スポーツの秋

季節は秋

ずいぶん涼しく過ごしやすくなってきた




そんな中近々ここ立海大附属中では体育祭が行われる



そして今はクラスで種目決めをしている


どの種目に出ようかな

あまり運動神経が良くないからみんなに迷惑かけないような種目に出たいな




と考えていたが、世間はそう甘くはなかった














なんと立海大附属中の体育祭にはクラス対抗全員リレーというものがあるらしい


そんなの学校パンフレットには記載されていなかったはず...



学級委員の人がその走順をまさに今決めている


スタートダッシュは大の苦手だし、アンカーなんて持っての他


なるべく中間くらいに走っておこう

早くても遅くても運動神経の良い誰かがトップをキープもしくは追い越せるだろうし



「アンカーは丸井でいいよな?」


「俺?」


「お前全国目指してんだろ?その天才肌全学年に見せつけてやれ!」


何とも丸井くんを引き立たせるお言葉...



「そんなに言われちまったら俺が走るしかねえな」


そしてその言葉に乗った...!




丸井くんアンカーか


カッコイイだろうな....

全学年の人が丸井くんを...





って何考えてるんだろう


今は自分の走順を考える時間だ



そう思って自分の頬をパンパン叩く



「何してんだ?」


『え....』


お隣の席だったら私の奇行なんて丸見えか


『自分のこと奮い立たせてたの...!』


































沈黙













「やっぱそうだよな!アンカーの前は桜宮だよな?」


はい.......?



「おい学級委員!俺の前は桜宮で!」

すると学級委員さんは黒板に私の名前を書いてしまった



あああどうしよう...

アンカーの前って責任重大すぎる



もしトップを走ってたのに私がドジで抜かされてしまったらみんなに合わせる顔がない


「そんな怯えんなって!まだ何も始まってねえし」


そう言って丸井くんは太陽のような眩しい笑顔を向けてくれる


「俺が居るから大丈夫だろぃ?」


丸井くんが居れば大丈夫...


『最善を尽くします....!』


「そんな肩に力入れなくていいって」



丸井くんがいるから今の私がいる



彼の言葉には温かみがあって、不安も吹っ飛んでしまう





結局個人で出る種目は棒引きにした


みんなで棒めがけて走って引っ張り合う団体戦のようなもの



これならみんなに迷惑かけない私にうってつけの種目だ






昼休み


いつものようにテニス部のみんなと撫子ちゃんとで昼食を摂る



「まいちゃんも棒引きに出るの?!」


まさかの撫子ちゃんも棒引きに出場するらしい


しかも同じ紅組として




球技大会の時は敵だったけど、こうして味方として一緒に戦えるなんて心強いな



「おまんら、棒引きのコツ知っとるか?」


コツ...?そんなのあるんだ


「知ってるわ!棒を誰にも譲れないものに見立てて取りに行くんでしょう?」


「ご名答」



へえ...誰にも譲れないものか


私には何があるだろう

特にないから何でも持ってってって感じなんだけど


「まいちゃんはある?」


うーん...

ふと隣を見ると丸井くんが黙々とお弁当を食べていた


すごい食いつきぶり


なんだか丸井くんらしいな....


すると向かいに座る幸村くんがこちらを見て優しく微笑む


「ん?何だよ」

ずっと見てるの気づかれちゃった


『えっと...丸井くんには誰にも譲れないものってあるのかなって...』



するとお弁当を食べ終え、空のお弁当箱にお箸を置いて空を見上げる丸井くん


睫毛長いな...


「俺の場合はスウィーツかな」


あ、丸井くんらしい


「桜宮は?」


質問しておいて何にも答えないなんて無礼だもんね


譲れないものを考えてみる





『みんなみたいに形あるものじゃないんだけど...』


「言ってごらん」


幸村くんが優しい眼差しで頷く


『今こうしてみんなと過ごす時間かな』



私は丸井くんに出会うまでひとりぼっちだった


見た目が暗いせいで友だちと呼べる人はいなくて

今こうしてたくさんの人に囲まれて笑顔でいられるのは



他の誰でもないここにいる人たちのおかげ




「桜宮さんらしいね」

「すごく素敵な譲れないものね!」

「ブン太と違ってな」

「ジャッカルお前、言うようになったじゃねえか...」


ジャッカルくんと丸井くんのやり取りが面白くてつい笑ってしまう



「俺たちといると桜宮が笑う確率100%」

「体育祭は必ず勝つ!負けなど許されんのだ!」





「のう桜宮」

仁王くんが手招きをする



すると耳打ちで



「結局おまんの譲れないものはブン太じゃな」


『そ....!』


そんなことないよ!と言ってしまえばみんな一斉にこっちを向いてしまうと思ったけど先程の声もなかなか大きかったらしい


「どうしたの?まいちゃん」


丸井くんもこっち見ちゃってるし...



『...そいやっ!』


棒引きの練習をしているフリをして誤魔化す



「ふふ、威勢がいいね」

当の幸村くんには絶対見抜かれちゃってる


仁王くんは口を押さえて笑い堪えてるし



丸井くんは何だか心配の目で見つめてくる....




ドタバタの体育祭になりそうな予感

[ 21/38 ]

[*prev] [next#]

[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -