執念

文化祭も終わり、とうとう冬休みが近づいてきた

丸井くんたちは全国大会の本戦を迎えることになっていた



ある時の昼休み

以前幸村くんから言われていたマネージャーをするということを正式に伝えた


「君が仲間に加わってくれてとても嬉しいよ」

そして新しい仲間である柳生くん


「よろしくお願い致します、桜宮さん」

いかにも紳士ですというオーラがする



「早速で悪いんだけど君には全国大会に同伴してもらおうと思っているんだ。俺たちの晴れ舞台を見てほしいしね」

『うん、わかった』


先輩たちの最後の試合

そして幸村くん、真田くん、柳くんたちの晴れ舞台
しっかりサポートできるように頑張ろう





その日の放課後からテニス部のマネージャーとして初仕事


私が熟す仕事はドリンク作りやタオル配り、ボール拾い等

あとは部誌の確認


結構部誌を見るのが楽しかったりする


みんなの練習の感想に返事を書いたり、どんな気持ちで練習していたのかを見ることができる


このやり取りがとても楽しい













翌日、朝練も参加させてもらった


「今日はここまで」

幸村くんの合図で朝練を終えて、丸井くんと一緒に教室へ向かう



『丸井くん、ちょっと元気ない?』

「そうか?」


『切羽詰まった顔してたよ...何かあったの?』



朝練でもミスが目立っていたし何かあったに違いない


「実はさ__________






























季節限定のスイーツ、今日が最終日なんだ。」














はい.....?






「冬限定の生チョコ大福、まだ食えてねえんだ」


生チョコ大福....?

季節限定のスイーツが食べれてなくて切羽詰まった顔してたの?




「今日は練習あるし買いに行けねえだろい?いつもは季節限定スイーツは欠かせず食ってんのに今回は食いっぱぐれちまうんだぜぃ?」



丸井くんのスイーツに対する執念はすごいんだなと実感した

それにそんな悲しそうな顔をされると何とかしたいなって思う....



丸井くんは練習を欠かすことはできない

うーん...



これは幸村くんに要相談だな


『元気出して丸井くん...!私何とかしてみるよ』

「気遣わなくて大丈夫だぜ?今回は仕方ねえよ」



苦笑いする丸井くんは見ていられなかった






授業後もどこか上の空な丸井くん


休憩時間中に幸村くんの教室へ向かう



「どうしたんだい?」

『あのね...』




丸井くんの様子がおかしいということ

そしてその理由を幸村くんに伝えた





「さすがだね、君も気付いていたんだ」

『幸村くんも気付いていたの?』


「丸井は分かりやすいからね、ワガママな子だよね」


丸井くんは弟が2人いるからお兄ちゃんとしてしっかししなくてはと思っているんだろう

プロレスごっこに付き合ったりしているし

だから誰かに甘えるということをしたくても出来なかった



「本当に優しいね、桜宮さんは」

『え...』

「しっかり部員のことを見ているし様子の変化に気づくことができる。誰にでもできることじゃないよ」



幸村くんが優しく微笑む

「君が何を考えてどうしたいのかは分かっているよ」


やっぱりエスパーな幸村くん...

きっと幸村くんには一生敵わないだろう


『じゃあ...』

「行っておいで、俺もブン太には笑顔でいてほしいんだ」



幸村くんは許可してくれた

放課後にその大福が残っているとは限らないけど、今私にできることをしないと




丸井くんには笑顔でいてほしいから


『ありがとう幸村くん!』






















SHoNAN SWEETS

丸井くんが行きつけのスイーツ屋さん



もうすでに行列ができている


期間限定な上に数量限定

私が並んだところで売り切れているかもしれない


けどそれでも並ばなきゃ!

丸井くんに喜んでほしいし元気になってほしい




数十分並ぶとようやく店内に入るところまで来た


みんなが例の大福を持って嬉しそうに帰っていく

まだ残っていますようにと祈りながら前へ進む




そしてついに私の番


『生チョコ大福2つください!』

「かしこまりました。お客様が最後ですよ〜!」


よかった...何とか購入できた



すると後ろにいた小さな男の子が泣き出した

「うわあああん!だいふく食べたかったあああ!」

「仕方ないでしょう!チョココロネ買ってあげるから!」

「だいふくがいい〜!!!」


ああ、私が最後だったせいでこの子が買えなくなってしまったのか...


『あの...私1つで大丈夫なのでよかったら貰って下さい』

「そんな!大丈夫ですよ!」


泣き続ける男の子を見ていると丸井くんを思い出す

きっと彼が私の立場だったらどんなに好きなものでも分け与えるだろう

お兄ちゃんという立場で...



『いえ、貰ってください』

押しに押して何とか受け取ってもらった




そして駆け足で立海大へ向かう


待っててね、丸井くん

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