優しい人

いつもなら一緒にテニスコートまで向かうのに今日はそそくさとどこかへ行った桜宮


「丸井くん!これもらってー!」

「サンキュー!」


その途中にお菓子をもらうのは日常茶飯事

そしてその場で食う







テニスコートに着くと幸村くんがいた


「なあ幸村くん、桜宮は?」

「一緒じゃないの?」


そこまで心配してなさそうな顔してっから絶対何か知ってるだろい...


「ホームルーム終わるなりすぐにどっか行っちまったんだ」

「そうか...きっとすぐ帰ってくるよ」



そう言って幸村くんはジャージを肩にかけコートへ向かった


「なあ仁王、桜宮知らねえか?」

「屋上から見とったが、校門を出て駅の方へ向かって行ったぜよ」


あいつって電車通学じゃねえよな...?

一体どこへ行くってんだ




それから1時間練習しても桜宮は帰ってこない

家に帰ったとは思えねえし








すると小走りでこちらへ向かってくる女の子がいた

よく見てみるとその子の手にはケーキ箱のようなものがある



「桜宮...?」


よく見ると桜宮が何か箱を持ってこちらに向かってくるのが確認できた



『丸井くん!』


俺の目の前で立ち止まり息を整える

「大丈夫かよい?」



『これ...!』


そう言って手渡してくれたのは俺の行きつけの店の袋

『あったよ...!生チョコ大福!』




生チョコ大福


冬限定スイーツ、そして数量限定

部活が終わる頃にはいつも売り切れてて購入出来ずに終わると思っていた



『丸井くん喜ぶと思って..!』


俺のために?


桜宮は朝から俺の異変に気付いて話を聞いてくれた

けどまさか買ってくるとは思いもしなかった



桜宮の行動力に驚いていると


『丸井くんが悲しんでいると私も悲しくなるから...丸井くんには笑顔でいてほしいな』


そう言って優しく微笑む桜宮




「マジでサンキューな」

一気にやる気が出てきた



桜宮が苦労して手に入れてくれた生チョコ大福

絶対ウマい



その後は調子が良くなり幸村くんも褒めてくれた




「調子が戻ったみたいだね」

「おう!桜宮のおかげだぜ!」

「優しい子だね」



優しい眼差しでそう呟く幸村くん

「羨ましいよ」

「ん?何がだ?」

「ふふ、何でもないよ」







練習も無事に終え、ようやく生チョコ大福にありつける

箱を開けるとそこには大きな大福が入っていた



隣で嬉しそうに微笑む桜宮


「食うか?」

『私はいいよ!丸井くんのために買ってきたんだから丸井くんが食べて!』


んじゃ遠慮なく...











「うめえええええ!」


生チョコが程よく苦くて口の中でとろける

からの餅の皮が最高にうまい!




「マジでサンキューな!」



何かこんなやり取り前にもあった気がする




それは俺と桜宮が初めて会って言葉を交わした日




朝飯食えなかった俺にハイチ○ウをくれた桜宮


あの日から俺は桜宮が優しくていい子だって知った

人のために動けるすげえ奴だって



そしてどこか自分に自信がなくて暗い印象を持たせてしまう

だからクラスのみんなに何考えてるか分かんねえとか怖いとか誤解されてしまう




そんなことねえのに

こんなに優しいヤツなのに勿体ねえなって思う



「胸張って過ごせよ」



何のことかわかってないような顔を見せるけど
俺はこういう気遣いをできる人結構好きなんだぜ


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