ



丸井くんと笑い合う瞬間

みんながテニスをしている瞬間

撫子ちゃんと話す瞬間



その全てが私にとってかけがえのないものであり、一生の宝物


どうか、来年もその先も笑顔が溢れていますように

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