既に知っていること

夏休みも終わり一か月ぶりにクラスメイトと顔を合わす


このクラスにいる友達は丸井くんだけなんだけどね



「よっ桜宮」

『おはよう丸井くん』



朝練を終えた丸井くんが隣に掛ける


「今日も疲れたぜぃ」

『朝から大変だね』



次は全国大会

優勝を目指してみんなが一丸となって頑張っている


きっと丸井くんたちなら全国1位になれる

あんなに厳しい練習をして苦労してきたんだもん



『全国大会がんばってね』

「当然見に来るだろぃ?」


もはやテニス部応援の常連のような扱いになっている私と撫子ちゃん


「メインコートの景色見せてやっから楽しみにしとけよ?」


メイトコート、それはつまり決勝戦が行われるスタジアム


『強気だね』

「俺は天才だから!」


丸井くんといると私まで明るい気持ちになれる

相乗効果って言うんだっけ?




「そうやって笑ってろよぃ?」


『え...』



丸井くんに見られてたの?


『変な顔してたよね...?』

「んなことねーよ、女の子だなって思っただけだ」



そう言って丸井くんは机に伏せて眠る態勢に入ってしまった

























夏休みが明けて二学期が始まった



朝練終わって教室のドアを開けようとした時に

中から男子の会話が聞こえてきた






「桜宮って何か垢抜けたよな?」


「やっぱそうだよな?」


「急に可愛くなったというか女らしくなったというか...」


「好きなヤツでもできたんじゃね?」


「俺だったりしてー!」


「丸井じゃね?いつも一緒にいるし」


「俺も丸井みたいにアイツに優しくしたら惚れてもらえるかな〜?」


「狙ってんの?」


「女としてアリかなって!」





その会話を聞いて居ても立ってもいられなくなった


なんだよ、“女としてアリ”って




つーかお前ら気づくの遅えんだよ


桜宮は心から優しくて誰よりも人想いなんだ




教室のドアを勢いよく開けてあの会話をしていた男子たちを睨む


「よ、よぉ丸井...」


「お前ら...モテたいんなら女の子のコト“女”って呼ぶのやめろぃ」


そう言い捨てて既に席についている桜宮のもとへ行く


俺が挨拶すると笑顔で返してくれる


“丸井くん”って


こう言う何気ないやり取りが楽しくて仕方ない


俺があげたクマのマスコットを鞄につけてくれてるし




さっきから視線を感じるのはさっきの男子たちからだろう


アイツら一学期の頃は桜宮のこと陰気とかほざいていたくせに


それに桜宮のことを軽視するような言い方しやがって


ああ俺久しぶりに怒ってるかも

けど優しく微笑む桜宮が眩しくて机に伏せた


先ほどまでのイライラも解消されるような明るい笑顔


きっと俺のこんな性格知ったら幻滅するだろうな

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