丸井くんの友達

それはある日のお昼休みのこと



「なあ桜宮」

いつものように声をかけてくれる丸井くん



「一緒にメシ食おうぜ!」

『えっ...』

「1人でメシ食っててもウマくねえだろい?だから一緒に食おうぜ!」


周りからは桜宮なんて放っておけばいいのにとか
丸井も変わってるなとか...


私のせいで丸井くんに汚名を着せるわけにはいかない...


『...本当にいいの?』

「モチ!だって桜宮はクラスメイトだし俺の友達だからな」


眩しい笑顔で答える丸井くん...

「屋上行こうぜ!」

肯定する前に私の腕を引いて屋上まで駆け上がっていく



その道中で丸井くんにお菓子を差し入れる女の子がたくさんいた

その度に丸井くんは素敵な笑顔でありがとうとお礼を言っていた


私も彼みたいに、丸井くんみたいにみんなから必要とされる人になりたいな...






屋上に着くと何人か固まってお弁当を食べていた


「待たせたな」

丸井くんはそう言ってその人たちのもとへ向かう

「桜宮も来いよ」



丸井くんに手招きされて、そこへ向かうと





「君が桜宮まいさんだね」

『私のこと知っているんですか?』

まだ入学して数ヶ月なのに...


「俺は幸村精市、よろしくね」
私の名前を答えてくれたのは幸村くんという、美形な男の子

こんな存在感のない暗い私の名前を知っていてくれているだなんて何て優しい人なんだろう


「実はここにいるみんな、君の知る丸井と同じテニス部員なんだ」

そうだったんだ...



みんなに自己紹介をしてもらい、顔と名前を頑張って一致させた


真田くんって同い年とは思えないな...

なんかすごく貫禄がある



「丸井から聞いてるかもしれないけど、今週末に新人戦があるんだ。よかったら君も見にこないかい?」

「絶対見にこいよ!空いてないなら空けとけよぃ?」


「ブン太のカッコイイところの1つや2つ見れるかも知れないぜよ」

『丸井くんのカッコイイところ...』


テニスしてるところ見たことないし見てみたいな


「見に行きたいって顔してるな、お前」
そう言ったのはジャッカルくん


彼とこうして顔を合わせて話すのは入学式の時以来だ

『うん、見に行ってみたい』


「じゃあ詳細は丸井から聞いてね」


丸井くんがテニスしているところ...

楽しみだなぁ


「桜宮まいは暗くて陰気というデータがあるがコレは嘘だったか」

「百聞は一見に如かずと言うしな」

「桜宮さんはきっと誤解されやすいんだろうね」

「なあ桜宮、きっと話せばクラスや学年のみんな分かってくれると思うぜぃ?俺たちが桜宮の本当の気持ちを分かったようにさ!」


本当の気持ち...?

「桜宮と初めて会った時思ったんだ。きっとお前は誰かの為に動ける人間なんだなって」



私は誰かの為になるなら...何でもできる

誰かに必要とされたい



「屋上の花壇に水やりしてくれたのって桜宮さんだよね?」

『うん...水やりしないと花が枯れちゃうって思ったので...』

「あの花壇の花育てているの俺なんだ」


無言で優しく微笑む幸村くん


もしかして迷惑だったかな...?

余計なことに水を差すとはこういう事を言うんだろうな


「全然迷惑だなんて思ってないよ」

『え...』

「俺は部活があるから常に花の世話をできないから桜宮さんみたいな誰のものか分からないものにですら愛情を注いでくれる人が居て嬉しいよ」

幸村くん、そんなふうに思ってくれてたんだ


「ほら、話してみると案外知らないことが多いでしょ?」

「だから桜宮、もし何か誤解されるようなことがあったら素直に心の内を話すんだ」


そうすれば、みんな分かってくれる....



ありがとう丸井くん、テニス部のみんな


「何で眉間にシワ寄せてんだよぃ」

『こうしないと嬉しすぎて涙が溢れちゃいそうだから...』

「ピヨ」


「桜宮さんはそのままでいいんだよ」



丸井くんのお友達はみんな優しくて温かくて

私を拒絶しないから


こんな気持ち初めてだ...



彼らに出会えて、私本当に幸せだ

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